分散型電源における雷サージ対策と接地の重要性(月刊EMC)

2018.4.18 更新
分散型電源における雷サージ対策と接地の重要性(月刊EMC)

【風力発電接地システム】

 地球温暖化に関連して落雷が増加傾向にあること、日本全国の年間雷雨日数(その地域で雷があった日を 1 年間で積算した日数)が増加傾向にあることなどが研究者により公表され、今後ますます雷対策の重要性が増すと予想されている。本稿で扱う分散型電源とは比較的小規模で消費地の近くに分散して配置される発電装置のことで、みなさんの良く知るものでは風力発電システムや太陽光発電システム、コージェネレーションシステムがある。その他、特殊なものでは、電気自動車等のバッテリーを蓄電システムとして利用する分散型電源もあり、非常時の電源として利用されると共に、他の分散型電源で発電した電力を蓄電し、電力需給のバランスを考慮して充放電することができるようになっている。

 上記で紹介した分散型電源の中でも風力発電システムは安定した風を受けるため、また、太陽光発電システムは太陽光を遮られないようにするため、周囲に高構造物が存在しない場所に建設されることが多い。このような理由から、他の分散型電源に比べ、風力・太陽光発電システムは雷撃の対象となる可能性が高くなる。最近では、風力や太陽光発電システムに雷撃があった場合の雷サージ伝搬様相やそれにより引き起こされる雷被害の対策方法についての研究が進み、雷被害の発生確率も一昔前に比べ低く抑えることができるようになっている。

 風力発電システムや太陽光発電システムなどの分散型電源はもちろん、駐車中の自動車への雷撃事例も報告されるようになり、これまであまり注目されてはいなかったが、充電中の自動車への雷撃が原因で、家屋内の電源系統や急速充電器が接続された配電系統に入り込む雷サージによる被害が懸念されるようになっている。本稿では風力・太陽光発電システムにおけるサージ現象と雷サージをスムーズに大地に逃がすための接地の重要性についてまとめる。また、今後の利用拡大が予想される電気自動車やハイブリッドカーなどの蓄電システムを有する自動車から波及する可能性のある雷サージ現象についても簡単に紹介する。


雷サージ現象

 風力発電システムはブレードの表面にレセプタと呼ばれる金属製の雷を受ける部位を備え、レセプタで受けた雷サージ電流は、ブレード内部のダウンコンダクタ、ナセルやタワーの構造体、基礎を含めた接地システムを介して大地に放出される。ブレードの雷被害については詳説しないが、いかにうまくレセプタで雷を受けることができるかがブレードの雷被害に大きく影響することがわかっており、レセプタの設置位置、形状は工夫され、風車メーカによって様々なものが公開されているので各風車メーカのカタログ等を参考にしてほしい。

続きは『月刊EMC No.336』にて

【月刊EMC No.336 目次情報】

<特集>
◇第21回 EMC環境フォーラム総合セッション
 2020年に向けてのEMC
・総合司会
 (次世代EMC 研究会会長/(公財)鉄道総合技術研究所会長/
  (一社)国際標準化協議会会長/東京大学名誉教授 正田英介)
・2~9kHz 周波数帯の電流エミッション限度値に対するTS 規格
 ((一財)電力中央研究所 雪平謙二)
・電磁波を利用する意図的な攻撃脅威について
 (日本オートマティック・コントロール(株) 瀬戸信二)
・鉄道システムのEMCとシミュレーション
 ((公財)鉄道総合技術研究所 川﨑邦弘)
・電磁界防護指針とばく露評価方法の動向
 (首都大学東京教授 多氣昌生)

<Technology>
・疑似アナログノイズを用いたスペクトラム拡散によるスイッチング電源のEMI低減化
 (小山工業高等専門学校 小堀康功)
・車両におけるラジオノイズ源の可視化技術
 (静岡大学 桑原義彦)
・分散型電源における雷サージ対策と接地の重要性
 (中部大学 山本和男)
・インバータの出力側のノイズ問題とその対策
 (シャフナーEMC(株) 杉田久明)

<規格・規制情報>
・FCC の高周波機器認可プログラムの変更
 ((株)電磁環境試験所認定センター 小林修一)
・コネクタ・ケーブルアセンブリ品の伝達インピーダンス、遮蔽減衰量、結合減衰量試験
 ((株)フジクラ 小川幸三)

<実践講座>
・電磁気学的現象の利活用における地震予知研究
 -特に地震予知・防災における役割-⑤
 現在行われている有望と考えられる周波数ごとの地震予知研究(VHF 帯およびそれ以外の手法)
 (東海大学海洋研究所 地震予知研究センター長 長尾年恭)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説②
 電源高調波
 (一般社団法人日本電機工業会 井上博史)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説③
 静電気放電とそのイミュニティ試験
 ((株)ノイズ研究所 石田武志)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説④
 TEM セル・GTEM セル
 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 石上忍)

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