超広帯域(UWB)無線の電波法最新状況とEMC対策(月刊EMC)

2018.12.14 更新
超広帯域(UWB)無線の電波法最新状況とEMC対策(月刊EMC)

【周波数帯域幅と従来の無線通信との比較】

 周波数帯域幅が超広帯域(Ultra-Wide Band: 以下、UWB)である電波を利用した大容量、低誤り率、低遅延な情報伝送や、高精度な測距・測位が比較的廉価に実現できることから、最近、電波法の改正に伴い、自動車、医療などの大規模市場へのビジネス展開が注目されている。2002 年2 月に米連邦通信委員会(Federal Communications Commission;以下、FCC)が民生利用を承認して以来、国際標準化も進み、我が国でも実応用が期待されてきた。

 しかし、世界的には国や地域によってUWB 無線に関する電波法が異なり、特に我が国では周波数を共用する他の固定マイクロ波通信や電波天文分野へ与える干渉など、既存無線システムとの共用条件が厳しいため、当初の普及予測を大きく下回っていた。しかし、電波利用の技術条件を審議する総務省情報通信審議会が継続的に電波の一次利用への干渉評価、干渉回避技術などの検討を重ね、解決すべき自動車の盗難対策や医療・介護などの喫緊な社会問題の対策技術として、諸外国の実情を踏まえ、共存機器や人体に対するEMC と一次利用無線システムへの干渉などを解析、評価し、UWB 無線に関する電波法技術条件を今秋、一部改正を答申する見込みである。

 具体的には、自動車用キーレスエントリーや医療用ボディエリアネットワーク(BAN)などの国際標準IEEE 802.15.4z, 15.45, 15.4a, 15.4f , 15.6の標準化から、先行してその屋外利用を容認してきた諸外国の状況、またニーズの高まり等の背景を鑑み、現在まさに情報通信審議会でマイクロ波帯UWB 無線システムの屋外利用解禁に向けて検討されている状況にある。本稿ではその検討状況を追い、2018 年9 月時点で公開されている審議資料から得られる検討状況を紹介するとともに、近日中のパブリックコメントを経て一部答申された場合に解禁されるUWB 屋外利用の意義、展望について解説する。

UWB( 超広帯) 域無線通信の概要

 超広帯域(UWB)電波システムは、従来の無線通信と比較し超広帯域な帯域幅の電波を用いることにより、大容量伝送や高精度測距測位を可能とし、超低スペクトル密度により他の周波数共用システムや人体に与える干渉や侵襲性を抑え、周波数ダイバーシティ効果により受ける干渉、妨害にも耐性が強い特長が知られている。歴史的には、この特長を活かした軍用通信や高精度パルスレーダへの応用からはじまり、現在、世界的には、その高い信頼性や物理的セキュリティから、マイクロ波帯UWB 無線方式の産業用無線、医療用無線などの分野で応用され、我が国でも准ミリ波帯・ミリ波帯UWB 車載レーダは実用化されている。

続きは『月刊EMC No.368』にて


【月刊EMC No.368 目次情報】

<新製品とEMC [11]>
・遠隔監視システム「コルソス CSDJ-A」
 (NEC プラットフォームズ(株))
・IEC 62368-1(J 60950-1)オーディオ・ビデオ、情報通信技術機器の安全規格
 ((株)UL Japan 金野郁郎)
・CISPR 32 第2.0版解説
 マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
 (情報通信審議会情報通信技術分科会 雨宮不二雄)

<特集>
◇基礎講座「EMC設計とシミュレーション」
・モーメント法によるEMCシミュレーションの基礎
 ((株)JSOL 坪井成文)
・イントロダクションーEMC設計の基礎、EMCの規格と規制ー
 (拓殖大学 澁谷昇)

<Technology>
・超広帯域(UWB)無線の電波法最新状況とEMC対策
 (横浜国立大学 河野隆二、小林匠)
・光トランシーバでの高速化と低ノイズ
 (住友電気工業(株) 大森寛康)

<New&Now 規格・規制情報>
・EN 300 328規格の解説
 2.4GHz ISM帯域の無線機器規格
 (コンチネンタル・オートモーティブ(株) 橋本直樹、テュフ ラインランド ジャパン(株) 張品)
・ISO 13482を活用した医療機器のCEマーキング(欧州MDD)の認証
 ((一財)日本品質保証機構 清水雄一郎)
・IEC 62282-3-100/201の概要解説
 燃料電池発電システムにおけるEMC規格
 (田島收技術士事務所 田島收)
・IEC 62920 Ed.1 概要解説
 製品EMC規格 太陽光発電システム用パワーコンバータ
 ((一社)日本電機工業会 出口洋平)

<Information>
・UU数が20万人を突破した、EMCポータルサイト『CEND』で見えるEMC業界
 (月刊EMC 編集部)

<実践講座>
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策④
 ディジタル回路のアナログ回路との違い
 ディファレンシャルモードとコモンモード
 (大島研究所 大島正明)

詳細はこちら


Copyright(C) Kagakujyoho shuppan Co., Ltd. All rights reserved.
※記事の無断転用を禁じます。