【IEC 63168】IoT 住宅における機能安全国際規格開発の現状報告(月刊EMC)

2019.4.9 更新
IoT 住宅における機能安全国際規格開発の現状報告(月刊EMC)

【安全規格の体系図】

 経済産業省が平成28 年度より実施している「IoT社会実現に向けた住宅設備連携における機能安全に関する国際標準化」事業において、国立研究開発法人産業技術総合研究所とミサワホーム総合研究所は共同で受託、一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会の協力の元でIoT 住宅における機能安全に関する国際規格の開発作業を進めている。平成29 年の7 月にはIEC 内の積極生活支援システム委員会(SyC AAL)を通して新業務項目(NP)提案を実施、NP 提案の承認を経て現在は作業原案(WD)の作成作業を進めているところである。平成31 年初頭には委員会原案(CD)段階への移行を予定しており、最も早い進展の場合には平成32 年中に国際規格 IEC 63168 として発行される。

 我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたSociety 5.0においてIoT 住宅が担う役割は大きくなることが予想される。平成29 年3 月に提唱されたConnected Indusries における重点5 分野の一つであるスマートライフ政策の中ではIoT 住宅= スマートホームはデータとサービスの結節点の一つであり、スマートライフにおける高度化されたサービスの拠点であることが示されている。

 しかし、現状では家電を含む住宅設備機器と各種センサ、住宅用IoT 機器などの様々な機器がネットワークを介して接続される環境において、各機器の安全な作動に寄与する指針は存在しない。本規格はIoT 住宅システム全体での安全をいかに取り扱うかについて、機能安全の観点から必要となる事項を規定することを目的とする。

 本稿では、まずIoT 住宅における機能安全規格の必要性を述べる。次にIoT 住宅におけるユーザの多様性とAAL(積極生活支援)側面の関係について述べ、最後に本規格の内容と現状について解説する。

安全規格の体系とIoT 住宅における機能安全規格の必要性

 安全に関する国際規格(ISO/IEC)は、Guide51 に基づき、基本安全(A)規格、グループ安全(B)規格、個別製品(C)規格と体系的に規格化されている。この体系を図式化したのが図である。自動車、生活支援ロボット、鉄道、原子力、プロセス産業などの個別製品に関する機能安全規格はC 規格に位置付けられており、本規格もC 規格として位置付けられる。

 機能安全とは機械制御の高度化(プログラム化)に伴い生じた概念である。本規格の上位のA 規格とされるISO 12100 においてはリスクアセスメント手順とリスク低減方策の関係について明示されているが、制御用信号線に対する電磁ノイズの影響や制御プログラムに内包されたミスなどの電気/ 電子制御(プログラム制御を含む)に起因する危険を厳密に取り扱うのは難しい。IEC 61508 はこの部分を補うべく規定されたB 規格であり、本規格を含む全ての機能安全に関するC 規格の上位規格である。

続きは『月刊EMC No.372』にて


【月刊EMC No.372 目次情報】

<新製品とEMC>
・無線LAN アクセスポイント「WLX313」
 (ヤマハ(株))
・マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
 (情報通信審議会情報通信技術分科会 雨宮不二雄)

<特集>
◇IoTとEMC
・ー電気学会/調査専門委員会設立ーIoT時代のシステムとEMC~今後の展開~
 (愛媛大学 都築伸二)
・東京電力のIoTに関する取り組みー東京電力グループの取り組みと活用例の紹介ー
 (東京電力ホールディングス(株) 石毛浩和)
・IoTに必須の環境型発電ー環境磁界発電 原理と設計法ー
 (信州大学 田代晋久)
・狭帯域電力線通信のIoT活用に向けた取り組み
 (住友電気工業(株) 下口剛史)

<Technology>
・大電力ワイヤレス給電とEMC対策
 (早稲田大学 高橋俊輔)
・全無響電波暗室(FAR)の設計と評価
 (日本イーティーエス・リンドグレン(株) 島田一夫、(株)リコー 飯田修次)

<New&Now 規格・規制情報>
・IoT住宅における機能安全国際規格開発の現状報告
 ((国研)産業技術総合研究所 関山守、小島一浩)

<実践講座>
・回路網を用いた広帯域PLCの信号伝送特性と漏洩電磁界特性の解析②
 屋内配電線の回路網パラメータ決定方法
 (九州工業大学 桑原伸夫)

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