ハイブリッドコイルによる照明 /AV/OA 機器のノイズ対策(月刊EMC)

2018.7.30 更新
ハイブリッドコイルによる照明 /AV/OA 機器のノイズ対策(月刊EMC)

【コンデンサインプット型整流平滑回路模式図】

 照明器具あるいは TV や PC に代表される AV、OA 機器など小型化・軽量化・高効率化が求められる電子機器にはスイッチング電源が広く採用され、PFC( Power Factor Correction)回路が基幹制御として定着している。このスイッチング電源の整流平滑回路にはコンデンサインプット型が用いられる場合が多いが、非線系負荷が接続される回路応答上、入力電流は正弦波とは異なり、導通角が狭くピーク値の高いパルス状の波形となり、皮相電力に対する有効電力の比、すなわち力率が低下してしまう。

 また、パルス状の電流波形には多くの高調波電流が含まれ、商用電源に接続されるその他の機器や配線系統に障害を発生させる原因の一つとなっており、国際規格(IEC 61000-3-2 ed. 4.0)等により規制されている。PFC 回路はこれら力率改善と高調波抑制を目的として電子機器への搭載が広まっているが、伝導ノイズが増加してしまうという課題も持ち合わせている。

 本稿では、まずコンデンサインプット型整流平滑回路の応答と高調波規制を振り返り、PFC 回路の伝導ノイズを伝搬経路上で成分分離した結果とその特有傾向を示す。次に、対策のために一般的に用いられるノイズフィルタ回路に関して解説し、最後にハイブリッドコイルの製品の特長と具体的な対策事例を紹介する。


コンデンサインプット型整流平滑回路動作と高調波規制

 商用電源(50Hz/60Hz)の入力電圧をブリッジ型全波整流回路で整流し、直流出力側に大容量の平滑コンデンサを接続したコンデンサインプット型整流平滑回路の模式図を図に示す。

 コンデンサインプット型整流平滑回路は、入力電圧V INが正の半サイクル期間においてダイオード D1, D4が順方向バイアスとなり、負の半サイクル期間においてはダイオード D2,D3 が順方向バイアスとなる。この一連のサイクルの中で入力電圧≧平滑コンデンサ電圧となる期間のみ直流出力側に電流が流れ、負荷に電力を供給するとともに平滑コンデンサ C1 を充電するため、入力電流 I INは導通角が狭くピーク値の高いパルス状の波形になる。入力電圧≦平滑コンデンサ電圧となる期間においてダイオードは逆バイアスが印加された阻止状態となり、平滑コンデンサ C1から負荷 R1 に対して電力が供給される。

図において入力電圧 V IN を AC100V/50Hz、平滑コンデンサ容量 C1 容量を 47uF、負荷抵抗 R1を 1k1とした場合の出力電圧 V OUT および入力電流 I IN のシミュレーション結果を示す。

続きは『月刊EMC No.346』にて

【月刊EMC No.346 目次情報】

<特集>
◇EMCC シンポジウム
・医療機関における 適正な電波利用環境の構築を目指して

<Technology>
・ハイブリッドコイルによる照明/AV/OA 機器のノイズ対策
 (NEC トーキン(株) 板谷道隆)
・インバータとブリッジレスPFC 回路の伝導ノイズ低減法
 (九州大学 庄山正仁)
・高速・広帯域アナログ・デジタル混載集積回路におけるノイズ課題
 (東京工業大学工学院 松澤昭、宮原正也)
・接触力計測のためのマイクロメカニカルセンサの実装とノイズ低減
 (新潟大学 寒川雅之)

<Information>
・IEC 1906 賞受賞
 マルチメディア機器のEMC 規格制定に貢献 実験に基づく寄与文書を評価
 (PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)

<規格・規制情報>
・IEC61643-351:2016 Ed.1.0 解説
 サージアイソレーショントランスフォーマポイント解説
 ((株)NTTファシリティーズ) 佐藤秀隆)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSI のEMC 設計 ③
 用途別半導体集積回路の電磁両立性設計(1)
 (ローム(株) 稲垣亮介)

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