自動車ハーネスの無線化と車外漏洩(月刊EMC)

2018.6.4 更新
自動車ハーネスの無線化と車外漏洩(月刊EMC)

【車載無線ネットワークの例】

 現在、東京オリンピックが開催される 2020年に向けて自動運転車(レベル 3または 4)の研究開発が行われている。実現のために様々なセンサ技術やアルゴリズムの開発が進められ、車線維持支援(LKAS)や周辺監視などによる予防安全システムの高機能化はこれからの数年間で想定外のスピードで進化していくだろう。さて航空機は、上空では自動操縦(オートパイロット)で飛行することが多いが、離着陸時ではスマートフォンやノートPC などの電子機器の使用が禁止されている。

 一方、町並みを「走る」「止まる」「曲がる」などを繰り返しながら走行する自動車を取り巻く電波環境は航空機以上に劣悪であり、狭い車内にノイズ発生源であるエンジンや数十個のマイクロモータを搭載しながら走行する。そこで快適性・信頼性・耐環境性を実現するために ECU(電子制御ユニット)や ECU 間を接続する銅線ケーブル(ハーネス)はノイズの影響を受けて誤動作しないように、またはノイズを放出しないように EMC(Electromagnetic Compatibility Design)を考慮した筐体やシールド構造などの設計が行われている。

 電子化は自動車の快適性・信頼性を高める重要な要素となっているが、それと共に ECUやハーネスの回路数は急速に増加し、個別に行われていた電子制御はハーネスの軽量化やスペース確保のためにネットワーク化されている。今後、高機能化と共にさらに膨大化するハーネスに対して煩雑なハーネス接続からの解放および車体の軽量化を実現するために、マルチメディア系を中心に耐マルチパス特性に優れた UWB(Ultra-Wideband)無線に置き換えられ、複数チャネルでの高速無線通信が実現できるだろう。

 一方、無線技術によって「人」と「車」と「道路」を一体化する ITS(高度道路交通システム)は急速に進み、Wi-Fiや DSRC(Dedicated Short Range Communications)、車載レーダなど電波利用の拡大によって車内の ECU やハーネスは車内だけでなく、車外からも厳しい干渉(ノイズ)に晒されることになる。かつてオートマ車が車外からの電波によって急発進・急停車するという事故があったが、今後ますます車外からの干渉対策が必要となる。さらに年々強化される世界的な燃費規制によって金属から樹脂へと車体の軽量化が進められていくと ECU やハーネス等は並走車や道路沿線の無線機器との与干渉・被干渉が重要な課題になると考えられる。


続きは『月刊EMC No.340』にて

【月刊EMC No.340 目次情報】

<特集>
◇初級講座EMC設計
・EMC の基礎~インピーダンスの基礎知識~
 (拓殖大学 高橋丈博)
・シミュレーションを用いたノイズ設計(EMI 編)
 (日本アイ・ビー・エム(株) 藤尾昇平)

<Technology>
・電磁界シミュレーションによる病院電波環境調査
 (大成建設(株) 遠藤哲夫、藤岡友美)
・自動車ハーネスの無線化と車外漏洩
 (北九州市立大学 梶原昭博)
・2.45GHz 帯の電磁波到来方向可視化システム
 ((株)日立製作所 大前彩)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑫
 波長と周波数
 ((株)e ・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC ②
 ビル・工場における接地システム設計の知識〔Ⅱ〕
 (関東学院大学 高橋健彦)
・電源ノイズ解析と設計法 ①
 電源ノイズ解析と設計法
 (大阪大学 舟木剛)
・欧州市場への製品輸出とEMC ④
 NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と以外の考慮すべき指令との関連
 (グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)

<インフォメーション>
・CISPR ストレーザ会議
 I 小委員会報告(ITE、マルチメディア機器及び受信機)
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I作業班主任 雨宮不二雄)

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