FM-CW レーダ技術の応用と電波防護指針について(月刊EMC)

2018.3.12 更新
FM-CW レーダ技術の応用と電波防護指針について(月刊EMC)

【FM-CW レーダの構成】

 準ミリ波帯を用いたレーダとして特定小電力ARIB STD T-73に準拠した 24GHz 帯レーダがあり、屋内外で使用できるため広く適用されている。その中には、移動速度や変動などを図るドップラーレーダ、移動体の距離などを測る 2 周波ドップラーレーダ、静止物体または低速移動体の距離を測る FM-CW レーダなどがある。これらは装置構成が簡易であり小型化が可能なため実装上広い適用範囲が期待できる。

 今回、静止または準静止物体の距離を計測するため FM-CW レーダを取り上げ、微小変位量± 3.1mm まで計測可能でかつ、複数の物体が存在する環境下においてターゲットとする微小変位の変位量を精度よく計測可能なよう、変動成分のみ抽出可能な差分検出画像処理方法を検討している。そして、計算機シミュレーションおよび実験により基本動作を明らかにし、その有効性を示している。

 また、被測定物の微小変位の計測を応用して、人の呼吸状態を検出し、通信回線を介して遠隔に状態監視して異常時には警報を表示するシステムを実現し、複数の病院において実証実験を行ったので、その概要および結果を紹介する。最後に、この FM-CW レーダを人体の移動や呼吸などの計測への適用性について、電波防護指針の立場から検討している。



FM-CW レーダの動作原理

 FM-CW レーダでは、VCO により周波数変調した電波を送信アンテナから発射し、対象物に反射した電波をアンテナにより受信し、送信波とのミキシングによりビート信号を得る。得られたビート信号を FFT 演算することで、対象物までの距離を算出することができる。

FM-CW レーダの基本特性

 FM-CW レーダでは、24GHzFM-CW レーダについて、その基本特性を把握するため計算機シミュレーションを行った。ここで距離スペクトルはハミング窓関数用いて信号処理をし、振幅成分について正規化を行っている。掃引周波数幅を 50MHz、100MHz、200MHz、400MHzとしてシミュレーションを行った。距離スペクトルの分解能は掃引周波数幅に依存しており、掃引周波数幅が大きいほど分解能が高く、例えば掃引周波数幅 200MHz の場合、距離分解能は約 ±1m 程度となることがわかる。

続きは『月刊EMC No.318』にて

【月刊EMC No.318 目次情報】

<特集>
◇ICチップレベルの低ノイズ化
・高周波信号処置IC チップレベルのデジタルノイズ低減化技術
 (東北大学 田中聡、山口正洋)
・高分解能RF 電磁界プローブに関する研究
 (東北大学 遠藤恭、室賀翔、荒井薫、重田洋二郎、山口正洋)
・オンチップノイズの発生と干渉の評価
 (神戸大学 永田真)
・ミックスト・シグナルIC 実装ボードにおけるノイズ伝搬の評価と対策
 (日本電気(株) 岩波瑞樹、塚本健太)
・LTE級受信実回路を搭載したRFIC TEGチップ上への磁性膜の集積化
 (東北大学 遠藤恭、伊藤哲夫、山口正洋)

<Technology>
・FM-CW レーダ技術の応用と電波防護指針について
 (諏訪東京理科大学 松江英明、山口一弘、小林朋弘/
  (株)CQ-S ネット 齋藤光正、天野敏夫、我孫子拓治)
・ノイズ1/3 でセンサーの誤差を抑制! スクリーン印刷ダイヤモンド電極
 (東京理科大学 近藤剛史)

<規格・規制情報>
・アーク溶接のEMC 規格 概要解説
 (埼玉大学 山根敏)
・鉄道環境における電子および電気機器による磁場レベルの体暴露に関する測定手続き
 ((独)交通安全環境研究所 水間毅、長谷川智紀)

<実践講座>
・新・回路レベルのEMC 設計⑧
 ツールを用いた設計現場でのEMC ・PI ・SI 設計
 ((株)NEC情報システムズ 矢口貴宏)
・実践/熱シミュレーションと設計法 第二部⑤
 PCMを用いた冷却モジュール2
 (富山県立大学 畠山友行)
・電気機器の静電気対策⑤
 半導体デバイスの静電気放電対策
 (春日電機(株) 鈴木輝夫)

<インフォメーション>
・CISPR フランクフルト会議対処方針案 重点項目はワイヤレス電力伝送
・ワイヤレス電力伝送作業班 答申に向けて検討延長戦
・EMC 試験サイト求められる技術とは?
・次世代電動車いす脳波コントルールは安全か?

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