小型ワイヤレス・電子装置設置環境診断システム(月刊EMC)

2018.7.10 更新
小型ワイヤレス・電子装置設置環境診断システム(月刊EMC)

【制御装置の環境測定】

 製造業において、プラントを制御する機器や装置は通常の期待寿命を超えて使用されることも多い。プラントの機器や装置の置かれる環境には、温度、湿度、雰囲気、振動、電圧、接地、電界、磁界など様々な要素があるが、これらの要素は機器や装置の増設、改造、更新により稼働を始めた初期の状態から変化してゆくのが通常である。この変化が原因で機器や装置が予期せぬ、また、原因不明の動作をすることがある。

 このようなときは原因調査のために環境調査を実施することになるが、場合によっては環境調査の専門家が高価な専用の測定器を使用して長期にわたって実施することがあり、人手も費用も掛かるものとなる。このため、専門性を必要とせず人手も必要としない簡易な調査方法のニーズがあり、当社ではこのニーズを満足する測定システムを開発し製品化した。

 この測定システムは、小型、軽量のセンサと無線によるデータ収集機能を備えた設置環境診断システムである。当社では実際にこの設置環境診断システムによって数多くの機器や装置の診断を実施したので、本稿にて紹介する。


制御装置の設置環境

 プラントを建設した当初は機器や装置の配置やそれらが動作するのに必要な配線は、最もよい環境(他機器へ影響を及ぼさない、また、他機器の影響を受けない)となるように考慮されて実施され、試運転を行うことにより機能、性能、環境が評価された後に運用に至る。しかし、運用が長期にわたるにつれ改造や更新などにより機器や装置を取り巻く環境が大きく変化することがある。この変化により機器や装置の設置環境が大きく変わり、予期せぬ不適合を起こすことがある。以下に事例を示す。

1)振動をともなう機器や装置が設置される。
  →振動に弱い機器が故障する。
  →コネクタなどの部位で接触不良を起こす。
2)機器や装置の増設にともない追加された電源線が既設信号線付近に配線される。
  →信号へのノイズ源となる。
3)機器や装置の増設にともない追加された動力線が既設設備付近に配線される。
  →電源装置へのノイズ源となる。
4)空調機が更新される。
  →湿度が低くなり静電気の発生を助長する。
5)インバータ機器、または、インバータを内蔵する機器が増設される。
  →電源装置または信号線へのノイズ源となる。


続きは『月刊EMC No.343』にて

【月刊EMC No.343 目次情報】

<特集>
◇医療ICT化の進む方向と各種電波に対するリスク管理
・医用テレメータの無線チャネル管理~混信事例とその対策~
 (東海大学 村木能也)
・医療ICT 化における問題点~無線LAN 障害事例とその対策~
 (佐賀大学 花田英輔)

<Technology>
・フルSiC ハイブリッド車時代に要求されるEMC 技術
 (島根大学 山本真義)
・プリント配線板電源層からの放射雑音低減法(プリント基板からのエミッション対策)
 (佐賀大学 佐々木伸一)
・小型ワイヤレス・電子装置設置環境診断システム
 (東芝三菱電機産業システム(株) 前畑典之)

<規格・規制情報>
・マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I 作業班主任 雨宮不二雄)
・静電結合アドミッタンスの試験方法 62153-4-8 Ed.1.0
 ((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)

<実践講座>
・規制の法的枠組みと動向 ①
 EMC 関連国際標準化組織とその歴史
 (東京大学 徳田正満)
・電源ノイズ解析と設計法 ②
 電源ノイズ解析と設計法
 (大阪大学 舟木剛)
・建築設備の安全設計とEMC ④
 ビル・工場における接地システム設計の知識
 (関東学院大学 高橋健彦)

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