業務用冷蔵庫のEMC(月刊EMC)

2018.3.5 更新
業務用冷蔵庫のEMC(月刊EMC)

【MOSFETの場合のコモンモード電流波形】

地球環境問題や温暖化対策として温室効果ガスの削減、省エネ化の流れの中、消費効率を向上させることは省資源国である日本において大変重要なことです。1973 年と 2011 年とを比較しますと、業務部門と家庭部門とを合わせた民生部門のエネルギー消費は、約 2.4 倍、業務部門だけで見ますと約 2.8 倍と高い伸びを示しています。

 このような下、業務用冷蔵庫も家庭用冷蔵庫と同様にトップランナー方式による省エネ法の対象機種として指定を受け、電気代の安価な高効率の業務用冷蔵庫が求められています。これらの社会的要求に応えるため、冷蔵庫の省エネ技術は大きく分けて、冷却、断熱、そして制御と3つの内容から成り立っています。特に、制御技術の中でもモータをインバータ制御することは、最適な風量、容量制御を容易に行えるため省エネには非常に有用な技術です。

 一方、インバータ制御では、半導体素子のスイッチングに伴う高周波ノイズが発生し、一般的な影響例として、インバータの運転によって近くに置いてあるラジオに雑音が入ったり、自身のノイズによるインバータ回路の誤動作等の問題が生じています。このような問題の対策は多々ありますが、一般的にノイズフィルタ等の部品を追加する方法が採られています。しかし、ノイズフィルタ等の対策は、部品を追加するためコストがアップし、装置の小型化において不利になります。

 そこで本稿では、インバータ制御で小容量ファンモータを駆動する冷蔵庫を例に、ノイズフィルタ等の部品を追加することなく、低速度のスイッチング半導体素子を用いることでEMC対策を図っていますので紹介します。


インバータ回路のEMI

 インバータ回路構成を構成する6個のスイッチに従来では、スイッチングロスを低減するため、スイッチング速度の速いOSFET(電界効果トランジスタ)が用いられてきました。スイッチング速度の遅いバイポーラトランジスタの方が、スイッチングの切り替えタイミングでスパイク状のコモンモード電流が現れています。次に、冷蔵庫全体の雑音端子電圧波形を比較します。

続きは『月刊EMC No.314』にて

【月刊EMC No.314 目次情報】

<特集>
◇パワーエレクトロニクス機器のEMC設計と対策技法
・パワーエレクトロニクス機器のEMI 対策
 ((独)海上技術安全研究所 関口秀紀)
・パワーエレクトロニクスの接地と雷防護
 (東日本電信電話株式会社 村川一雄)
・評価現場からみたEMC 問題への対策実例と、設計への反映手法
 ((株)イー・エム・シー・ジャパン 上羽裕之)

<Technology>
・業務用冷蔵庫のEMC
 (大和冷機工業(株) 佐藤秀也)

<規格・規制情報>
・CISPR 規格 国際会議結果 オタワ会議 総会
 (首都大学東京 多氣昌生)
・CISPR 規格 国際会議結果 I 小委員会

<実践講座>
・実践/熱シミュレーションと設計法 第二部②
 サーマルビアの放熱性能 2
 (富山県立大学 畠山友行)
・新・回路レベルのEMC 設計
 EMI シミュレーションとノイズ波源としてのLSI モデルの検証
 (富士通VLSI(株) 山本浦瑠那)
・電気機器の静電気対策①
 帯電・静電気放電の基礎
 (東京大学 小田哲治)

<インフォメーション>
・組み込みシステムの落とし穴

詳細はこちら


Copyright(C) Kagakujyoho shuppan Co., Ltd. All rights reserved.
※記事の無断転用を禁じます。