【IEC 61000-6-5】発変電所環境イミュニティ共通規格(月刊EMC)

2018.5.30 更新
【IEC 61000-6-5】発変電所環境イミュニティ共通規格(月刊EMC)

【機器のポート (Fig.1)】

 本規格 IEC/TS 61000-6-5は、2001年 7月に技術仕様書(Technical Specification: TS)として発行された。技術仕様書とは、将来的に国際規格(IS:International Standard)として採用される可能性があるが、標準化の対象が開発途上であるなど、国際規格として直ちに発行できない場合に発行される文書である。

 本規格はタイトルの通り、発電所及び変電所の環境におけるイミュニティ試験規格であり、主として電力会社が使用する機器が対象となるが、共通規格であるため、個別の製品規格が存在する機器に対し直接影響するものではない。そのため我が国では、機器使用者である電力業界及び機器を製造している機器業界ともに関心は低い。なお、国内では、IEC/TS 61000-6-5 Ed. 1.0: 2001 を参考にして、電気学会電気規格調査会規格 JEC-0103(2005)(低圧制御回路試験電圧標準)が発行されている。

 本規格が TS として発行された 2001 年より、一回も改訂されることなく第 1 版のまま 10年が経過したということは、国際的に見ても関心のある規格とは思われないが、 [77/393/DC] 文書(2011 年 5月発行)においては、本 TS のスタビリティデートは 2011としている。本 DC 文書において、本 TSの今後のメンテナンスについて各国国内委員会に意見を紹介している。本 DC文書に対する意見照会結果を受けて、本 TSを規格(IS)とするかどうかの質問状 [77/412/Q]が、2011 年 12月に発行された。

 先に述べた事情より、我が国は規格化に反対、及び TSの維持をコメントとして送付したが、投票の結果 [77/414/RQ]、賛成多数で規格化を開始することが決定された。ほとんどの国は意見なく賛成が多かった中、英国及び米国はスマートグリッドの普及・発展に伴って、この規格が重要になるであろうという意見であった。その後、IEC TC77/WG13 で規格化の作業が開始され、2013 年 2月に 77/430/RRで規格化の開始が正式に告知された。

 IEC TC77/WG13 における改定案作成作業の結果、最初の委員会原案(CD: Committee Draft)である[77/432/CD] が 2013年 3月に発行された。本 CDに対する各国の意見を集約したコメント集 [77/439/CC] が2013 年 7月に発行され、13 か国より 141のコメントがあった。多数のコメントがあったため、これらコメントを反映した原案は投票用委員会原案(CDV: Committee Draft for Vote)とせず、2nd CDとして[77/440/CD] が 2013年 8月に発行された。2nd CDに対する各国の意見を集約したコメント集 [77/458/CC] が 2014年 1月に発行され、11 か国より 57のコメントがあった。これらコメントを反映した原案は CDVとして[77/459/CDV] が 2014年 6月に発行された。


続きは『月刊EMC No.339』にて

【月刊EMC No.339 目次情報】

<特集>
◇ESD/EOSの基本と実態・対策、耐性試験法
・マイクロギャップESDに伴うインパルス性ノイズの放射強度と電極接近スピード
 (東北学院大学 川又憲)
・静電気放電イミュニティ試験を正しく実施するための実験的解説
 (㈱ノイズ研究所 石田武志)
・最新電子機器で発生する非直撃的なEOS/ESD事象と対策
 (㈱インパルス物理研究所 本田昌實)
・放電現象からみたシステムESD試験の基本的問題点について
 ((一財)日本電子部品信頼性センター 田中政樹)

<Technology>
・MIMO方式を採用した船舶レーダの干渉対策
 (日本無線㈱ 時枝幸伸)
・EMCを低減するベクトル合成を用いたワイヤレス給電法
 (静岡理工科大学 郡武治)
・UPSの活用による電源ノイズ対策事例
 (オムロン㈱ 林昭)
・導電性ペーストによる小型船舶のレーダー反射率向上
 (国立研究法人 海上技術安全研究所 藤本、穴井、山根、村上、西崎、白石)
・ICチップの低消費電力化とオンチップノイズ低減化技術
 (芝浦工業大学 宇佐美公良)
・医療環境における高速電力線搬送通信(PLC)の導入実験とEMC
 (佐賀大学 花田英輔、東京医療保健大学 石田開)

<実践講座>
・ビル・工場における接地システム設計の知識 [Ⅰ]
 (関東学院大学 高橋健彦)
・EMC測定・試験のポイント―今更、人に聞けないEMC用語解説
 ⑧同軸ケーブル     (電気通信大学 名誉教授 上芳夫)
 ⑨平衡ケーブル     (電気通信大学 名誉教授 上芳夫)
 ⑩伝送線路       (電気通信大学 名誉教授 上芳夫)
 ⑪スペクトラムアナライザ(ローデ・シュワルツ・ジャパン㈱ 吉本修)

<規格・規制情報>
・IEC61000-6-5第1版
 発変電所環境イミュニティ共通規格改訂のポイント
(東北学院大学 石上忍)

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