埋め込み型医療機器開発に向けた電磁波適合性EMC 問題(月刊EMC)

2018.7.25 更新
埋め込み型医療機器開発に向けた電磁波適合性EMC 問題(月刊EMC)

【植え込み型ヘリカルフロー全置換型人工心臓】

 心停止、呼吸停止、そして、瞳孔散大は、古来、死の三徴候と呼ばれる。心臓が停止し、呼吸が止まり、脳波が停止して脳死に陥ったことを、瞳孔の散大を持って確認すれば、心臓も、肺も、脳も、非可逆的に「死」の転帰に至っていることを確認できるはずである。ところが、現代の医療の発展は、歴史的にも根拠があったはずの、このような「死の三徴候」の存在までも、古典的、牧歌的な古色蒼然たるものにしてしまった。

 心臓が止まっても、人工心臓が全身の循環を維持し、呼吸が止まっても、人工呼吸器が呼吸を助け、肺の機能が停止して、人体がその酸素化の機能を失っている病態でも、膜型人工肺は、血液に酸素を与え続けることができる。瞳孔散大を確認しようとしても、白内障や緑内障の手術を受けている患者も多く、人工網膜の発明は、網膜が完全にその機能を失った状態でも、視覚情報、光の情報を電気的なシグナルとして後頭葉に情報を送ることができる。

 歴史的に重要な役割を果たしてきて、死の三徴候が、三つが三つとも、原理的に、原則を果たさなくなってしまったのはそんなに新しいことではない。早くも第2次大戦の直後には、人工心肺の開発や臨床が救命に直結する時代に入り、心臓や肺の機能の機械的代行は、既に着手されていたのである。

 つまり心臓や、肺の機械的代行、人工臓器治療に関連する知見については、既に半世紀を超える蓄積があることになる。 図は、全置換型人工心臓システムの一例である。ヘリカルフロー式の血流パターンが、左心房・右心房から、大動脈・肺動脈へ吐出されるので、全身の循環を無拍動で維持できる。ここでは、死の三徴候など無意味になってしまっている。

 さらに、最近、日常の社会生活でも IoT/CPS 時代の電磁波セキュリティなどが、話題となる時代に入り、個人情報どころか、人体の生命維持に直結する人工臓器のサーバーセキュリティの問題が前景化している。そして、1種類だけの人工臓器ではなく、一人の患者にの多種類の人工内臓が埋め込まれる病態も稀ではなくなり、多数の人工臓器が「干渉」し合う事態に対処する必要性も増大しつつある。

続きは『月刊EMC No.345』にて

【月刊EMC No.345 目次情報】

<特集>
◇これからのEMC~総務省、国土交通省、消費者庁を始め協議会、委員会、研究機関、規格関連等39 団体が執筆~
・総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長
 坂中靖志 氏
・総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課長
 杉野勲 氏
・国土交通省 自動車局 技術政策課
 河野成德 氏
・一般社団法人 国際標準化協議会 会長
 正田英介 氏
・一般社団法人 電波産業会・電磁環境委員会 委員長
 北海道大学名誉教授
 野島俊雄 氏
・CISPRJ 電波雑音委員会委員長  スマートグリッド・コミュニティのEMC問題調査専門委員会委員長
 電磁環境工学情報EMC 編集顧問
 東京都市大学名誉教授
 徳田正満 氏



※本記事は2017年1月のものです。所属等変更がある場合もございます。

<Technology>
・IoT 時代のモバイル端末に求められるハードウェアセキュリティ
 (東北学院大学 林 優一)
・埋め込み型医療機器開発に向けた電磁波適合性EMC 問題
 (東北大学加齢医学研究所非臨床研究推進センター 山家智之、白石泰之、井上雄介、山田昭博)

<規格・規制情報>
・メタリック通信ケーブルのEMC 特性試験方法の概要解説 IEC 62153-4-9 Ed.1.0
 ((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)

<実践講座>
・規制の法的枠組みと動向 ③
 アジア(中国・韓国・台湾)におけるEMC 規制
 (パナソニック(株) 梶屋俊幸)
・電源ノイズ解析と設計法 ③
 電源ノイズ解析と設計法
 (大阪大学 舟木剛)
・建築設備の安全設計とEMC ⑤
 ビル・工場における接地システム設計の知識
 (関東学院大学 高橋健彦)

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