【IEC61000-4-31】AC 電源ポートの広帯域伝導妨害イミュニティ試験(月刊EMC)

2018.4.6 更新
【IEC61000-4-31】AC 電源ポートの広帯域伝導妨害イミュニティ試験(月刊EMC)

【広帯域伝導妨害に対する
イミュニティ試験法】

 IEC61000-4 シリーズは、電子機器に対して現実に起こりうるさまざまな妨害を模擬した信号を注入しその耐性を試験するイミュニティ試験の要求事項および試験法を規定する基本規格である。このシ リーズで規定するイミュニティ試験は大きく分けて、静電気、雷サージなどを対象としたインパルス性のノイズを注入する試験と、放送用信号、通信信号などを対象とした連続波を注入する試験がある。IEC61000-4-31 規格は、電力線を利用した通信信号を主な妨害源の対象としており基本的に後者の部類に属するが、通信信号のほかに周辺の電子機器から非意図的に AC 電源線路を伝わってくる広帯域連続妨害波も妨害源の対象としている。

 IEC61000-4-31 は、2011 年 9 月に新業務項目提案(New work Item Proposal:以下 NP)が発行されて以来二つの委員会原案(Committee Draft:以下 CD)を経て、2015 年 3 月に投票用委員会原案 77B/726/CDV(CDV : Committee Draft for Vote)が発行された。投票期限は 2015 年 7 月 3 日で、内容が最終国際規格案(Final Draft International Standard : 以下 FDIS)として適当かどうかについて各国が投票を済ませたところである。ここではこの 77B/726/CDV(以下 CDV)の概要を紹介する。

 CDV が可決されると、次に発行されるのは FDISになるため原則として技術的な内容の変更は難しくなる。従ってこの CDV の内容に関する審議は特に技術的な内容に関する見直しの重要な機会となる。



新規格作成の背景

 電力線を利用した通信信号(PLT : Power Line Telecommunication、PLC : Power Line Communicationなどの信号)に対するイミュニティ規格作成の提案は、CISPR(国際無線障害特別委員会)の I 小委員会(Sub Committee I:情報技術装置 , マルチメディア装置及びレシーバの EMC を扱う)によっておこなわれ、2009 年 10 月に 77B/620/NP が発行された。

 77B/620/NP では、PLT などの電力線を利用した通信の信号によって性能低下などの障害を引き起こす機器があるとし、IEC61000-4 シリーズの規格を作成している SC77B(77B 分科委員会:主として高周波現象を扱う)にイミュニティ基本規格の作成を依頼するという日本からの提案を基にしたものであった。ここで対象とされている妨害源は広帯域通信信号であり AC 電源に接続している電子機器(EUT)に対してディファレンシャルモード(線間(正相)モード)で伝導するため、従来のイミュニティ規格は適当ではないとして新規規格の作成を提案していた。この提案に対する投票の結果、規格化に賛成する国は規定数に達していたものの、規格の作成に参加する国の数が規定に達しなかったため最終的に棄却された。

 77B/620/NP 棄却後も規格化の要望は根強くSC77B 内の第 10 作業グループ(Working group 10 : IEC61000-4-3,4-6 など主に無線周波電磁界に対する現象を扱う。以下 WG10)内で審議した結果、早期に規格化を目指すことが適当として再度 NP を発行することになった。2 度目の NP では前 NP の投票時に付された意見、および WG10 内での審議の結果を反映させ、最初の提案に対して次の内容を追加することになった。

続きは『月刊EMC No.333』にて

【月刊EMC No.333 目次情報】

<特集>
◇これからのEMC~省庁・工業会・学会EMCの動向が視える~
・総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長
 杉野勲 氏
・経済産業省 商務流通保安グループ 製品安全課 電気用品専門職
 長澤英里 氏
・国土交通省 道路局 道路交通管理課 ITS推進室 課長補佐
 中尾吉宏 氏
・一般社団法人 電波産業会・電磁環境委員会 委員長
 北海道大学名誉教授
 野島俊雄 氏
・公益財団法人 鉄道総合技術研究所 会長
 一般社団法人 国際標準化協議会 会長
 正田英介 氏
・スマートグリッドとEMC 調査専門委員会委員長
 電磁環境工学情報EMC 編集顧問
 東京都市大学名誉教授
 徳田正満 氏



※本記事は2016年1月のものです。所属等変更がある場合もございます。

<Technology>
・コグニティブ無線・ホワイトスペース通信の有効利用
 (京都大学大学院 原田博司)
・三次元積層SiPとパワーインテグリティ設計
 (芝浦工業大学 須藤俊夫)
・スイッチングアシストによる次世代MOSFET電力変換器の高効率化
 (静岡大学 野口季彦)

<規格・規制情報>
・IEC61000-4-31 CDV 概要解説
 (㈱東陽テクニカ 中村哲也)

<実践講座>
・NLFを含めたCEマーキング対応(EMC指令以外に必要となる他の指令)の展開および手続きを進めるには
 (グローバル・テクノマネジメント 平戸昌利)

<インフォメーション>
・英国情報通信長 無線LANの電波 干渉原因を調査 日本国内はどうなる
・アメリカ放射線監視システム 電磁波障害で一部機能せず
・これからの電波規制 IoTで変わる
・高度化するEMC要求
・ロボットの電波利用拡大へ向け 共用検討進む

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