IoT 時代の電気自動車用給電システムとEMC(月刊EMC)

2019.2.15 更新
IoT 時代の電気自動車用給電システムとEMC(月刊EMC)

【EV の充電方式】

 モノとモノがインターネット(情報)で有機的につながるIoT 時代が21 世紀の初頭から、通信手段の高速化・高度化と相まって大きく進展している。情報通信白書(総務省平成28 年版)では「IoT・ビッグデータ・AI ~ネットワークとデータが創造する新たな価値」と題した特集をその中心に掲げた。IoT 時代を担う電子機器は20 世紀後半からの無線情報通信の高度化の格段の進展でブロードバンド化が進み、2000 年のDocomo のFoma の登場で一旦は花開いた。

 昨今は5G の実用化を目前に控えている。一方情報の担い手である電子機器では電力の安定的・安全な供給が信頼ある動作のために不可欠である。携帯電話などモバイル情報機器端末などの移動する機器では、これまで内蔵電池に対して主としてケーブルを用いたAC アダプターによる給電手段が用いられてきた。しかし多様なモバイル機器が共存する状況になり、充電のための電源ケーブルが錯綜するいわゆるスパゲッティ配線が起き、利便性が大きく損なわれるに留まらず、安全面からもこれを解消することが喫緊の課題になってきた。

 ワイヤレス給電システムはこの問題に有力な解決手段を与えるものとして小型機器を中心に注目を集めてきた。一方で大電力を扱うEV のようなシステムでも車載電池への充電にはコネクタを用いる接触式(コンダクティブ)充電システムの普及が図られてきたが、重くて大きいコネクタ・ケーブルの操作性、安全性の課題が普及の為の阻害要因の一つと指摘されてきた。給電距離の制約が厳しいインダクティブ充電によるワイヤレス化が各地で試行されてきた。

 そのような状況の中、2006 年のMIT の報告を契機に送受電コイルのQ 値を高くすることでkQ 積の値を維持した上で効率を損なうことなく給電距離の制約から解き放たされる可能性が示され、画期的な磁界共振方式のワイヤレス充電の研究・標準化・実用化の波が始まった。そのような機運の高まる中、2015 年のVW によるディーゼルエンジンの排ガス不正発覚を受け、世界的な規模で急激なEV シフトの動きが起き、100 年に一度の大変革とも指摘されている。欧州、米国、中国ではバス・トラック・商用車も含めたe-mobility 全体でEV 化の動きが急速に進んでいる。このような状況の中大電力での給電システムインフラの構築が世界で大きな課題となっている。

 大電力給電においては、ケーブルを用いる接触式給電、パンタグラフ等を用いる接触式自動充電に加えて、ワイヤレス給電が注目を浴びている。以下では、主としてEV への給電システムについて、動向と将来について述べる。

続きは『月刊EMC No.370』にて


【月刊EMC No.370 目次情報】

<新製品とEMC [13]>
・太陽電池とEV・PHVと蓄電池をつなぐ「トライブリッド蓄電システム®」
 (ニチコン(株))
・製品EMC規格 無停電電源装置
 ((一社)日本電機工業会 井上博史)

<特集>
◇デバイスからシステムレベルESD試験とその対策、試験評価と国際規格の動向
・ESDの見える化ーESD測定方法の検討ー
 (パナソニック(株) 徳永英晃)
・帯電人体のESD現象とESD試験の解説及び規格改正の動き
 ((株)ノイズ研究所 石田武志)
◇EMC国際標準化における課題と審議動向~電子情報技術、放送、通信分野を中心として~
・ITU-T SG5 WP1における課題と動向
 (NTT ネットワーク基盤技術研究所 奥川雄一郎)
・CISPR/Iにおける課題と動向
 (CISPR SC-I MT7/MT8 Expert PFU テクノコンサル(株) 千代島敏夫)

<Technology>
・IoT時代の電気自動車用給電システムとEMC
 ((公社)自動車技術会 横井行雄)

<New&Now 規格・規制情報>
・IEC 60974-10 Ed.3.0 概要解説
 アーク溶接装置におけるEMC要求事項
 (埼玉大学 山根敏)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント.2.EMC測定・試験は何故必要か
 規制の法的枠組みと動向⑪
 欧州におけるEMC規制
 ((株)e・オータマ 田路明)
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎⑤
 第5章 EMC設計とワイヤレス電力伝送(その1)
 (群馬大学 菊地秀雄)
・IEC 62153-4シリーズ概要解説⑦ IEC 62153-4-11 Ed.1.0
 「 パッチコード、同軸アセンブリ、コネクタ付きケーブルのEMC特性試験方法」概要解説
 ((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)
・医療におけるワイヤレスの導入と電磁環境③
 医療現場における無線通信導入上の注意点
 外来侵入波とBYOD
 ((国研)情報通信研究機構 石田開)

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