【IACS UR/E10】舶用機器の EMC に関する船級要件(月刊EMC)

2018.6.27 更新
舶用機器の EMC に関する船級要件(月刊EMC)

【伝導低周波妨害イミュニティ試験回路】

 舶用機器の EMC に関する要件が検討され始めた時期は、航空機や医療分野に比べると比較的遅く、国際海事機関(IMO, international maritime organization)において 1991 年、海上遭難及び安全システム(GMDSS, global maritime distress and safety system)の導入に伴い、これら SOLAS 条約で要求される重要な無線設備が他の航海機器と並べて配置されることから、GMDSS に対する一般要件として電磁環境耐性が要求されることとなった。

 また、各船級協会の規則の統一を図る統一規則(UR, unified requirements)や国際条約についての統一解釈(UI,unified interpretations)等の策定を行う船級協会の集まりである国際船級協会連合(IACS, international association of classification societies)において 1993 年、舶用機器の制御、監視等を電子デバイスで行う場合が増大してきたことにより、これらの誤作動が招く結果も重大なものとなってきたことから、電子デバイス等については従来から要求されていた環境試験に電磁環境耐性についての試験が IACS UR/E10 Test Specification for Type Approval において新たに要求されることとなった。

 各船級協会は前述の IACS UR/E10 を基に船上の制御・監視・警報・安全システムに使用される電気・電子機器に対する承認基準を定めている。船級協会によっては一部試験条件を厳しく定めている試験項目もあるが、ベースは同 UR となっている。ここでは日本海事協会(以下、「本会」という)の規則及び試験基準を含む承認要領について紹介したいと思う。


適用対象

 機関室内のプラントを自動化し、通常人がいる状態と同レベルの安全性を確保しつつ定期的に無人となる機関室を有する船舶を M0(エムゼロ)船と呼んでいる。これに対し、常時機関室を有人とする船舶を一般船又は非 M0 船と呼んでいる。一般船には広い意味が考えられることから、ここでは誤解を防ぐために非 M0 船と呼ぶことにする。

 EMC を含む環境試験の適用対象機器は、M0 船と非 M0 船とで異なる。この他、鋼船規則において本会の Type Approvalが要求されている機器であって、且つ、その承認試験の一部に環境試験が要求されているものもあるが、これらについては後述することにする。

非 M0 船の場合

 鋼船規則 D 編「機関」の 18 章「自動制御及び遠隔制御」18.7.1 項において、同章に規定する機器及び装置の自動制御及び遠隔制御を行うための設備のうち本会が必要と認めるものに対して環境試験が要求されている。

M0 船の場合

 M0 船にあっては、鋼船規則 D 編に加え自動化設備規則が適用となる。同規則 2.2.2 項において、機関集中監視制御設備及び機関区域の無人化設備に使用される自動制御又は遠隔制御を行うための機器、ユニット及びセンサー並びにこれらにより構成される装置のうち本会が必要と認めるものに対して環境試験が要求されている。


続きは『月刊EMC No.342』にて

【月刊EMC No.342 目次情報】

<特集>
◇鉄道における無線列車制御とEMC
・海外鉄道の無線関連電磁ノイズ問題と解決事例
 ((独)自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 渡邉朝紀)
・CBTC(通信ベース列車制御)システムの開発ー無線式システム適用と展開
 (タレスジャパン(株) 林剛)
・無線通信障害とCBTC 実用化
 (日本信号(株) 研究開発センター安全研究室 八木誠)

<Technology>
・電磁シールド壁による無線LANの干渉対策
 (東急建設(株) 川瀬隆治、青山学院大学 橋本修)
・無線AP 置局設計支援ツールによる干渉対策事例と稠密環境に適した無線LAN の標準化動向
 (NTTサービスエボリューション研究所 新倉康巨、鈴木晃、泉俊光、村松真知、花籠靖、
  NTTアクセスサービスシステム研究所、鷹取泰司、松井宗大、溝口匡人)
・車載インバータの電磁ノイズ設計を実現する車両全体解析技術
 ((株)日立製作所 李ジャア、船戸裕樹、高橋昌義、
  日立アメリカ 方田勲、日立オートモティブシステムズ(株) 坂本英之、齋藤隆一)
・近距離無線システムSUN における通信量制御に関する一考察
 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 児島史秀)
・近接イミュニティ試験用薄型プレート広帯域アンテナ特性
 ((株)ノイズ研究所 久保崇将)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSIのEMC設計①
 半導体集積回路設計と電磁両立性概要
 (ローム(株) 稲垣 亮介)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑭
 IEC 61000-4-8 電源周波数磁界イミュニティ試験
 ((株)e・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC③
 ビル・工場における接地システム設計の知識
 (関東学院大学 高橋健彦)
・欧州市場への製品輸出とEMC⑤
 NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と考慮すべき関連製品指令との関係
 (運用システムに関係する場合が多い)
 (グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)

<規格・規制情報>
・舶用機器のEMC に関する船級要件
((一財)日本海事協会 松尾守)

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