接触力計測のためのマイクロメカニカルセンサの実装とノイズ低減(月刊EMC)

2018.8.8 更新
接触力計測のためのマイクロメカニカルセンサの実装とノイズ低減(月刊EMC)

【マイクロカンチレバーの作製例電子顕微鏡写真】

 半導体微細加工技術の進展に伴い、センサの小型化が進み、スマートフォン等の小型機器にも多数のセンサが搭載されるようになってきている。今後はさらに「トリリオン・センサ」と呼ばれるように、我々の身の回りや工場、医療等、あらゆるところにセンサを設置し、そこからの大量のデータを「ビッグデータ」として活用し、山積する様々な課題の解決を目指した「スマート」な社会の実現が期待されている。

 例えば、医療・福祉分野では、超少子高齢化社会の到来とともに、要介護者の増加とともに、介護者自体の高齢化による負担増加は年々深刻な課題となってきている。その中の課題の一例として、介護の現場において寝たきり患者の皮膚に発生する褥瘡の問題がある。褥瘡は一般的には床ずれとも呼ばれ、皮膚と寝具の連続的な接触により、皮膚組織が血流阻害により潰瘍を生じたものであり、患者のQOL を著しく低下させるものである。

 褥瘡予防のためには血流阻害を防ぐために体位転換により接触状態を変化させることが有効であるが、知識や経験を持つ医療機関ならばともかく、在宅看護の場合、介護者の負担が大きく、適切なタイミングを計るのも難しい。そこで、褥瘡のリスクを評価・管理し、適切な補助を行うような機器の開発が望まれる。このような機器としては、従来、体圧の分布を計測する機器が開発されてきているが、褥瘡の発生は必ずしも体圧による皮膚の圧縮変形だけではなく、例えば、摩擦やズレによる引き攣れや剪断変形と、それらの相互作用も重要な要因になることが明らかになってきている。

 このような社会的状況の中、我々の研究グループでは、多軸接触力を計測できる微小力覚(マイクロメカニカル)センサの開発を行ってきた。これは、MEMS(micro-electro-mechanical-systems) 技術を用いて作製した複数の微小片持ちはり(マイクロカンチレバー)構造を、柔軟な弾性樹脂(エラストマ)に埋め込んだものであり、検知部のサイズが約 1 mm と非常に小型であるとともに、複数の構造からの信号を組み合わせることにより、接触力をベクトル的に(大きさと方向を)検知可能である。

 このセンサを介護ロボットや褥瘡予防用の装置に用いることで、患者の支持時の安全で精密な動作制御や、体圧に摩擦やズレの影響も含めた褥瘡リスク評価を可能とすることを目標としている。しかし、センサの出力信号は非常に微弱であるため信号増幅処理が必須であり、増幅前のノイズ混入はできるだけ避ける必要がある。本稿では、我々が行ってきたマイクロメカニカルセンサの研究開発の中で、出力に影響を及ぼす電気的なノイズとその対策について得られた知見を紹介する。

続きは『月刊EMC No.346』にて

【月刊EMC No.346 目次情報】

<特集>
◇EMCC シンポジウム
・医療機関における 適正な電波利用環境の構築を目指して

<Technology>
・ハイブリッドコイルによる照明/AV/OA 機器のノイズ対策
 (NEC トーキン(株) 板谷道隆)
・インバータとブリッジレスPFC 回路の伝導ノイズ低減法
 (九州大学 庄山正仁)
・高速・広帯域アナログ・デジタル混載集積回路におけるノイズ課題
 (東京工業大学工学院 松澤昭、宮原正也)
・接触力計測のためのマイクロメカニカルセンサの実装とノイズ低減
 (新潟大学 寒川雅之)

<Information>
・IEC 1906 賞受賞
 マルチメディア機器のEMC 規格制定に貢献 実験に基づく寄与文書を評価
 (PFUテクノコンサル(株) 千代島敏夫)

<規格・規制情報>
・IEC61643-351:2016 Ed.1.0 解説
 サージアイソレーショントランスフォーマポイント解説
 ((株)NTTファシリティーズ) 佐藤秀隆)

<実践講座>
・製品の信頼性を高めるLSI のEMC 設計 ③
 用途別半導体集積回路の電磁両立性設計(1)
 (ローム(株) 稲垣亮介)

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