TLC 伝送方式とEMC(月刊EMC)

2019.3.27 更新
TLC 伝送方式とEMC(月刊EMC)

【TLC 概念図】

 TLC は図に示すような分布定数線路で構成された方向性結合器です。この例では伝送線路がペアになっており、差動信号を伝送することが可能です。高速なシリアル通信は多くの場合差動で伝送しますので、従来のインタフェースとも相性の良い方式になっています。

 方向性結合器の特長として、入力信号に含まれる直流成分は除去され、変化分だけが二次側に出力されます。言い変えると、TLC に入力された差動シリアル信号は、矩形波が微分され、立ち上がり/立ち下がりだけがパルス信号となって二次側に現れます。このままではデジタル信号として使えませんので、受信側ではパルス信号から矩形波を復元するコンパレータのような簡単な回路が必要になります。

 差動信号の場合も、方向性結合器のアイソレーションは有効に働き、二次側からの反射波は一次側に現れず、広い帯域でインピーダンス整合が成立します。このとき整合するインピーダンスは差動インピーダンスで、特性インピーダンス50􀀱の分布定数線路2 本で差動伝送を行うならば差動インピーダンスは100􀀱になります。TLC のアイソレーションと挿入損失はトレードオフの関係にありますが、挿入損失を10dB 程度にすると、カプラの結合距離の変化は信号に現れなくなります。

 TLC の一次側の結合器と二次側の結合器が分離できるような構造を作ると、コネクタを構成することが可能です。このコネクタは金属端子の接触を使用せず信号を伝送しますので、金属表面の傷や摩耗による接触不良の心配がありません。また、結合器の幅程度のずれが生じても伝送信号レベルに変化が無く、電車や自動車のような振動環境でも瞬断や接触不良を起こすことなく安定した伝送を期待できます。

TLC 伝送系の試作と測定結果

 TLC の構造はシンプルで、プリント基板(或いはフレキシブル基板)を用いて実現できます。中心周波数fcを5GHz とした設計例を示します。結合器の長さLを8mm、幅W を3mm、パターン間隔Sを6mm、一次側結合器から2 次側結合器までの間隔d を1.1mm とすると、その周波数特性(S21)の解析結果は次のようになります。

続きは『月刊EMC No.371』にて


【月刊EMC No.371 目次情報】

<特集>
◇主要メーカー&取り扱い企業群60社
 2019年版 高信頼/EMC・熱ソリューション製品一覧
・EMC部品・製品編
・静電気対策関連製品編
・シールド・吸収材編
・試験装置・設備編
・設計ツール編
・熱ソリューション関連製品編

<新製品とEMC>
・マトリクスコンバータ「U1000」EMC フィルタ内蔵タイプ
 ((株)安川電機)
・舶用機器のEMCに関する舶級要件
 ((一財)日本海事協会 松尾守)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-1.今更人に聞けないEMC用語解説
 イミュニティ試験関連用語②
 無線電波とそのイミュニティ試験(放射)
 ((株)東陽テクニカ 中村哲也)

<Technology>
・TLC伝送方式とEMC
 ((国研)宇宙航空研究開発機構 市川愉)

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