インバータとブリッジレスPFC 回路の伝導ノイズ低減法(月刊EMC)

2018.8.1 更新
インバータとブリッジレスPFC 回路の伝導ノイズ低減法(月刊EMC)

【パワーエレクトロニクス回路におけるスイッチングノイズ(伝導・放射ノイズ)の発生例】

 近年、低炭素社会の実現に向けて、環境に優しいハイブリッド自動車や電気自動車の普及が促進され、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの利用が注目されている。今後、これらの機器において用いられるパワーエレクトロニクス回路が、我々の身近なところでますます多用されることが予想される。

 しかし、パワーエレクトニクス回路ではスイッチング素子の急峻なオン・オフ動作が高周波で繰り返されるため、それ自体がスイッチングノイズの発生源となり、伝導・放射ノイズとして周囲にノイズをまき散らし、機器の誤動作の要因となる恐れがある。本稿ではまず、パワーエレクトロニクス回路における電磁ノイズの発生機構とその一般的な低減法について説明し、次に、3相モータ駆動用インバータ、太陽光発電用トランスレスパワーコンディショナ(PCS: Power Conditioning System)、およびブリッジレスPFC(Power Factor Correction: 力率改善)回路を対象に、コモンモード伝導ノイズに注目したノイズ低減法について解説する。


パワーエレクトロニクス回路と高周波スイッチング

 パワーエレクトロニクス回路はインバータや整流器など、いくつかの機能分野に分類することができるが、これらに共通して言えることは、半導体スイッチの急峻なオン・オフ動作が数十 kHz ~数百 kHz の高周波で繰り返されており、スイッチングノイズの発生源となっていることである。

 スイッチングノイズは、電源ケーブルなどの導線を伝搬する伝導ノイズと、空間に放射されて伝搬する放射ノイズに分けることができる。図に、パワーエレクトロニクス回路が商用電源の供給を受けて動作している場合のスイッチングノイズの発生状況の一例を示す。

 この図の中で、パワーエレクトロニクス回路から電源ケーブルを通して商用電力系統に伝搬する伝導ノイズ電流はノーマルモードとコモンモードに分けることができるが、特にコモンモードノイズ電流は等価的に大きなループ電流を形成する場合が多く、放射ノイズの原因となる。従って、コモンモードノイズ電流を低減することは、放射ノイズを低減するためにも重要である。

 また、たとえば太陽光発電装置を商用電力系統につなげて用いる場合、パワーコンディショナと呼ばれるパワーエレクトロニクス回路が用いられる。このパワーエレクトロニクス回路は、DC-DC コンバータとインバータで構成されることが多いが、ここでの高周波スイッチングによるスイッチングノイズは伝導ノイズとして商用電力系統に伝搬する一方、太陽電池パネル側にも伝搬する。その結果、パワーエレクトロニクス回路自体、および太陽電池パネルから放射ノイズが発生し、様々な障害を引き起こす可能性がある。

続きは『月刊EMC No.346』にて

【月刊EMC No.346 目次情報】

<特集>
◇EMCC シンポジウム
・医療機関における 適正な電波利用環境の構築を目指して

<Technology>
・ハイブリッドコイルによる照明/AV/OA 機器のノイズ対策
 (NEC トーキン(株) 板谷道隆)
・インバータとブリッジレスPFC 回路の伝導ノイズ低減法
 (九州大学 庄山正仁)
・高速・広帯域アナログ・デジタル混載集積回路におけるノイズ課題
 (東京工業大学工学院 松澤昭、宮原正也)
・接触力計測のためのマイクロメカニカルセンサの実装とノイズ低減
 (新潟大学 寒川雅之)

<Information>
・IEC 1906 賞受賞
 マルチメディア機器のEMC 規格制定に貢献 実験に基づく寄与文書を評価
 (PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)

<規格・規制情報>
・IEC61643-351:2016 Ed.1.0 解説
 サージアイソレーショントランスフォーマポイント解説
 ((株)NTTファシリティーズ) 佐藤秀隆)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSI のEMC 設計 ③
 用途別半導体集積回路の電磁両立性設計(1)
 (ローム(株) 稲垣亮介)

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