在宅・車内ヘルスケアに活きる人体通信とEMC(月刊EMC)

2018.5.2 更新
在宅・車内ヘルスケアに活きる人体通信とEMC(月刊EMC)

【自動車内における心電図伝送実験の様子】

 高齢化社会の進展に伴い、人体のバイタルデータを収集・モニタリングし、ヘルスケアや医療への応用を目的とするウェアラブルデバイスが普及し始める兆しである。応用例の 1 つとして、微弱電波帯における人体通信 (HBC : Human Body Communication)技術を用いた在宅また自動車運転時の生体情報のリアルタイムモニタリングがある。例えば、人体通信機能を有する生体センサにより血圧、心拍、脈拍などの生体情報を取得し、一旦体表に設置される受信部にデータを蓄積した後、スマートフォンなどにより、PC また病院等に無線で送ることが考えられる。

 また、自動車運転者に人体通信機能を有する生体センサを装着し、取得した運転者の生体情報を人体表面を伝送経路としてハンドルに搭載した受信機へ伝送し、リアルタイムでモニタリングすることも考えられる。これにより、運転者の健康状態を自動車が把握し、健康状態に応じて警告や自動運転制御が可能となる。

 本稿では、一例として、まず、本研究室で開発した人体通信機能を有するウェアラブル心電計(ECG)を紹介し、心電図信号のリアルタイム観測例を示すとともに、市販心電計の測定結果との比較によりその有効性を示す。次に、外部からの電磁干渉について、1MHz 以下の外部電磁界によるウェアラブルECG 電極に生ずるコモンモード電圧の発生要因、そのコモンモード電圧がディファレンシャルモード電圧に変換され、電磁干渉として ECG 検出回路出力に現れるモード変換機構、及びその定量的評価法と対策するための設計指針を説明する。最後に、実人体を用いずに、外部電磁干渉に対するイミュニティ試験が可能となる擬似生体信号発生器の構築を紹介し、ウェアラブルデバイスに対する EMC 試験法のあるべき姿を提示する。


送信機構成

 人体周辺での近距離無線通信網、即ち BAN(Body Area Network) のヘルスケア・医療分野への応用において、ウェアラブル BAN は、体表における血圧、心拍、脈拍などの伝送が中心で、高速伝送を要求せず、数百 kbps 以下の低速伝送では十分であるという特徴がある。このために、高速伝送に向かないものの、人体表面に沿って低損失で伝送する人体通信は、高信頼性と高秘匿性の面において無線伝送より優位性が高い。本節では、本研究室で開発した微弱電波帯インパルスラジオ (Impulse Radio、IR) 型広帯域通信方式を採用した人体通信機を紹介し、それを心電信号のリアルタイム取得と伝送に適用した結果を述べる。

続きは『月刊EMC No.338』にて

【月刊EMC No.338 目次情報】

<特集>
◇防災に強いスマート社会における雷害対策
・オフィスビル・重要施設における雷害対策と事例
 ((株)NTT ファシリティーズ 佐藤秀隆)
・電源システムにおける雷害対策と事例
 ((株)サンコーシヤ 山田康春)
・太陽光発電システムにおける雷害対策と事例
 (音羽電機工業(株) 酒井志郎)
・通信・信号システムの雷防護とSPD の最新技術標準
 ((株)白山製作所 西澤滋)
・風力発電システムにおける雷害対策と事例
 ((株)昭電 垣内健介)

<Technology>
・在宅・車内ヘルスケアに活きる人体通信とEMC
 (名古屋工業大学 王建青)
・電流源探査装置CSS-100 によるEMC、アンテナ設計
 ((株)アドバンコム 上坂晃一)

<実践講座>
・新・回路レベルのEMC 設計 ⑱
 自動車システムにおける電磁界インターフェース設計技術
 -アンテナからワイヤレス電力伝送、人体通信まで-
 (東京工芸大学 越地福朗)
・電磁気学的現象の利活用における地震予知研究⑥
 -特に地震予知・防災における役割-
 電磁気学的現象を用いた減災への試み
 (東海大学海洋研究所 長尾年恭)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑦
 デシベルとEMC 測定値
 ((株)e ・オータマ 田路明)

<規格・規制情報>
・直流から150kHz までの伝導コモンモード妨害に対するイミュニティ試験改訂動向解説
 ((株)エヌエフ回路設計ブロック 平井順)

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