【IEC 61000-4-5】サージイミュニティ規格　第 3 版改正に対する不満とその対応（月刊EMC）

　サージイミュニティ試験の基本規格 IEC 61000-4-5 第 3 版（Ed.3）は、2014 年 5 月に改正発行された。改正内容は、サージ発生器の技術的矛盾を無くし、波形規定がなく校正対象外であった相互接続線用CDN の出力波形を規定し、その他全体にわたり見直しを行ったもので、その詳細は、本誌No.312号において「IEC 61000-4-5 第 3 版 サージイミュニティ試験概要解説」として紹介した。Ed.3 を発行した翌年あたりから、関連委員会から Ed.3 は引用規格として用いることができないという問い合わせや文書が配布された状況にある。 　規格を審議している IEC SC77B MT12 では、ここ数回の国際会議において、関連委員会のヒアリングなどの情報収集を行い、今年 2 月に開催されたReunion（仏）国際会議において、これまでの経緯及びその対応を説明する INF 文書（77B/778/INF: 2017-06-02 発行）を配布することを決議した。これまでの状況と経緯を説明する。

IEC の他の TC

　2015 年の秋頃、IEC SC37A（Low-voltage surge protective devices）では、IEC 61000-4-5 Ed.3 をここで作成する規格に引用しないことを決めたというメールがMT12 に報告された。波形自体は変更していないことは理解しても、サージ防護デバイスの規格では、1.2/50 µs（8/20 µs）サージ波形以外にも 10/250 µs，10/350 µs などの異なる波形も扱っており、1.2/50 µs（8/20 µs）だけ波形の規定方法が異なり混乱するとの理由による。今後 SC37A では、通信・信号用サージ防護デバイス（SPD: Surge Protective Devices）の規格だけでなく、電源用 SPD も含めて検討する。

CISPR

　2016 年 11 月 に、IEC 61000-4-5 Ed.3 の改正に対する各国試験所に対してサージ試験器の校正結果及び買い替え等の状況を調査するアンケートをCISPR 文書（CISPR/1362/DC）として配信した。このアンケート結果をまとめた文書（CISPR/1365/INF）を 2017 年 2 月に発行し、そのまま適合するものや、改造、買い替えが必要かなどの具体的な結果が報告された。CISPR の結論として、IEC61000-4-5 Ed.3 適合に対して、改造又は買い替えが必要な試験器が存在するため、旧版（Ed.2）に対応した試験器が使えるように SC77B に規格を変更することを要求した。

ITU-T

　ITU-T（国際電気通信連合）SG5 では、ITU-T　K.44（Resistibility tests for telecommunication equipment exposed to over-voltages and over-currents - Basic Recommendation） で、1.2/50 µs（8/20 µs）サージ発生器について、IEC 61000-4-5 を引用している。Ed.3が発行されたことで ITU-T は、ITU-T K.96（2014）-Amendment 1 を発行し、IEC 61000-4-5 の Ed.2 とEd.3 の違いを明らかにするとともに、Ed.3 で改造の必要のない雷サージ試験器はそのまま使え、Ed.2 で校正された既存の雷サージ試験器の利用も可能としている。（但し 10/700µs サージ発生器は、ITU-T K.44にて独自の回路規定がされており、IEC 61000-4-5 の引用はしていない。）

続きは『月刊EMC No.353』にて

【月刊EMC No.353 目次情報】

＜特集＞
◇医療機関における電波利用とEMCの今後
◇国内主要EMC試験・校正所一覧

＜New&Now 規格・規制情報＞
・サージイミュニティ規格 IEC 61000-4-5 第3 版改正に対する不満とその対応
　（（株）ノイズ研究所 石田武志）

＜実践講座＞
・対策事例に学ぶパワーエレクトロニクスのノイズ対策 ⑥（最終回）
　新回路技術 パワーライン用ノイズフィルタ
　（双信電機（株） 高見沢彰、（株）インダクテック 公文良昭）
・EMC測定・試験のポイント－1.今更、人に聞けないEMC用語解説
　エミッション測定関連用語 ⑤
　不平衡擬似回路網（AAN）
　（電気通信大学産学官連携センターギガビット研究会 雨宮不二雄）

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