通信機械室に設置される照明器具から発生する過渡妨害波に対する技術的要件の検討(月刊EMC)

2018.6.11 更新
通信機械室に設置される照明器具から発生する過渡妨害波に対する技術的要件の検討(月刊EMC)

【照明器具から発生する過渡電流の測定系】

 照明器具から発生する妨害波には、内部回路の半導体素子等の動作に起因する定常妨害波と、電源スイッチのオンまたはオフの操作に起因する過渡妨害波がある。グロースタータ式蛍光灯は、電源スイッチ操作時に電源線に発生する妨害波が大きいため、通信機械室等の重要施設においては、ラピッドスタート式蛍光灯が用いられてきた。しかし、デバイス技術の進展により、現在は、低消費電力、長寿命のインバータ式蛍光灯や LED 照明が市場に流通してきている。

 従来から、照明器具から発生する定常妨害波に対しては、試験方法や要求条件が CISPR15に示されており、LED 照明から発生する定常的な伝導性、放射性の妨害波の特性や発生機構も検討されてきた。しかしながら、照明器具から発生する過渡妨害波に対しては、CISPR 等において試験規定がなく、その評価方法の確立が望まれている。

 本稿では、過渡妨害波の評価について、照明器具の電源スイッチのオンまたはオフの操作時に発生する過渡電流のピーク値で評価する方法について検討した結果を紹介する。次章以降で、照明器具の過渡電流を再現性高く測定する方法を提案し、一例として通信機械室において通信装置と照明器具の電磁両立性を維持するための過渡電流の要求条件を導出する。


過渡電流の測定方法

 過渡電流は、電源スイッチのオンまたはオフの操作直後に、数 10μs の短時間で電源線に生じる電流である。電源スイッチ操作後の短時間で発生する過渡的なエネルギーが通信装置に影響を与えることを踏まえ、過渡電流の測定方法を検討した。

 シールドルームにおいて、供試機器である照明器具を電源線で電源に接続し、電流プローブとオシロスコープを用いて電源スイッチのオンまたはオフの瞬間に電源線に流れるノーマルモード電流を過渡電流として測定する。また、照明器具と電源の間に、位相制御スイッチ、特性改善用コンデンサ、電源インピーダンス模擬回路を挿入する。これらは再現性の高い測定を行うために必要な補助装置であり、次節以降で詳細に述べる。

電源電圧の位相制御

 照明器具の電源スイッチのオンまたはオフによって生じる過渡電流の大きさは、電源スイッチを操作するタイミングの電源電圧の位相が深く関係しており、電源スイッチを操作するタイミングの電源電圧が大きいほど、過渡電流が大きくなる。そのため、過渡電流の評価においては、過渡電流が最大となる最悪条件で測定することを考え、電源スイッチのオンまたはオフのタイミングを90°、270°(極大・極小)とする。このような電源スイッチのオンまたはオフのタイミングを任意に設定できる位相制御スイッチを過渡電流測定に用いる。


続きは『月刊EMC No.341』にて

【月刊EMC No.341 目次情報】

<特集>
◇国内主要EMC試験・校正所一覧
【EMCサイト】
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<特集関連>
・EMC のトレーサビリティーと放射EMI 測定用広帯域アンテナの開発
 (産業技術総合研究所 黒川悟)

<Technology>
・通信機械室に設置される照明器具から発生する過渡妨害波に対する技術的要件の検討
 (NTTネットワーク基盤技術研究所 岡本健、マハムドファーハン、立道英俊、高谷和宏)
・EMC 可視化ソリューション~ノイズと静電気の可視化を実現~
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・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑬
 EMI レシーバの概要
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