大電力ワイヤレス給電とEMC対策(月刊EMC)

2019.4.15 更新
大電力ワイヤレス給電とEMC対策(月刊EMC)

【各方式の伝送電力と伝送距離】

 空間を介して非接触で電力を伝送するWPT には
① 磁界を利用するもの:電磁誘導、磁界共振
② 電界を利用するもの:電界結合
③ 電磁波放射を利用するもの:電波、レーザー
に大別され、それらの伝送電力と伝送距離を図に示す。EV 用として現状で実用域に達しているものは磁界を利用した磁界結合型と呼ばれる電磁誘導式と磁界共振式である。出力的には電磁誘導式では200kW のものが実用に供され、送受電コイル間のギャップとしては磁界共振式で50cm 程度のものが実証されている。

電磁誘導式

 1831 年にイギリスのMichael Faraday が見出した、静止している導線の閉じた回路を通過する磁束が変化すると、その変化を妨げる方向に電流を流そうとする電圧が生じると言うファラデーの電磁誘導法則に基づき、対向させたコイルと磁束収束用の磁性体を用い、1 次⊘2 次コイル間に共通に鎖交する磁束を利用する電磁誘導式は、ギャップのある変圧器である。1 次コイルに交流電流を流すとコイル周囲に磁界が発生、1 次⊘2 次コイルを共通に鎖交する磁束により2 次コイルに誘導起電力が発生する。理想的な変圧器では1 次コイルの磁束は全て2 次側に伝えられ、両コイルの磁束伝達度合いを示す結合係数k は1 である。

 しかし、ギャップがある場合には漏れ磁束が発生、k は1 よりも小さくなる。この漏れ磁束が1 次/ 2 次側の自己インダクタンスにそれぞれ直列に接続された漏れインダクタンスとして、チョークコイルと等価な働きをする。

 つまり、WPT は変圧器に比べ励磁インダクダンスが小さく、漏れインダクタンスによる電圧降下が大きいシステムとなるため、大ギャップでも電力を効率よく伝達するために、1 次側の印加周波数を高周波にして2 次誘起電圧を上げたり、コイルのインダクタンスにコンデンサを並列もしくは直列に接続した共振回路を設けている。ただ電磁誘導式は結合係数に大きく依存しているため、k が0.01 以下になるような、極端な大ギャップでは電力伝送ができない。

磁界共振式

 磁界共振式は、2007 年にアメリカMassachusetts Institute of Technology(MIT)の研究チームが、2m離れた距離で60W の電力伝送に成功したことで注目を浴びた。先ず変圧器とインピーダンス変換器の役目をする1 次側の1 ターンループコイルから密な電磁結合により送電側のヘリカルコイルに電力伝送する。1 次/ 2 次側のヘリカルコイルの性能係数Q を高い値にして、同じ周波数でLC 共振させ、空間に蓄積される磁気エネルギーを利用する磁気共鳴の技術で電力伝送している。2 次側は1 次側と同じコイル構成となっている。

続きは『月刊EMC No.372』にて


【月刊EMC No.372 目次情報】

<新製品とEMC>
・無線LAN アクセスポイント「WLX313」
 (ヤマハ(株))
・マルチメディア機器のエミッション規格の解説と今後の動向
 (情報通信審議会情報通信技術分科会 雨宮不二雄)

<特集>
◇IoTとEMC
・ー電気学会/調査専門委員会設立ーIoT時代のシステムとEMC~今後の展開~
 (愛媛大学 都築伸二)
・東京電力のIoTに関する取り組みー東京電力グループの取り組みと活用例の紹介ー
 (東京電力ホールディングス(株) 石毛浩和)
・IoTに必須の環境型発電ー環境磁界発電 原理と設計法ー
 (信州大学 田代晋久)
・狭帯域電力線通信のIoT活用に向けた取り組み
 (住友電気工業(株) 下口剛史)

<Technology>
・大電力ワイヤレス給電とEMC対策
 (早稲田大学 高橋俊輔)
・全無響電波暗室(FAR)の設計と評価
 (日本イーティーエス・リンドグレン(株) 島田一夫、(株)リコー 飯田修次)

<New&Now 規格・規制情報>
・IoT住宅における機能安全国際規格開発の現状報告
 ((国研)産業技術総合研究所 関山守、小島一浩)

<実践講座>
・回路網を用いた広帯域PLCの信号伝送特性と漏洩電磁界特性の解析②
 屋内配電線の回路網パラメータ決定方法
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