光変調散乱素子を用いた完全非金属製高周波電界センサとそのEMC 計測への応用(月刊EMC)

2018.11.16 更新
光変調散乱素子を用いた完全非金属製高周波電界センサとそのEMC 計測への応用(月刊EMC)

【誘電体散乱体からの散乱波の発生】

 電子機器等から放射される不要電磁波ノイズによる周囲への障害を防ぐため、放射ノイズの許容値と試験法が国際的にも規定されている。このような規制に対応するためのEMC 設計の重要性は、機器の多機能化、高周波化、小型低電力化などによって、ますます高まっている。

 こういったEMC 規制に対応するための放射ノイズの抑制には、その発生源を特定することが重要である。この目的のため、小型ループコイルなどの近傍磁界センサがしばしば用いられている。一方、放射ノイズの許容値は遠方での電界強度で規定されているため、近傍界測定値と遠方界測定値との間の相関が問題となる。また、近傍界測定で複数の波源が認められたとき、どの部位が遠方界に対して支配的かを特定することは難しい問題を含んでいる。

 差動伝送線路を例にとって考えてみよう。差動伝送線路とは、互いに反転した信号を、対をなす2本の線路で対称的に伝送させる方式である。受信端で線路間の差分を取ることで信号振幅は強調される。

 一方、外来ノイズは2 本の線路に同じように重畳されるため、差分を取ることで消去される。テレビ放送波の受信用平行フィーダーとして以前から広く使用されており、近年では情報機器のディジタル信号伝送用として、USB、 HDMI、 S-ATA、 PCI-Express 等の規格で広く採用されている。

 こういった差動伝送線路の近傍磁界を計測すると、どのような結果になるであろうか。x 軸上に対称に配置された2本の線路がy 軸方向に伸びる。線路の近傍磁界は右ねじの法則に従って生じるため、線路のz 方向直上で磁界を観測する場合、x 成分が優勢であると予想される。

 このz 方向直上の磁界のx 成分の強度|Hx|は、線路に交流信号を印加し、スペクトラムアナライザを用いて小型ループコイルでHx を測定した結果に相当する。各線路の直上でHx が大きな値を取り、十分な空間分解能で磁界分布を計測できていることが判る。さて、この差動伝送線路は電磁波を放射するであろうか。

 実際に遠方電界を計測すると、差動線路からは非常に弱い電磁波の放射しか観測されない。その理由は、2本の線路を流れる電流は反転しており、互いに打ち消しあうためである。このような、互いに打ち消しあう、あるいは強め合う、といった情報は近傍磁界強度のみを計測した結果からは得られず、近傍界測定から遠方界を予測する際の難しさの一つの原因となっている。

続きは『月刊EMC No.366』にて


【月刊EMC No.366 目次情報】

<新製品とEMC [8]>
・カーナビゲーションシステム「ECLIPSE AVN」
 ((株)デンソーテン)

<特集>
◇車載用EMC設計とその周辺
・進化する車両開発に適用可能なEMC設計アーキテクチャとその手法について
 ((株)本田技術研究所 福井努)
・シミュレータを用いた電磁界評価例と将来の展望
 ~熱から電磁界、部品規模から車両規模まで~
 (アンシス・ジャパン(株) 五十嵐淳)
◇熱設計技術[2]
・第2章 高性能LSI パッケージの熱抵抗とその低減策
 (富山県立大学 石塚勝)

<Technology>
・光変調散乱素子を用いた完全非金属製高周波電界センサとそのEMC計測への応用
 (秋田県産業技術センター 黒澤孝裕)
・EMCエンジニア実践マニュアル[2]
 (三菱電機(株) 石坂哲)

<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎②
 第2章 EMCのための電磁場/回路の数値解析 タイムドメイン/周波数ドメイン数値解析の基本原理
 -EMCエンジニアのための数値解析に関する講義
 (三菱電機(株) 田邉信二)

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