光トランシーバにおけるEMC 設計(月刊EMC)

2018.4.25 更新
光トランシーバにおけるEMC 設計(月刊EMC)

【光通信網の概略図】

 光通信システムの広帯域化は、情報インフラの発展に必要不可欠な要素である。近年、ハイビジョンの動画配信・スマートフォンの普及により全世界のネットワークトラフィックの増加量は、2018 年に現在の 2.3 倍にもなり、年間総量は 1.4 ゼタバイトと予想されている。このため、データ通信装置の基幹部品である光電変換モジュール ( 以下、光トランシーバ ) には、10Gbit/s 以上の伝送速度が求められるようになっている。

 10Gbit/s を超える光トランシーバの設計では、小型が進み、機器内に多数の光トランシーバを組み込む構造となるため、これら一つの電磁放射ノイズレベルをより小さくする必要がある。本稿では、光トランシーバで用いられる EMI 設計について解説をする。


光トランシーバとは

 光通信網では光ファイバを通して、様々な支線や幹線から集積通信装置に光信号が送られる。例えば、Access 系から光ファイバを通して集線装置と呼ばれる光ルータ/スイッチ (以下、ネットワーク機器)に信号が送られと、ここで信号の多重化が行われ、長距離幹線系へ送信が行われる。または、他の経路 (例えば、Enterpriseへの経路)に光信号が割り当てられ送信される。

 光トランシーバは、この光通信網の中でネットワーク機器内に用いられ、光ファイバからの光信号を電気信号に変換しネットワーク機器内に電気信号を伝送させる機能と、ネットワーク機器からの電気信号を光信号に変換し光通信網に伝送させる機能を持つ、いわゆる光電変換モジュールの役割を果たしている。光トランシーバに入ってきた光信号は、光受信モジュールにて電気信号に変換される。その後、電気信号は、FPC (Flexible Printed Circuit board) や PCB(Printed Circuit Board) を伝送し信号処理 IC (Integrated Circuit) を経てネットワーク機器へと伝送される。

 また、ネットワーク機器からの電気信号は信号処理 IC・レーザ駆動 IC を伝送し光送信モジュールより光信号として出力される。ここから分かるように光トランシーバの殆どの機能は、電気信号の伝送のために用いられているため、電磁放射ノイズ源として振る舞う。また、外部からの電磁ノイズの影響を受ける恐れもある。現在では、FPC や PCB を伝送する電気信号は、10Gbit/s 以上となっており、PCB や FPC には広帯域で低損失な信号伝送が要求されていると共に、光トランシーバからの電磁放射ノイズを抑制する周波数は 1G ~ 40GHz (例えば、FCC Part 15 要求) となっている。

続きは『月刊EMC No.337』にて

【月刊EMC No.337 目次情報】

<巻頭>
・安心安全な先進的医療機関と電波利用とEMC

<特集>
◇マルチメディア機器のEMC
・マルチメディア機器における無線電力伝送(WPT)とEMC
 ((一財)VCCI協会 長部邦広)
・マルチメディア機器のエミッションに関わる将来課題
 (PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)
・近傍放射電磁界イミュニティ試験法に関する知見
 (NTTネットワーク基盤技術研究所 奥川雄一郎、広島芳春、高谷和宏、秋山佳春)

<Technology>
・光トランシーバにおけるEMC設計
 (住友電気工業(株) 大森寛康)
・電子式電力量計の雷故障様相とその対策
 ((一財)電力中央研究所 浅川聡)
・ワイヤレスボディエリアネットワークにおける電波伝搬
 (東京電機大学 小林岳彦、広瀬幸)

<規格・規制情報>
・医用電気機器IEC 60601-1-2 対応のための製品安全とリスクマネジメント
 ((株)アイピーエス 山口哲志)
・自動車放射イミュニティレーダーパルスイミュニティ試験概要解説
 ((一社)KEC 関西電子工業振興センター 岡元裕則、峯松育弥)

<実践講座>
・新・回路レベルのEMC 設計 ⑰
 モード変換の表現可能な等価回路モデルを用いたノイズ解析
 (岡山大学 豊田啓孝)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑤
 電磁妨害の結合路
 (東京大学 徳田正満)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑥
 空間のインピーダンス
 ((株)NTT ドコモ 大西輝夫)

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