【IEC 61000-4-8】電源周波数磁界イミュニティ試験(月刊EMC)

2018.6.20 更新
【IEC 61000-4-8】電源周波数磁界イミュニティ試験(月刊EMC)

【無限長直線導体に流れる電流による磁界の発生】

 この規格の表題は、「電磁両立性―第4部:試験及び測定技術―第 8 節:電源周波数磁界イミュニティ試験」であり、電源系の電流により発生する磁界に曝露される環境で機器が使用されることを想定した、電源周波数磁界に対するイミュニティ試験の基本規格である。同規格では、配電網などにおいて通常の稼動条件下で定常的に発生する比較的小さい連続磁界と、回路短絡などにより防護装置が稼働するまで (ヒューズで数ミリ秒、防護リレーについては数秒) の短時間だけ発生する比較的高い磁界とを区別して試験レベルを設定している。

 例えば連続磁界の場合、製品群規格 CISPR 24 では 1 A/m (r.m.s.)、住宅、商業及び軽工業環境におけるイミュニティ共通規格 IEC 61000-6-1 では 3 A/m (r.m.s.)、工業環境におけるイミュニティ共通規格IEC 61000-6-2 では、30 A/m (r.m.s.) が要求されている。磁界に影響されるデバイスの例として、CRTモニタ、ホール素子、ダイナミックマイク、磁界センサー等が想定されているが、磁界に影響されるデバイスがない機器は試験対象から除かれている。しかし、磁界に影響されないことを設計的に証明するのが難しい場合は、電源周波数磁界イミュニティを実施した方が簡単かもしれない。

 EN 61000-4-8: 2010は、IEC 61000-4-8: 2009 と内容は同じである。JIS C 1000-4-8: 2003 は、1993 年に発行された第 1版と2000 年に発行された修正票 1に基づいて作成されている。但し、製品、製品群規格、共通規格等で、参照規格の版が指定されていない場合は、試験時点の最新版を、一方、版が指定されている場合はその版を基に試験を行う。

 本稿は規格の体系通りに説明したものではなく、規格を最初に読むときの理解を助け、具体的な試験のイメージをつかむために要点を抜粋したものである。規格の詳細な内容については規格原本を参照する必要がある。


試験レベルの設定

 製品または製品群規格の適用範囲内の製品は、それに基づいて決める。その適用範囲外の製品は、共通規格に基づいて決める。メーカーや使用者が希望する電磁環境に基づいて決めることもできる。

 その試験レベルを 1 から 5 までに分類し、10dB ステップで磁界強度が設定されていて、このレベルから選択するのが原則である。レベル X は特別として自由に磁界強度を決められる。試験レベルの選択に関する情報は、附属書 C に、実際のレベルに関する情報は、附属書 D に書かれている。


続きは『月刊EMC No.342』にて

【月刊EMC No.342 目次情報】

<特集>
◇鉄道における無線列車制御とEMC
・海外鉄道の無線関連電磁ノイズ問題と解決事例
 ((独)自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 渡邉朝紀)
・CBTC(通信ベース列車制御)システムの開発ー無線式システム適用と展開
 (タレスジャパン(株) 林剛)
・無線通信障害とCBTC 実用化
 (日本信号(株) 研究開発センター安全研究室 八木誠)

<Technology>
・電磁シールド壁による無線LANの干渉対策
 (東急建設(株) 川瀬隆治、青山学院大学 橋本修)
・無線AP 置局設計支援ツールによる干渉対策事例と稠密環境に適した無線LAN の標準化動向
 (NTTサービスエボリューション研究所 新倉康巨、鈴木晃、泉俊光、村松真知、花籠靖、
  NTTアクセスサービスシステム研究所、鷹取泰司、松井宗大、溝口匡人)
・車載インバータの電磁ノイズ設計を実現する車両全体解析技術
 ((株)日立製作所 李ジャア、船戸裕樹、高橋昌義、
  日立アメリカ 方田勲、日立オートモティブシステムズ(株) 坂本英之、齋藤隆一)
・近距離無線システムSUN における通信量制御に関する一考察
 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 児島史秀)
・近接イミュニティ試験用薄型プレート広帯域アンテナ特性
 ((株)ノイズ研究所 久保崇将)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSIのEMC設計①
 半導体集積回路設計と電磁両立性概要
 (ローム(株) 稲垣 亮介)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑭
 IEC 61000-4-8 電源周波数磁界イミュニティ試験
 ((株)e・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC③
 ビル・工場における接地システム設計の知識
 (関東学院大学 高橋健彦)
・欧州市場への製品輸出とEMC⑤
 NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と考慮すべき関連製品指令との関係
 (運用システムに関係する場合が多い)
 (グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)

<規格・規制情報>
・舶用機器のEMC に関する船級要件
((一財)日本海事協会 松尾守)

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