近距離無線システム SUN における通信量制御に関する一考察(月刊EMC)

2018.6.29 更新
近距離無線システム SUN における通信量制御に関する一考察(月刊EMC)

【SUN の利用イメージ】

 電力 ・ ガス ・ 水道等のメータに無線機を搭載し、無線通信により検針 ・ 状況管理 ・ 制御を実現するスマートユーティリティネットワーク(SUN; Smart Utility Network)は、エネルギー消費形態の適切な管理を目的とする次世代電力網スマートグリッドや、当該管理の実施主体であるスマートホーム ・ スマートビルディング ・ スマートシティにおける欠かせない構成要素のひとつとなることからも、将来、最大規模の需要増加ならびに市場拡大が見込まれる新しい無線システムのひとつと考えられている。本稿では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT;National Institute of Information and Communications Technology)の SUN に関する研究開発、標準化、および社会展開活動を挙げながら、SUN の将来動向について述べる。

SUN の利用イメージ

 図に SUN の利用イメージを示す。戸建て、あるいは集合住宅の各戸に無線機搭載型のメータが取り付けられ、それぞれの無線機から送信された検針データが SUN サービスエリア内で収集制御局に集約される様子を示す。また、当該検針データは、その後、より広域の WAN (Wide Area Network)システムによって WAN 収集制御局へと伝達されている。

 SUN の効用として、第一には従来の検針作業コストの軽減が考えられるが、自動化によって取りこぼしのない確実な検針プロセスが遂行されること、治安上の改善効果がもたらされること等の効果も注目されている。また現在、SUN の適用範囲は、スマートメータシステムにとどまらず、図中にある無線センシング、モニタリングシステムにも拡張が有望だと考えられている。

SUN の所要条件

 本節では、SUN の所要条件として、SUN システムの成立に必要な技術的課題について述べる。SUNの主な技術的課題として、以下のふたつが考えられている。

① 電池による運用を可能とする省電力技術
② サービスエリアを拡張するマルチホップ技術

 ここで①は、ガスメータや水道メータのように、電線等によるメータ外部からの電源供給が容易でなく、内蔵電池でのメータおよび SUN 無線機の動作を想定する場合に特に重要となる技術である。メータ運用の見地から、一般には、電池を交換することなく、10 年以上の継続動作が目標とされている。次に②は、図に示されているように、収集制御局から遠くに設置されたメータや、集合住宅内等遮蔽された環境に設置されたメータが、それぞれ距離および遮蔽による無線電波の減衰を受け、直接通信のみでは所望のサービスエリアを実現できない場合に、各メータが中継局の役割を果たし、多段中継を行うことで全ての検針データを確実に収集する技術である。


続きは『月刊EMC No.342』にて

【月刊EMC No.342 目次情報】

<特集>
◇鉄道における無線列車制御とEMC
・海外鉄道の無線関連電磁ノイズ問題と解決事例
 ((独)自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 渡邉朝紀)
・CBTC(通信ベース列車制御)システムの開発ー無線式システム適用と展開
 (タレスジャパン(株) 林剛)
・無線通信障害とCBTC 実用化
 (日本信号(株) 研究開発センター安全研究室 八木誠)

<Technology>
・電磁シールド壁による無線LANの干渉対策
 (東急建設(株) 川瀬隆治、青山学院大学 橋本修)
・無線AP 置局設計支援ツールによる干渉対策事例と稠密環境に適した無線LAN の標準化動向
 (NTTサービスエボリューション研究所 新倉康巨、鈴木晃、泉俊光、村松真知、花籠靖、
  NTTアクセスサービスシステム研究所、鷹取泰司、松井宗大、溝口匡人)
・車載インバータの電磁ノイズ設計を実現する車両全体解析技術
 ((株)日立製作所 李ジャア、船戸裕樹、高橋昌義、
  日立アメリカ 方田勲、日立オートモティブシステムズ(株) 坂本英之、齋藤隆一)
・近距離無線システムSUN における通信量制御に関する一考察
 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 児島史秀)
・近接イミュニティ試験用薄型プレート広帯域アンテナ特性
 ((株)ノイズ研究所 久保崇将)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSIのEMC設計①
 半導体集積回路設計と電磁両立性概要
 (ローム(株) 稲垣 亮介)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑭
 IEC 61000-4-8 電源周波数磁界イミュニティ試験
 ((株)e・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC③
 ビル・工場における接地システム設計の知識
 (関東学院大学 高橋健彦)
・欧州市場への製品輸出とEMC⑤
 NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と考慮すべき関連製品指令との関係
 (運用システムに関係する場合が多い)
 (グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)

<規格・規制情報>
・舶用機器のEMC に関する船級要件
((一財)日本海事協会 松尾守)

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