【ポートの例】
マルチメディア機器のエミッション規格である CISPR 32 は、2001 年に当時の CISPR E 小委員会(CISPR/E)が所掌していた「音声およびテレビジョン放送受信機ならびに関連機器」と、CISPR G 小委員会(CISPR/G)が所掌していた「情報技術装置(ITE)」を統合し、新たにマルチメディア機器加えた機器のエミッションおよびイミュニティ規格を審議する小委員会として発足した CISPR I 小委員会(CISPR/I)で検討が開始され、一度のステージゼロを経て 2012年 1 月に初版が発行された。
CISPR 32 初版は、初版発行に向けた投票付委員会草案(CDV:Committee Draft for Vote)の段階で、各国の国内委員会(NC:National Committee)の意見対立が激しかった幾つかの案件が先送りされて発行されており、第 2.0 版はこれらの懸案事項と、初版発行後に新たに追加あるいは修正することが必要となった案件の検討結果に基づき、2015 年 3 月に発行されている。
マルチメディア機器の分野は日進月歩が激しいため、CISPR 32 の運用が本格化するとともに測定の再現性の向上、新たに追加された代替測定法と従来の測定法との相関性の確認等の検討が継続して行われている一方において、無線電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)等の新たな機能の利用等に伴う検討課題が顕在化してきている。このためCISPR/I の第 2 作業班(I/WG2)では、CISPR 32 第 2.0版の修正に向けた課題を抽出し、これらを短期作業と長期作業に区分してメンテナンス作業を開始したところである。本稿では、最初に CISPR 32 第 2.0 版の主要な内容について解説し、次いで第 2.0 版の修正に向けて抽出され整理された課題の検討状況ならびに今後の動向を紹介する。
CISPR 22 が、音声とテレビジョン放送受信機および関連機器については CISPR 13 が適用されてきているが、これらの機器を複合化した機器の場合は、同一の目的で両規格に基づく妨害波測定を二重に実施する必要があり、両者を統合した規格の制定が求められていた。
CISPR 32 はこのような背景の下で検討が開始され、ITE、音響機器、映像機器、放送用受信機器、娯楽用照明制御機器およびこれらの機器の組み合わせ機器と定義されているマルチメディア機器(MME:Multimedia Equipment)の、エミッション許容値と測定法等に関する要求条件を規定した国際規格である。(注:CISPR 13 と CISPR 22 では妨害波という用語が使用されてきたが、CISPR 32 ではエミッションという用語を使用することに変更された。)
CISPR 32 は、CISPR 22 を基本とし、これに CISPR 13で規定していた放送用受信機器とその関連機器に固有の要求条件を取り込むとともに、新たにエミッション許容値と測定法に関するいくつかの技術的な修正を加えた規格となっている。
続きは『月刊EMC No.343』にて
<特集>
◇医療ICT化の進む方向と各種電波に対するリスク管理
・医用テレメータの無線チャネル管理~混信事例とその対策~
(東海大学 村木能也)
・医療ICT 化における問題点~無線LAN 障害事例とその対策~
(佐賀大学 花田英輔)
<Technology>
・フルSiC ハイブリッド車時代に要求されるEMC 技術
(島根大学 山本真義)
・プリント配線板電源層からの放射雑音低減法(プリント基板からのエミッション対策)
(佐賀大学 佐々木伸一)
・小型ワイヤレス・電子装置設置環境診断システム
(東芝三菱電機産業システム(株) 前畑典之)
<規格・規制情報>
・マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I 作業班主任 雨宮不二雄)
・静電結合アドミッタンスの試験方法 62153-4-8 Ed.1.0
((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)
<実践講座>
・規制の法的枠組みと動向 ①
EMC 関連国際標準化組織とその歴史
(東京大学 徳田正満)
・電源ノイズ解析と設計法 ②
電源ノイズ解析と設計法
(大阪大学 舟木剛)
・建築設備の安全設計とEMC ④
ビル・工場における接地システム設計の知識
(関東学院大学 高橋健彦)
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