【電磁波到来方向可視化システムのコンセプト】
近年、様々な機器からデータを収集し、マネージメントに用いるサービスが普及しつつある。データ収集には無線通信を用いることが多く、あらゆる場所で通信可能な高信頼の無線通信網の構築が望まれている。しかし、現状は他の無線機器との電磁干渉や、敷設現場における電磁ノイズが原因で通信が途切れる場合があり、これらの電磁干渉源を短時間に特定する技術が求められている。
アンテナ分野では、これまで多くの電磁波到来方向推定技術が開発されてきた。代表的な技術として、アレーアンテナとMUSIC(multiple signal classification) や ESPRIT(estimation of signal parameters via rotational) などの高分解能到来方向推定アルゴリズムを組み合わせた手法がよく知られている。これらの手法は、複数の電磁波源の到来方向を精度よく推定できる一方で、複雑な信号処理が必要であり計算負荷が高いという課題がある。
高度な計算を必要としない手法として、ルネベルグレンズとフォトニックセンサ、あるいは電力検出器を用いる手法が提案されている。ルネベルグレンズは、平面波が入射すると、平面波の入射角度ごとに、異なる位置に焦点を結ぶ特性を持つ。レンズの各焦点にセンサを設置し、センサ出力を検知することで電磁波の到来方向を得ることが可能であるが、到来方向検知の角度分解能がセンサの間隔に依存するためセンサの高密度化が課題であった。
そこで今回はセンサ高密度化を実現するため、対象とする電磁波の波長に対して十分小さい間隔で配置することができる EBG(Electromagnetic Band Gap) 型の電磁波吸収体を応用した電界センサを用いた。本電界センサは高密度化による分解能向上に加え、対象周波数においてセンサ面に入射する電磁波を理論的には反射なく吸収することができる利点がある。本論では 2.45GHz の無線 LAN の帯域で、高分解能、高感度、低計算負荷の電磁波到来方向検知を目的に、ルネベルグレンズと EBG(Electromagnetic Band Gap)型の電磁波吸収体を用いた電磁波到来方向可視化手法および試作機による原理検証結果について紹介する。
本手法のコンセプトを図に示す。先に示した通り、電波レンズであるルネベルグレンズと、EBG 型の電界センサを組み合わせ、到来する電磁波の電界強度分布を取得する。また、カメラで撮影した画像(ホーンアンテナ)と各センサから得られた電界の強度分布を重ね合わせ、電磁波の到来方向を確認できるようにした。
本システムの対象周波数は、無線 LAN や Zigbeeなどで広く利用されている 2.45GHz 帯とした。検出可能な感度は、無線 LAN(IEEE802.11b , 11Mbps)の最小受信感度 Pr =-76dBm から、電力密度を求め目標値とした。
続きは『月刊EMC No.340』にて
<特集>
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・EMC の基礎~インピーダンスの基礎知識~
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(日本アイ・ビー・エム(株) 藤尾昇平)
<Technology>
・電磁界シミュレーションによる病院電波環境調査
(大成建設(株) 遠藤哲夫、藤岡友美)
・自動車ハーネスの無線化と車外漏洩
(北九州市立大学 梶原昭博)
・2.45GHz 帯の電磁波到来方向可視化システム
((株)日立製作所 大前彩)
<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑫
波長と周波数
((株)e ・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC ②
ビル・工場における接地システム設計の知識〔Ⅱ〕
(関東学院大学 高橋健彦)
・電源ノイズ解析と設計法 ①
電源ノイズ解析と設計法
(大阪大学 舟木剛)
・欧州市場への製品輸出とEMC ④
NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と以外の考慮すべき指令との関連
(グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)
<インフォメーション>
・CISPR ストレーザ会議
I 小委員会報告(ITE、マルチメディア機器及び受信機)
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I作業班主任 雨宮不二雄)
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