【機械式計器の雷故障様相】
近年の高度情報化社会の進展に伴い、近い将来においてスマートコミュニティーが形成されることが想定される。その際、需要家端末としては電力計量機能の他、通信機能や開閉制御機能などを併せ持つスマートメータの広範囲への普及が想定される。
スマートメータの電力計量機能は現在の電子式電力量計(以下:電子式計器)の機能と概ね変化はないと思われ、内部に低電圧で駆動し、高密度で実装される電子回路が配置されることから、従来からの機械式(誘導式)電力量計(以下:機械式計器)に比べて、電子回路の絶縁破壊やエネルギー耐量超過、内部を通過する雷電流による誘導電圧等、雷に対して脆弱であると考えられる。このため、電子式計器やスマートメータに対しては、雷に対する信頼度を確保することが極めて重要となる。
低圧機器の雷被害に関する調査・検討が実施された例としては、細川氏等が需要家機器の被害状況等について調査検討した結果や、筆者等が需要家の接地方式や配電線と通信線の引込方式の影響に関して実験的に検討した結果がある。しかし、同じ低圧機器である電子式計器の雷故障様相やその対策に関しては、全く検討されてこなかった。
また、電子式計器に関する試験基準としては、JIS C 1210で絶縁破壊に関して規定されているが、電子回路が内蔵された電子式計器の電磁耐性に関する規定は現時点ではない。このため、今後は配電分野においても電磁耐性を含めた規格・基準の策定が必要になると考えられる。本稿では、電子式計器の新たな試験基準の策定と将来のスマートメータの雷害対策の基礎データとして、雷に対する現状の電子式計器の実力値を把握するとともに、その故障発生様相の解明と対策の方向性を検討した結果について述べる。
機械式計器の雷故障要因は、雷が侵入した際に端子部近辺の線間でスパークオーバ(以下:SO)が生じて短絡、あるいは端子⇔筐体間でのSO(2 カ所の地絡)から短絡に至っての続流の発生により、故障に至ることがほとんどである。この場合、続流のエネルギーにより焼損することが多い。
機械式計器と同様に、線間での短絡による焼損が挙げられる。しかし、電子式計器は電子回路を内蔵しているため、この他にも故障に至る要因がある。それは、電子式計器の母線を通過する雷電流による磁界に起因して電子回路に誘導電圧が発生し、これにより故障に至る場合である。
続きは『月刊EMC No.337』にて
<巻頭>
・安心安全な先進的医療機関と電波利用とEMC
<特集>
◇マルチメディア機器のEMC
・マルチメディア機器における無線電力伝送(WPT)とEMC
((一財)VCCI協会 長部邦広)
・マルチメディア機器のエミッションに関わる将来課題
(PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)
・近傍放射電磁界イミュニティ試験法に関する知見
(NTTネットワーク基盤技術研究所 奥川雄一郎、広島芳春、高谷和宏、秋山佳春)
<Technology>
・光トランシーバにおけるEMC設計
(住友電気工業(株) 大森寛康)
・電子式電力量計の雷故障様相とその対策
((一財)電力中央研究所 浅川聡)
・ワイヤレスボディエリアネットワークにおける電波伝搬
(東京電機大学 小林岳彦、広瀬幸)
<規格・規制情報>
・医用電気機器IEC 60601-1-2 対応のための製品安全とリスクマネジメント
((株)アイピーエス 山口哲志)
・自動車放射イミュニティレーダーパルスイミュニティ試験概要解説
((一社)KEC 関西電子工業振興センター 岡元裕則、峯松育弥)
<実践講座>
・新・回路レベルのEMC 設計 ⑰
モード変換の表現可能な等価回路モデルを用いたノイズ解析
(岡山大学 豊田啓孝)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑤
電磁妨害の結合路
(東京大学 徳田正満)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑥
空間のインピーダンス
((株)NTT ドコモ 大西輝夫)
Copyright(C) Kagakujyoho shuppan Co., Ltd. All rights reserved.
※記事の無断転用を禁じます。