【ISO 11452】自動車放射イミュニティレーダーパルスイミュニティ試験概要解説(月刊EMC)

2018.5.16 更新
【ISO 11452】自動車放射イミュニティレーダーパルスイミュニティ試験概要解説(月刊EMC)

【レーダーパルスイミュニティ変調信号波形】

 自動車に搭載される電子部品数は、ここ数年で急増している。駆動制御、安全性・快適性、盗難防止・施解錠、車外・車内通信など様々な領域に幅広く使用されており、これらが電磁干渉により機能低下等の障害を発生しないことが重要な要素となっている。特に自動車は移動するため、様々な電磁環境下に曝される可能性がある。

 航空監視レーダーなどによる厳しい電磁環境下においても、故障や誤動作なく正常に動作することを事前に確認しておく必要がある。このようなことから国内の自動車メーカーにおいても、航空監視レーダーを模擬したレーダーパルスイミュニティ試験の要求が追加される動きがある。また、最近では ISO11452-1(2015)に、レーダーパルスイミュニティ試験の条件が追加されている。

 本稿では 1.2[GHz] - 1.4[GHz]、2.7[GHz] -3.1[GHz] 帯の周波数を利用するレーダーパルスイミュニティ試験についての概要解説をおこない、使用する設備における注意事項及び試験実施時の注意点について述べる。


レーダーパルスイミュニティ試験の要求事項

 電子部品を最大 600[V/m] の電界に曝す試験であり、試験周波数は 1.2[GHz] - 1.4[GHz]、2.7[GHz] -3.1[GHz]となっている。試験方法はあらかじめ電界強度の校正を必要とする置換法が要求されている。

 置換法とはテストベンチの上に電界センサのみを配置して、目標の妨害電界強度に達した時の進行波電力を記録し、試験時は記録した各周波数における進行波電力を用いて、テストベンチに配置された電子部品に照射する。電界強度の校正時は無変調(CW)状態で進行波電力を記録するが、試験時は変調された妨害波にて進行波電力を制御する。

 変調条件については 2 パターンあり、ISO11452-1(2015)のみ異なった変調条件となっている。図に変調信号波形を示す。ISO11452-1(2015)規格では繰り返し周期 300[Hz]、パルス幅 3[μs] のパルスが要求されている。メーカー規格によっては繰り返し周期 300[Hz]、パルス幅 3 [μs] または 6[μs] のパルスを 1 秒周期に 50パルス出力する波形が要求される。

レーダーパルスイミュニティ試験設備

 レーダーパルスイミュニティ試験の要求電界強度は最大 600[V/m] と非常に強いレベルが要求されている。600[V/m] の要求を満たすための設備について説明し、各設備における注意事項について述べる。

【信号源設備】
 信号源にはファンクションジェネレータと信号発生器を用いる。ファンクションジェネレータは変調信号用に使用する。試験時における信号源設備の注意事項は変調された妨害波を常に出力することである。

続きは『月刊EMC No.337』にて

【月刊EMC No.337 目次情報】

<巻頭>
・安心安全な先進的医療機関と電波利用とEMC

<特集>
◇マルチメディア機器のEMC
・マルチメディア機器における無線電力伝送(WPT)とEMC
 ((一財)VCCI協会 長部邦広)
・マルチメディア機器のエミッションに関わる将来課題
 (PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)
・近傍放射電磁界イミュニティ試験法に関する知見
 (NTTネットワーク基盤技術研究所 奥川雄一郎、広島芳春、高谷和宏、秋山佳春)

<Technology>
・光トランシーバにおけるEMC設計
 (住友電気工業(株) 大森寛康)
・電子式電力量計の雷故障様相とその対策
 ((一財)電力中央研究所 浅川聡)
・ワイヤレスボディエリアネットワークにおける電波伝搬
 (東京電機大学 小林岳彦、広瀬幸)

<規格・規制情報>
・医用電気機器IEC 60601-1-2 対応のための製品安全とリスクマネジメント
 ((株)アイピーエス 山口哲志)
・自動車放射イミュニティレーダーパルスイミュニティ試験概要解説
 ((一社)KEC 関西電子工業振興センター 岡元裕則、峯松育弥)

<実践講座>
・新・回路レベルのEMC 設計 ⑰
 モード変換の表現可能な等価回路モデルを用いたノイズ解析
 (岡山大学 豊田啓孝)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑤
 電磁妨害の結合路
 (東京大学 徳田正満)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説 ⑥
 空間のインピーダンス
 ((株)NTT ドコモ 大西輝夫)

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