近接イミュニティ試験用薄型プレート広帯域アンテナ特性(月刊EMC)

2018.7.2 更新
近接イミュニティ試験用薄型プレート広帯域アンテナ特性(月刊EMC)

【薄型プレート広帯域アンテナの構造】

 近年、携帯電話やスマートフォン、ゲーム機やタブレット等の Wi-fi 接続が可能な機器に代表されるように、携帯型無線送信機が急増している。これら送信機の送信電力は数 mW ~数 W 程度ではあるが、TV 電波を送信するような固定局とは異なり、他の電子機器に近接することで強い電界の影響を与える可能性がある。また、例えば、車両のシートの下等、通常の使用上では想定しない隙間に入ることで、他の電子機器に近接する可能性も考えられる。

 その為、これら携帯型無線送信機に対する EMC の確保が必要であり、特に自動車や車載機器においては、早くより EMC 試験の国際規格化がされてきた。これまでの試験では、各送信機の周波数に応じてアンテナを複数本取り換えてイミュニティ評価を行っていたが、アンテナの取り換えや出力校正に時間がかかることや、評価対象となる自動車に搭載される電子機器が急増している背景からも、アンテナを広帯域化することでの試験時間の短縮への要望が高まってきた。本稿では、これら要望に応え開発された薄型プレート広帯域アンテナの特性について紹介する。


携帯型送信機に対するイミュニティ規格

 自動車と車載機器の携帯型送信機に対するイミュニティ試験は、ISO11451-3(2015) と ISO11452-9(2012) に規定されている。車載機器に関しては適用周波数範囲が 26MHz ~ 5.85GHz となり、標準的な携帯型送信機の特性(周波数帯、電力レベル、変調)が付属書に記載されている。

 ただし、すべての国で使用されている様々な携帯型送信機を網羅されていないことに注意は必要である。また、実際の携帯型送信機の特性と、それらを模擬して試験で使用するアンテナ(ノーマルモードヘリカルアンテナやスリーブアンテナ等)の特性を考慮して試験を行う必要があり、車両メーカによって、使用するアンテナや周波数帯や電力レベルは様々である。

アンテナの構造

 薄型プレート広帯域アンテナはプリント基板上に装荷したアンテナであり、その構造イメージを図に示す。図のようにスリーブアンテナと似た放射素子とグランド素子を備え、パターン形状や基板の誘電率等を考慮することで 700MHz ~ 6GHzの周波数帯域で VSWR が 3 以下となる広帯域化を実現している。

 また、スリーブアンテナと同様に不平衡アンテナであることから同軸ケーブルで直接給電することが可能であり、基板をカバーする樹脂ケースを含めても 188mm(長さ)× 50mm(幅)× 8mm(厚み)と非常に小型で軽量である。その為、スマートフォン等の小型送信機が入る隙間にも対応できることから、より実機に近いイミュニティ評価が可能となる。


続きは『月刊EMC No.342』にて

【月刊EMC No.342 目次情報】

<特集>
◇鉄道における無線列車制御とEMC
・海外鉄道の無線関連電磁ノイズ問題と解決事例
 ((独)自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 渡邉朝紀)
・CBTC(通信ベース列車制御)システムの開発ー無線式システム適用と展開
 (タレスジャパン(株) 林剛)
・無線通信障害とCBTC 実用化
 (日本信号(株) 研究開発センター安全研究室 八木誠)

<Technology>
・電磁シールド壁による無線LANの干渉対策
 (東急建設(株) 川瀬隆治、青山学院大学 橋本修)
・無線AP 置局設計支援ツールによる干渉対策事例と稠密環境に適した無線LAN の標準化動向
 (NTTサービスエボリューション研究所 新倉康巨、鈴木晃、泉俊光、村松真知、花籠靖、
  NTTアクセスサービスシステム研究所、鷹取泰司、松井宗大、溝口匡人)
・車載インバータの電磁ノイズ設計を実現する車両全体解析技術
 ((株)日立製作所 李ジャア、船戸裕樹、高橋昌義、
  日立アメリカ 方田勲、日立オートモティブシステムズ(株) 坂本英之、齋藤隆一)
・近距離無線システムSUN における通信量制御に関する一考察
 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 児島史秀)
・近接イミュニティ試験用薄型プレート広帯域アンテナ特性
 ((株)ノイズ研究所 久保崇将)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSIのEMC設計①
 半導体集積回路設計と電磁両立性概要
 (ローム(株) 稲垣 亮介)
・EMC測定・試験のポイント-今更、人に聞けないEMC用語解説⑭
 IEC 61000-4-8 電源周波数磁界イミュニティ試験
 ((株)e・オータマ 田路明)
・建築設備の安全設計とEMC③
 ビル・工場における接地システム設計の知識
 (関東学院大学 高橋健彦)
・欧州市場への製品輸出とEMC⑤
 NLFを含めたCEマーキングに関連する指令と考慮すべき関連製品指令との関係
 (運用システムに関係する場合が多い)
 (グローバル・テクノマネジメント研究所 平戸昌利)

<規格・規制情報>
・舶用機器のEMC に関する船級要件
((一財)日本海事協会 松尾守)

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