【標準のアーク溶接機の試験配置】
IEC60974 シリーズはIEC TC26(電気溶接機)で審議されており、アーク溶接装置の安全要件を定めている。この第10 部IEC60974-10「アーク溶接装置におけるEMC 要求事項」として、2002 年に第1 版が発行され、第2 版が2007 年に発行された。この規格はEU でのEMC 指令を満たすように構成されていたが、2007 年の第2 版は2010 年12 月に失効した。
そこで、EMC 指令に対応するために、第3 版の見直しが行われた。第3 版でもエミッションならびにイミュニティに関する許容値そのものは、CISPR11 に基づいており、フリッカおよび高調波の許容値などについてもIEC61000-3 シリーズおよびIEC61000-4 シリーズに基づいている。この規格では、アーク溶接装置における試験方法を規定している。
改訂方針として、CISPR SC B 委員会およびTC77 SC77A 委員会の審議内容およびEUのEMC コンサルタントから指摘された内容について、対応するための見直しが行われた。このために、アイドル状態の定義、Class 分類の再定義、エミッションの測定距離の修正、アーク起動・安定化装置についての規定が必要となった。国内においては、CISPR11 第5 版に関して、総務省からの報告書が出され、「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈」の一部改正され、CISPR11 に対応する整合規格(J55011)が発行された。
これは「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」の別表第十二国際規格等に準拠した基準の雑音に用いられている。このJ55011 において、アーク溶接機のEMC 規制値が規定されており、試験方法などはIEC60974-10 EMC 要求事項 に規定されている。今回、この規格のFDIS 投票が2014 年1 月に行われた。
また、同時にEU でも投票が行われた。これが承認され、2014 年2 月6 日に発行された。しかし、EU コンサルタントからの指摘があり、これに対応するために、急きょ、追補版1 が2015 年6 月19 日に発行された。主な追加事項はクラス B の溶接電源に関する電流リップルの規定および、高い周波数領域でのイミュニティレベルの規定の追加である。
追補版を含む規格はEMC 指令の整合規格に該当する。一方、国内では、この規格をJIS 化するために、原案作成員会を設けて、審議を行った。2018 年3 月20 日にJISC9300-10 EMC 要求事項として発行された。
このJIS と国際規格とはほとんど整合しているが、唯一のデビエーションは引用規格であるJIS C 61000-3-2 の採用による。この規格の国際規格であるIEC 61000-3-2 は相当たり16A であるが、国内の電源事情に合わせて、相当り20A に修正されている。これが唯一のデビエーションである。以下に、このIEC60974-10 および追補版1の主な内容をつぎに示す。
続きは『月刊EMC No.370』にて
<特集>
◇デバイスからシステムレベルESD試験とその対策、試験評価と国際規格の動向
・ESDの見える化ーESD測定方法の検討ー
(パナソニック(株) 徳永英晃)
・帯電人体のESD現象とESD試験の解説及び規格改正の動き
((株)ノイズ研究所 石田武志)
◇EMC国際標準化における課題と審議動向~電子情報技術、放送、通信分野を中心として~
・ITU-T SG5 WP1における課題と動向
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 奥川雄一郎)
・CISPR/Iにおける課題と動向
(CISPR SC-I MT7/MT8 Expert PFU テクノコンサル(株) 千代島敏夫)
<新製品とEMC>
・太陽電池とEV・PHVと蓄電池をつなぐ「トライブリッド蓄電システム®」
(ニチコン(株))
・製品EMC規格 無停電電源装置
((一社)日本電機工業会 井上博史)
<Technology>
・IoT時代の電気自動車用給電システムとEMC
((公社)自動車技術会 横井行雄)
<New&Now 規格・規制情報>
・IEC 60974-10 Ed.3.0 概要解説
アーク溶接装置におけるEMC要求事項
(埼玉大学 山根敏)
<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント.2.EMC測定・試験は何故必要か
規制の法的枠組みと動向⑪
欧州におけるEMC規制
((株)e・オータマ 田路明)
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎⑤
第5章 EMC設計とワイヤレス電力伝送(その1)
(群馬大学 菊地秀雄)
・IEC 62153-4シリーズ概要解説⑦ IEC 62153-4-11 Ed.1.0
「パッチコード、同軸アセンブリ、コネクタ付きケーブルのEMC特性試験方法」概要解説
((株)フジクラ・ダイヤケーブル 小川幸三)
・医療におけるワイヤレスの導入と電磁環境③
医療現場における無線通信導入上の注意点
外来侵入波とBYOD
((国研)情報通信研究機構 石田開)
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