【平行平板状の電源グランドの PEEC モデル例】
昨今、電子機器の性能を向上と小型軽量化のため、パラレル配線からシリアル差動伝送方式が利用されるようになり、1秒当たりに伝送する信号を増やす必要に迫られた。その結果、信号伝送の速度は1秒当たりギガビットを超えることは当たり前となり、LSI 間や機器間を接続する信号配線やコネクタ、ケーブルは反射や損失、放射ノイズ輻射等の問題が顕在化してきた。これらの問題以外にも、LSI デバイスが高速にスイッチング動作を行うため、電源、グランドプレーンの抵抗、インダクタンス成分により、電圧降下、スイッチングノイズ(∆I ノイズ)が発生する。
このスイッチングノイズは、放射ノイズの発生以外にも、グランド電位の変動が、LSI の信号波形品質(Signal Integrity)に影響を与え、出力信号の歪みやジッター(Jitter)を引き起こし、エラーレートを増加させ、通信品質や、動作に影響を与える。本稿では、この電源品質(Power Integrity:PI)の解析に利用できるライセンスフリーなシミュレータの紹介と、具体的な利用方法に関して解説する。また、PI のメカニズムの解析や理解の手助けとなるように詳しく説明する。
PEEC は 1970 年代に IBM の Ruehli によって開発された、3次元構造物を L、C、R、G の集中定数の等価回路によって、表現する手法である。集中定数の等価回路でプリント配線板等を表現できるため、SPICE に代表される回路シミュレータとの親和性は非常によく、周波数領域、時間領域の両方で計算することが可能である。
SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)は 1970 年代にカリフォルニア州立大学バークレー校で開発された、トランジスタの非線型特性を考慮して解析するアナログ回路シミュレータである。SPICE は節点法を用いているため、回路を汎用的に解析でき、直流解析、交流解析、過渡解析等が可能である。
また、この回路シミュレータは、元々、ソースコードレベルで公開されたので、現在でも、様々なベンダーで伝送線路解析機能やデジタル IC のバッファー回路解析(I/O Buffer Information Specifications:IBIS)機能が負荷され、商用シミュレータとして販売されている。現在は、バークレーでの開発は停止しているが、ソースコードは現在でも一般公開されており、NGSPICE(Next Generation SPICE)として、開発が継続されている。
続きは『月刊EMC No.313』にて
<特集>
◇実践!電磁界(EMC)シミュレーション
・電磁界シミュレーションの基礎
(拓殖大学 高橋丈博)
・電磁界シミュレータによる基本モデルの解析‐Sonnet
(ST-Lab 菊地秀雄)
・モデル解析「メモリモジュール」
(日本アイビーエム(株) 藤尾昇平)
・モデル解析「光トランシーバ基板」
(住友電工(株) 大森寛康)
<Technology>
・SPICE とPEEC モデルを用いたシミュレーション事例
(日本航空電子工業(株) 池田浩昭)
・実践!エレキハード設計から考えるEMI 設計法
(富士ゼロックスアドバンストテクノロジー(株) 木村優)
・位相雑音を低減した電圧制御水晶発信器
(セイコーエプソン(株) 保坂公司)
<規格・規制情報>
・系統連系電力変換装置に対するEMC 要件の国際標準化動向
(富士電機(株) 吉岡康哉)
<実践講座>
・実践/熱シミュレーションと設計法 第二部①
サーマルビアの放熱性能 1
(富山県立大学 畠山友行)
<インフォメーション>
・ワイヤレス電力伝送のEMC 2014年夏頃答申予定
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