【常時商用給電方式 回路ブロック図】
近年、生産現場においても、PC、サーバなどのコンピュータなどの情報機器が導入されつつある。しかし一般のオフィス環境に比べ、生産現場では常にさまざまな電源障害が発生している。
電源障害が発生すると、生産システムが正常動作できなくなり、結果的にシステムの稼働率低下、製品の歩留まり低下、最悪は機器の故障による生産停止などの問題が発生する。ここでは、コンピュータなどの情報機器に最適なUPS を紹介したい。
UPS を給電方式で分類すると、大きく「常時商用給電方式」「ラインインタラクティブ方式」「常時インバータ給電方式」の 3 種類に分けられる。
通常運転時は商用電源から電力をそのままスルーで出力し、同時にバッテリへ充電してバックアップ運転に備える。電源異常が発生してからバッテリ給電によるインバータ運転に切り替えるまで瞬断が起こる。バッテリ運転時の出力電圧波形は矩形波タイプと正弦波タイプの 2 種類がある。常時商用給電方式の UPS は回路がシンプルに構成できるため低価格・低コストである。
基本構成は常時商用給電方式と同じだが、AVR(電圧安定化)機能が付加されている。電圧を変換するトランスを経由することで、通常時でも電圧をAC100V 出力に近づけるように調整し、安定的に電圧を供給することが可能である。バッテリ運転時の出力電圧波形は正弦波である。
通常運転時は商用電源からの電力をインバータ経由で出力し、同時にバッテリへも充電をする。インバータは電源に含まれるノイズを取り除き、常に電圧値を調整するので安定した給電が可能となる。バックアップ運転に切り替わる際の瞬断もない。バックアップ運転時の出力電圧波形は正弦波である。
最近、 PC メーカー各社は高調波電流を低減するため、 力率改善回路 (PFC) を搭載したスイッチング電源(PFC 電源)を採用されている。また汎用で出荷されているスイッチング電源も、 PFC を搭載したものが増加している。米国の Ecos Consulting が管理している認証制度で、 電源変換効率が 80%以上かつ力率 0.9 以上の電源に対して認証ロゴが与えられ、多くの PC で採用されているが、この電源は PFC を搭載している。
※ 高調波電流については、 EU では義務化されている。
日本では JIS 規格(JIS C 61000-3–2)の適用が推奨されており、 PC 等の電子機器は入力電力75W 以上の製品が対象になる。
続きは『月刊EMC No.339』にて
<特集>
◇ESD/EOSの基本と実態・対策、耐性試験法
・マイクロギャップESDに伴うインパルス性ノイズの放射強度と電極接近スピード
(東北学院大学 川又憲)
・静電気放電イミュニティ試験を正しく実施するための実験的解説
(㈱ノイズ研究所 石田武志)
・最新電子機器で発生する非直撃的なEOS/ESD事象と対策
(㈱インパルス物理研究所 本田昌實)
・放電現象からみたシステムESD試験の基本的問題点について
((一財)日本電子部品信頼性センター 田中政樹)
<Technology>
・MIMO方式を採用した船舶レーダの干渉対策
(日本無線㈱ 時枝幸伸)
・EMCを低減するベクトル合成を用いたワイヤレス給電法
(静岡理工科大学 郡武治)
・UPSの活用による電源ノイズ対策事例
(オムロン㈱ 林昭)
・導電性ペーストによる小型船舶のレーダー反射率向上
(国立研究法人 海上技術安全研究所 藤本、穴井、山根、村上、西崎、白石)
・ICチップの低消費電力化とオンチップノイズ低減化技術
(芝浦工業大学 宇佐美公良)
・医療環境における高速電力線搬送通信(PLC)の導入実験とEMC
(佐賀大学 花田英輔、東京医療保健大学 石田開)
<実践講座>
・ビル・工場における接地システム設計の知識 [Ⅰ]
(関東学院大学 高橋健彦)
・EMC測定・試験のポイント―今更、人に聞けないEMC用語解説
⑧同軸ケーブル (電気通信大学 名誉教授 上芳夫)
⑨平衡ケーブル (電気通信大学 名誉教授 上芳夫)
⑩伝送線路 (電気通信大学 名誉教授 上芳夫)
⑪スペクトラムアナライザ(ローデ・シュワルツ・ジャパン㈱ 吉本修)
<規格・規制情報>
・IEC61000-6-5第1版
発変電所環境イミュニティ共通規格改訂のポイント
(東北学院大学 石上忍)
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