電磁界シミュレーションによる病院電波環境調査(月刊EMC)

2018.6.1 更新
電磁界シミュレーションによる病院電波環境調査(月刊EMC)

【EMS の計算の流れ】

 病院では、医療従事者の業務支援や患者サービスを目的として、電子カルテにおける無線LAN 利用、スマートフォン、WiFiの利用、構内 PHS、PDAによる三点認証技術、無線タグを利用した ME機器のロケーションシステムなど電波を利用した移動体通信機の導入が積極的に進められている。

 一方、病院内には電波に対する耐性が低い機器が各所に配置されるため、「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針(電波環境協議会、平成 9年)」等の検討を経て、総務省から「各種電波利用機器の電波医用機器への影響を防止するための指針」が平成 17年に、「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」が平成 25年 1月に策定され、医療機関内での利用は制限されている。

 しかし、医療機関では、患者の利便性・生活の質の向上、医療従事者間の情報共有などモバイル端末を利用することへのニーズが高まっており、2014年 1月に総務省において医療機関内における携帯電話等の使用に関する検討が開始され、2014 年 8月 19日に電波環境協議会から「医療機関内における携帯電話等の使用に関する指針」が発表された。ここでは、医療従事者、患者など医療機関を利用者の携帯電話の利用制限が緩和される方向であり、今後スマートフォンの導入・活用が今後一気に普及することが予想される。

 エリアごとの携帯電話端末使用ルールを設定する際に課題となるのが、電波の影響を受けやすい機器と離隔距離の設定である。離隔距離については医用電気機器の電磁両立性(EMC)に関する国際規格で用いられている推奨分離距離等を参考にして決定される。電磁ノイズによって影響を受ける可能性がある医用機器は多数に及んでおり、これらの機器は病院内の各所で利用されている。また、医療施設内には電磁ノイズを放射する機器も多数あるが、無線通信機を除くほとんどの機器は使用する場所が限られており、建築的に電磁シールドや配置計画などの EMC 対策を施すことは可能である。

 現在、これら無線通信機器の通信状態や基地局の配置設計は施設内での現地調査が一般的である。しかし、機器誤動作防止を目的とする電波環境対策として電磁シールド等が要求される場合、建設後の対応が極めて困難である。このため、シミュレーション技術によって、無線機器から放射する電波の建物内での電波強度分布を予測し、医療機器の安全性を事前に検討する技術の研究が進められている。


続きは『月刊EMC No.340』にて

【月刊EMC No.340 目次情報】

<特集>
◇初級講座EMC設計
・EMC の基礎~インピーダンスの基礎知識~
 (拓殖大学 高橋丈博)
・シミュレーションを用いたノイズ設計(EMI 編)
 (日本アイ・ビー・エム(株) 藤尾昇平)

<Technology>
・電磁界シミュレーションによる病院電波環境調査
 (大成建設(株) 遠藤哲夫、藤岡友美)
・自動車ハーネスの無線化と車外漏洩
 (北九州市立大学 梶原昭博)
・2.45GHz 帯の電磁波到来方向可視化システム
 ((株)日立製作所 大前彩)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑫
 波長と周波数
 ((株)e ・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC ②
 ビル・工場における接地システム設計の知識〔Ⅱ〕
 (関東学院大学 高橋健彦)
・電源ノイズ解析と設計法 ①
 電源ノイズ解析と設計法
 (大阪大学 舟木剛)
・欧州市場への製品輸出とEMC ④
 NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と以外の考慮すべき指令との関連
 (グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)

<インフォメーション>
・CISPR ストレーザ会議
 I 小委員会報告(ITE、マルチメディア機器及び受信機)
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I作業班主任 雨宮不二雄)

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