【磁界測定器】
オール電化住宅の普及やスマートシティの具現化に伴い、身近な電気機器や電気設備からの漏えい磁界による健康影響が懸念されている。健康に対して影響をあたえる電磁界の閾値は、電磁界の防護指針として ICNIRP(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection、国際非電離放射線防護委員会)により定められており、この指針に適合しているかどうかが健康への影響の有無を判断する上では重要である。ICNIRP の防護指針に基づく評価試験に対応した磁界測定器も市販されており、こうした測定器を用いて身の回りの家電製品や OA 機器からの漏えい磁界を測定した報告も多くなされている。本稿では身の回りの電気機器として電気シェーバと IH 調理器を取り上げ、これら機器からの電磁界を適合試験測定法に従って測定し、指針との適合性評価を行った。
さて、規定された試験法による電気機器の適合性評価は測定器を固定して行われるが、人が実際に危険領域や波源を探査するようなときは、測定を行いたい対象領域に対して自由に測定器を走査できる方が自然であろう。後半では手に持った測定器を振りかざすことで測定を行う自由走査式による電磁界分布の測定法について最近の研究成果を紹介する。
電波や電磁界などの非電離放射線の人体防護のガイドラインとして ICNIRP による指針が国際的にも広く活用されており、これをもとに各国の防護指針が定められている。わが国においては総務省により 1990 年に「電波利用における人体の防護指針」が策定され、現在に至るまで広く利用されている。ICNIRP で定められている様々な防護指針は、ばく露が生体に与える影響を理論的および実験的にアプローチして得られた結果がもとになっている。家庭用電気機器に関する指針は 2010 年に刊行されたICNIRP 2010 が最新となっており、近年はこのガイドラインに沿った適合性評価が行われている。
家庭用電気機器の発生する電磁界の測定法は、2005 年に IEC(国際電気標準会議) により国際規格IEC62233として制定されている。この規格はヨーロッパで 2003 年 5 月に発行された EN50366をもとに制定されており、その後 IEC の規格との整合化を図るために EN50366 は 2008 年に EN62233 に置き換えられた。
続きは『月刊EMC No.315』にて
<特集>
◇誘導障害への理論的アプローチおよび中国鉄道技術とEMC
・誘導障害への理論的解明に対する取り組み
((公財)鉄道総合技術研究所 廿日出悟)
・最近の中国鉄道車両技術の進展とEMC
(東京工業大学 渡邉朝紀)
・鉄道の海外信号通信システムにおける適用規格とEMC 対応について
((株)日立製作所 二川正康)
<Technology>
・エレベータのEMC 対策
(フジテック(株) 原田洋行)
・身の回りの電気機器からの電磁界の計測と可視化
(東北学院大学 佐藤健/宇都宮大学大学院 上村佳嗣)
・EMC ノイズレスLED 照明装置
(コロナ電子工業(株) 勝亦正/(株)富士通ゼネラルイーエム 井田清裕、須藤勝/
STech RF コンサルティング 島ノ江博之)
・軽量薄型のノートPC 開発を支える設計技術
((株)東芝パーソナル&クライアントソリューション社 鳥越保輝)
<規格・規制情報>
・CISPR 規格 国際会議結果 H 小委員会
(東京大学 徳田正満/(独)情報通信研究機構 松本泰)
・アメリカの無線雑音妨害波測定規格 ANSI C63.4 概要解説
((株)JEL 大河原孝幸)
<実践講座>
・実践/熱シミュレーションと設計法 第二部③
TSV の熱抵抗低減効果
(富山県立大学 畠山友行)
・電気機器の静電気対策②
電子デバイスの静電気対策の動向と静電気学会での取り組み
(鈴鹿工業高等専門学校 大津孝佳)
<インフォメーション>
・EMC 測定設備利用者の要望
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