モーターインバーター伝導性ノイズのシミュレーション(月刊EMC)

2018.3.14 更新
モーターインバーター伝導性ノイズのシミュレーション(月刊EMC)

【ノイズに強い基板】

 エンジンと電気モーターの 2 つの動力源を持つハイブリッドカーが多く市場に投入され、最近では電気モーターしか動力源を持たない EV(Electric Vehicle) も目立つようになってきました。モータードライブ回路は直流電源をパワートランジスタでスイッチングを行って3相交流を作り出しております。その時にかなり強いスイッチングノイズが発生します。その一方、自動車の社内には低電圧で情報通信を行う通信ワイヤーが縦横無尽に張り巡らされています。

 そのスイッチングノイズが通信ワイヤーへ誘導されて通信障害を引き起こす可能性が充分に考えられます。また、車載オーディオやラジオへそのノイズが混入して音として聞こえるなどの問題が実際にあります。そのノイズの予測や対策改善を検討するためのツールとして 3 次元電磁界シミュレーターを用いた検討を行いました。その解析手順 (ワークフロー) を紹介します。



モーターインバーター実験機について

 今回のノイズシミュレーションと実測値との相関性を確認するため、モーターインバーター実験機を作成しています。シミュレーターとの比較を目的としてモータードライブ回路基板のノイズが伝達しにくい基板としやすい基板を敢えて設計致しました。直流電源印加ポイントからモーターへ至る経路を電源パターンインピーダンスで表現しました。従来よりプロセッサ実装ボードでパスコンの実装検討をする解析方法で、PDN 解析 (Power Delivery Network) という技術がありますが、今回はこの評価方法をインバーター回路に適用して解析しています。

モーターインバーター回路

 まずは最初に回路シミュレーションを実行します。この実験機のドライブ回路は Power C-MOSを用いています。ローサイドの 3 個のトランジスタへ18KHz の PWM 変調を加えており、そのデューテイ比を変化させることでモーター回転数をコントロールする構成になっています。今回は伝導性ノイズを評価していますが、制御回路のノイズは解析に含めておりません。そして CISPR25 に規定されている伝導性ノイズの測定ポイント ( 雑音端子 ) をシミュレーション回路で表現致しました。通常この測定ポイントは実際の規格試験の際に使われる LISN と呼ばれる測定装置と同じ内容となります。

続きは『月刊EMC No.334』にて

【月刊EMC No.334 目次情報】

<特集>
◇パワーエレクトロニクス機器における具体的なEMC対策手法
・パワーエレクトロニクス機器の省エネルギー化とEMI対策
 (国立研究開発法人 海上技術安全研究所 関口秀紀)
・メガソーラーのEMC問題と解決事例
 (双信電機㈱ 碓氷哲之)
・EMC設計における失敗を防ぐための方策(デザインレビューの有効活用)
 (日本オートマティックコントロール㈱ 瀬戸信二)

◇ワイヤレス給電システム
・ロボットへの非接触電力給電 少子高齢化時代はこうして乗り切るべきである。
 (㈱イー・クロス・エイチ 原川健一)
・EASシステムとワイヤレス電力伝送システムとの両立を目指して
 (日本万引防止システム協会 技術基準委員会)
・スマートフォン向けワイヤレス給電における生体安全性に関わる適合性評価
 (名古屋工業大学 平田晃正/(独)情報通信研究機構 和氣加奈子)

<Technology>
・モーターインバーター伝導性ノイズのシミュレーション
 ((株)エーイーティー 上田千寿)

<規格・規制情報>
・電力品質の測定法概要解説
 (日置電機(株) 関和洋)

<実践講座>
・電磁気学的現象の利活用における地震予知研究
 -特に地震予知・防災における役割-④
 現在行われている有望と考えられる周波数ごとの地震予知研究(DC からVLF 帯まで)
 (東海大学海洋研究所 長尾年恭)
・新・回路レベルのEMC 設計⑯
 IEC61000-4-2 間接放電イミュニティ試験と多重放電
 ~ ESD 試験器の垂直結合板への接触放電で生ずる特異現象~
 (名古屋工業大学 藤原修)

<インフォメーション>
・総務省平成28年度予算(案)の概要公開

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