【MOV(金属酸化物バリスタ)と記号】
SPD は、外部から建屋あるいは装置に侵入しようとするサージを大地に放流し、サージから防護するためのデバイスです。現在、建物や装置のサージ対策にSPD が広く使われています。SPD は、表示部、筺体、端子等のいろいろな部品で構成されていますが、主要なサージ対策部品はGDT(放電管 ; Gas Discharge Tube)とMOV(バリスタ;Metal Oxicde Varistor)になります。
これらSPD に要求される特性はJIS C 5381-11(低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの要求性能及び試験方法)にまとめられていますのでこちらをご参照ください。ここでは主要対策部品の安定性、インパルス応答性について考えてみます。
ガラス管やセラミックスの容器に対向する位置に放電電極を設け、不活性ガスを充填して封じ込めたものがGDT です。電極に電圧が印加されるとマイクロギャップ又はカーボントリガ線により放電のきっかけを作り、最終的にアーク放電を放電電極間に形成してサージに対応します。
GDT のメリットは、次のようになります。
・通常の状態では非常に高抵抗で漏れ電流が非常に少なく、周囲温度に影響されない。
・動作時の電圧が非常に低く、後段の被保護機器へのストレスが小さい。
・静電容量が非常に小さい。
・温度に対して非常に安定。
・小型ながら大きなサージ電流を流せる。
GDT のデメリットは、次のようになります。
・放電現象を利用しているので、直流放電開始電圧の測定時(100/s~2kV/s)よりも急峻(数kV/μs)なインパルス電圧に対しては、放電遅れが大なり小なり存在し、高めの値で放電を開始する。
・電源に単体で使用すると続流発生の危険がある。
酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物セラミックスでできた素子を、電極で挟み端子を取り付けたものがMOV です。基本的な構造を図に示します。電極に印加される電圧がある閾値を超えると、金属酸化物セラミックスの抵抗値が非直線的に急激に低下する特性を利用したものです。
MOV のメリットは、次のようになります。
・電圧制限型素子なので続流が発生しない
・半導体なので、サージに対する動作が速い
MOV のデメリットは、次のようになります。
・漏れ電流がGDT に比べて大きい
・半導体のため周囲の温度が漏れ電流に影響する
GDT とMOV はそれぞれメリットデメリットを持っています。しかしGDT とMOV を直列接続することで互いのメリットを生かせます。MOV の漏れ電流は周囲の温度に影響される事が知られています。高温になると漏れ電流が増加するので、高温の環境でMOV を使用し続けると
漏れ電流の増加→特性の劣化→漏れ電流の更なる増加→特性の劣化・・・・(ショート)
という故障が予想されます。
続きは『月刊EMC No.367』にて
<新製品とEMC>
・フルカラー複合機「DocuCentre C2000」
(富士ゼロックス(株))
・VR マウス「M-VRF01BK」
(エレコム(株))
・CISPR 32クラスB許容値について
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山佳春)
<特集>
◇スマートグリッドとEMC
・IECにおけるスマートグリッド関連EMCの動向
(東京都市大学 徳田正満)
・SUNを基盤とするワイヤレスグリッドの多様化に関する検討
((国研)情報通信研究機構 児島史秀)
・スマートグリッドに向けた課題と対策
((一財)電力中央研究所 小林広武)
<Technology>
・SPD(Surge Protective Device)の対サージ特性
(三菱マテリアル(株) 田中芳幸)
・スマートメータの雷故障要因とその対策
((一財)電力中央研究所 石本和之)
<New&Now 規格・規制情報>
・IEC 60947-2規格解説
低圧遮断器のEMC試験規格
(三菱電機(株)上青木大、瀧川雄介、渕上慎悟)
<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎③
第3章 EMCと電気回路
(拓殖大学 高橋丈博)
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