【ツイストペア導体 2.5 回転のモデル】
エレクトロニクス実装学会の EMC モデリング研究会や超高速高周波エレクトロニクス実装研究会において、高速・高周波、EMC の問題や課題に関して、様々なモデルを検討してきた。近年、高速・高周波数化に伴いノイズに強いと言われる差動信号がよく用いられるようになってきた。しかしながら、差動ケーブルで良く用いられる低価格なツイストペアケーブルが、どのくらいの周波数まで使えるのか、どのくらいの長さまで使えるのかといった解を出すのは容易ではない。
そこで、ツイストペアの差動ケーブルを簡易化したツイストペア導体モデルを検討した。また、差動ケーブルであっても、ケーブルから結合する ESD ノイズの影響で電子機器が誤動作する可能性が大きくなってきた。ここでは、差動ケーブルのイミュニティ評価を検討するモデルを検討した。
第 2 章では、1GHz 以下を想定した放射特性や近傍電界をシミュレーションした事例を紹介する。第 3 章では、1GHz 以上を想定したサックアウトを検討するためにシミュレーションした事例を紹介する。第 4 章では、実際の設計現場で問題となった差動ケーブルのイミュニティ評価にシミュレーションを活用した事例を紹介する。第 5 章では、差動ケーブルのイミュニティ評価で必要となる 5 ポート S パラメータに関して紹介する。
ツイストペアケーブルは古くから EMC 対応設計として多くのエンジニアに利用されているが、ツイストペアケーブルの放射特性やサックアウト現象のメカニズムを十分に理解していることは少ないと思う。また、昨今の高周波数化や低電圧化によって、ESD(静電気放電)の問題も増えている。差動ケーブルの評価にモデリング技術を活用した事例も余り知られていない。
ツイストペアケーブルやスパイラルのシールド付ケーブルを正確にシミュレーションすることは、難易度が高いため、ケーブルの専門家や研究者に任せる。ここでは、差動ケーブルの EMC モデリングの基礎から応用までの放射特性や近傍電界、イミュニティ評価のモデリング事例を体感し、メカニズムの理解や自身の問題課題の解決の参考にして欲しい。
電子機器の高速化に伴い、ノンシールドのツイストペアケーブルはあまり使われなくなり、替わりに放射ノイズに強いといわれるシールドタイプのケーブルやシールドタイプの FFC などが良く使われるようになった。しかしながら、近年、電子デバイスの低電圧化が進んでおり、低価格の電子機器の開発のために安価なツイストペアケーブルなどを検討する必要性が高まっている。
続きは『月刊EMC No.344』にて
<特集>
◇0(ゼロ)からのEMC対策と設計
・はじめてのEMC 対策─解決に至るアプローチとは─
(パナソニック株式会社 大住秀夫)
・はじめてのEMC 設計─現象を整理して捉えるには─
(住友電気工業株式会社 大森寛康)
<Technology>
・差動ケーブルのEMC モデリング技術─基礎的な事例から応用的な事例まで─
(富士ゼロックス(株) 奈良茂夫)
・光電界センサ/光電圧プローブによるESD波形の測定
((株)精工技研 大沢隆二)
<Information>
・多様化する電源の評価事例ノイズ試験におけるスイッチング電源の活用
(月刊EMC編集部)
<規格・規制情報>
・マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
(情報通信審議会情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 I 作業班主任 雨宮不二雄)
<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSI のEMC 設計 ②
半導体集積回路動作と電磁両立性特性
(ローム(株) 稲垣亮介)
・規制の法的枠組みと動向 ②
電波法とEMC
(京都大学研究員/東北大学名誉教授 杉浦行)
・新・回路レベルのEMC 設計 ⑲
車車間・路車間通信
(名古屋大学教養教育院 山里敬也)
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