【AIJES-E0003】建築物の現場における電磁シールド性能測定方法規準(月刊EMC)

2018.11.9 更新
【AIJES-E0003】建築物の現場における電磁シールド性能測定方法規準(月刊EMC)

【測定装置接続例】

 電磁環境問題が顕在化し始めた1990年頃、建築空間の環境性能として、電磁環境が新たに認識されるようになった。これより、電磁環境制御技術の一つである電磁シールドが、一般的な建築物にも施されるようになった。

 電磁シールドルームの構築の際にはその性能評価が必要となるが、この頃の代表的な測定方法には、米国のMIL-STD-285(1956 年制定、1997 年廃止)、IEEE Std 299(1991 年制定)、および防衛省のNDS C 0012B(1998 年制定)の3つがあった。我が国では主に、これらの中の最初の規格であるMIL-STD-285 を基本として、測定者が現場での測定の簡便性を考慮した各々独自の方法により測定が行われていた。そのため同じ電磁シールドルームであっても、測定者によって性能評価が異なるなど、種々の弊害が生じていた。

 そこで日本建築学会では、1999年より委員会を設け、この測定法について検討を行ってきた。本規準の制定は、建築現場において構築される電磁シールドルームを対象として、電磁シールド性能の検査を行う際の測定方法を統一し、建築界における電磁シールド性能測定方法の指針を日本建築学会として提供することを目的としている。

 近年、電磁環境問題に関連して電磁シールドルームの需要が高まっている。それらは、独立した構造物あるいは建物の一施設として建設される。どちらの場合も、建物の施工における一工程となるので、電磁シールド工事の前後、およびこれに平行して周辺施設等の工事が同時に行われる。

 なお、電磁シールド工事が建物工事の終了後に別途工事として行われる場合も一部に存在するが、これにおいても一般的な建築工事が組み合わされる場合が殆どである。性能保証や確認が求められる電磁シールドルームにおいては、性能検査を行う必要がある。その時期は概ね「電磁シールド工事完了かつ仕上工事前(一般的に中間検査と呼ばれる)」と「仕上工事を含む電磁シールドルームの全施工完了後(一般的に竣工検査と呼ばれる)」である。

 両検査においては、建物としての工事は引き続き同時進行している。これは建物施工の特殊な状況であり、このいわゆる「建築物の現場」である環境下において性能検査を実施しなければならなくなる。具体的に勘案すべき条件は、検査実施周辺環境の多様性、そして時間的な制約である。本規準は、その特殊な周囲状況においても測定できるように配慮している。

 また、電磁環境問題の多様性から、電磁シールドルームの性能は100dB を超えるような高いものから20 ~ 30dB 程度の低いものまで要求されるようになった。このとき、低い性能の電磁シールドルームに対して、高い性能を保証するのと同様に多くの条件で測定を行っても過剰な評価となる。

続きは『月刊EMC No.354』にて


【月刊EMC No.354 目次情報】

<特集>
◇総務省が考える医療機関における電波利用推進における諸課題
・「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」について
 (滋慶医療科学大学院大学 加納隆)
・医療機関における無線LAN 利用の課題と対策
 ((地独)神奈川県立病院機構 小田直之)

<Technology>
・環境ノイズによる無電源動作人感センサの開発に関する取り組み
 (豊橋技術科学大学 大村廉)
・~信頼性向上の取り組みと標準化動向~
 宇宙線起因中性子によるキャリア通信システムにおけるソフトエラー
 (NTTネットワークサービスシステム研究所 森弘樹、岩下秀徳、青柳健一、舩津玄太郎、行田克俊)
・次世代ものづくりにおける人工知能を組み込んだ製品開発環境
 (富士通アドバンストテクノロジ(株) 鹿庭智)
・種々のLED 電球と電源線から発生する電磁ノイズの発生メカニズム
 (長野工業高等専門学校 春日貴志、井上浩)

<New&Now 規格・規制情報>
・日本建築学会環境規準
 「建築物の現場における電磁シールド性能測定方法規準」の解説
 (日本大学 三枝健二)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-1.今更、人に聞けないEMC用語解説
 基本・共通用語⑩
 ディファレンシャルモードとコモンモード
 ((株)e・オータマ 田路明)
・EMC測定・試験のポイント-1.今更、人に聞けないEMC用語解説
 基本・共通用語⑪
 電波吸収体
 (兵庫県立大学 畠山賢一)
・製品の信頼性を高めるLSI のEMC 設計⑦【最終回】
 現象別半導体集積回路の電磁両立性検証(3)
 (ローム(株) 稲垣亮介)
・電源ノイズ解析と設計法⑤
 抵抗負荷・誘導負荷に接続された全波整流回路
 (大阪大学 舟木剛)

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