【モータの駆動回路の基本構成】
省エネルギー化の進展により、多くのモータはPWM (Pulse Width Modulation) 技術を使用して駆動されています。この駆動方法ではパルス波形を使用するので、PWM の駆動波とその高調波や ON/OFF の遷移時に回路と共振して発生する振動波がモータの駆動に本来必要とする駆動波に対して高い周波数成分を持ちます。一般に、駆動回路とモータは離れて配置されるため、PWM の駆動信号や振動波形がケーブルを伝搬する段階でコモンモード電圧や電流が発生し、これが電磁妨害波の妨害源となります。
そのため、現在、この対策法について多くの研究が行われています。対策法は、大きく分類すると、回路や駆動波形自体に工夫をする方法と駆動ケーブルに対策部品を装着する方法に分けられます。本資料では、主にシミュレーションを用いて、駆動信号に対策を実施した場合の対策効果とコモンモードチョークコイル(CMC (Common-Mode Choke coil))を挿入した場合の対策効果について述べます。
モータの駆動回路の基本構成は、3 相モータの駆動回路で、スイッチに使用する 6 個の FET によりモータに流れる電流を切り替えてモータを回転させます。駆動回路では、FET はスイッチとして働きますので、スイッチの ON/OFF 時の電圧・電流の急激な変化により、駆動ケーブルとグラウンド間にコモンモード電圧が発生し、駆動回路、駆動ケーブル、モータで構成されるループ回路にコモンモード電流が流れます。この電流が、伝導、誘導、放射されて妨害波を発生させます。本資料では、このコモンモード電圧を使用して対策効果を評価します。
今回はシミュレーションに LTSpiceを使用しました。この駆動回路は P タイプと N タイプのFET を使用しており、FET はSpice に常備されているデバイスリストより適当なものを選んで使用しました。信号源は FET を駆動するもので、パルス発生器、AND 回路、OP アンプを使用して作成しました。出力側の 0.01Ω の抵抗は、電流を求めるための抵抗で、回路の動作に影響のない低い抵抗を使用します。1kΩ の抵抗は本来の駆動回路には使用されていませんが、P タイプと N タイプの FET の OFF 抵抗の違いを補正するために使用しています。対策回路は、高い周波数での対策に使用するもので、当面の解析は影響はありません。
続きは『月刊EMC No.335』にて
<特集>
◇国内主要メーカー&取り扱い企業群50社 2016年版 高信頼/EMC関連製品一覧
▼EMC 部品・製品編
EMI除去フィルタ/ノイズ防止トランス/自動定電圧装置/無停電電源装置/雷対策機器/サージアブソーバ
▼静電気対策関連製品編
ESD対策部品・製品
▼シールド・吸収材編
電磁波シールド材/磁気シールド/熱拡散材/シールドルーム/電磁波吸収体
▼試験装置・設備編
試験器/試験システム/アンテナ/アンテナ昇降機/電波暗室/計測/シールドボックス/TEMセル/ ターンテーブル
▼設計ツール編
シミュレーションソフトウェア
<Technology>
・モータ駆動ケーブルに誘起するコモンモード電圧対策法
(九州工業大学 桑原伸夫)
・先端CMOS トランジスタにおけるフリッカノイズ対策
(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 松川貴、柳永勛、福田浩一、大内真一、昌原明植)
<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説
連載の開始によせて
(東京都市大学名誉教授 徳田正満)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説①
EMC(電磁両立性)
(東京都市大学名誉教授 徳田正満)
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