初心者のためのEMC測定の基礎(月刊EMC)

2018.2.26 更新
初心者のためのEMC測定の基礎(月刊EMC)

【放射性エミッション試験イメージ】

 EMC(Electro Magnetic Compatibility)とは、電磁両立性または電磁環境適合性とも言われ、電子機器など(以下、装置という)から発生する電磁妨害波(EMI: Electro Magnetic Interference)が、ほかの装置に対して影響を与えず、また他の装置から発生する電磁妨害波を受けても自身が正常に動作する耐性(EMS: Electro Magnetic Susceptibility)を言う。つま り、装置自身が他の装置に誤動作を起こさせるような“電磁妨害波を出さない”、また装置自身も“電磁妨害波を受けても誤動作しない”というふたつの性質を両立させることを意味している。

 “電磁妨害波を出さない”ことを確認するために行う試験をエミッション試験(Emission Test)と言い、放射性エミッション試験と伝送性エミッション試験の 2 種類がある。また、“電磁妨害波を受けても誤動作しない”ことを確認するために行う試験がイミュニティ試験(Immunity Test)で、静電気放電試験、放射性無線周波数電磁界試験、伝導低周波妨害試験、伝導高周波妨害試験、ファストトランジェント / バースト試験、サージ試験、電圧ディップ・瞬断試験などの各試験がある。これらのエミッション試験やイミュニティ試験は、IEC/CISPR の国際規格をもとに制定された各国の規格においてその試験方法や規格値が定められている。



なぜ EMC 対策が必要なのか

 現代の生活空間には、昔は存在しなかったノイズ源からの電磁波ノイズが増加している。インテリジェント化の進んだ家庭電化製品はマイコンを実装した電子回路基板を搭載し、小型化に伴う高密度実装化やクロックの高速化などにより回路基板内の相互干渉による誤動作や不安定動作、いわゆるイントラEMC あるいは自家中毒といわれる問題が発生する。また、ハイブリッド車や電気自動車の普及に伴い、パワーインバータから放射される低周波電磁界が人体に与える影響などについても研究が進められている。

 EMC に関する諸問題は、装置の誤動作や不安定動作の原因として、人や物に対して大きな被害をもたらす可能性があり、電子機器の設計者は EMC 対策を充分に考慮した設計を行わなければならない。日本では従来から電気用品安全法及び VCCI によって、 テレビやラジオに妨害を与える機器の規制を行ってきたが、その内容は国際規格 IEC/CISPR にしたがって改正されている。

続きは『月刊EMC No.307』にて

【月刊EMC No.307 目次情報】

<特集>
◇モノづくりとEMC
・当社の電波暗室での試験の取組み
 (マスプロ電工(株) 小沢寿行)

◇電磁波の吸収とシールド技術
・電波吸収体の基礎と最新動向
 (青山学院大学 橋本修)
・EMC 電波暗室用吸収体ならびにEMC 電波暗室技術
 (TDK(株) 鈴木良和、緑雅貴、栗原弘)

◇ノイズ低減に向けたEMC 回路設計と最適化
・SI/PI シミュレーションに基づくコモンモードノイズの低減と設計最適化
 (静岡大学 浅井秀樹)
・遺伝的アルゴリズムを用いたSI 改善技術~ノイズをもってノイズを制す~
 (筑波大学 安永守利)
・設計上流でのEMC 設計作り込みの実践事例紹介
 (富士通アドバンストテクノロジ(株) 佐藤敏郎)

<Technology>
・初心者のためのEMC 測定の基礎
 (森田テック(株) 森田治)
・スマートフォンからの電波の安全性~熱作用を中心に~
 (名古屋工業大学 平田晃正)
・ノイズに強いひずみ測定
 ((株)東京測器研究所 小泉富裕、元吉赳彦)

<規格・規制情報>
・CISPR 規格 国際会議結果3 H 小委員会
 (東京大学 徳田正満、(独)情報通信研究機構 松本泰)

<実践講座>
・サージ対策入門!電子機器のサージ対策と効果⑨
 放電管とバリスタの直列接続について
 (三菱マテリアル(株) 田中芳幸)
・30MHz 以下におけるEMI 測定用アンテナの校正③
 送信用ループアンテナを基準として用いる校正法
 ((独)情報通信研究機構 藤井勝巳)

<インフォメーション>
・正田英介氏が内閣総理大臣表彰受賞消費者庁
・エレベータ事故調査の今後ホンダ
・EMC 起因で40.5 万台リコール後手に回らない
・国内規格と国際標準の協調

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