マルチフィジックス解析によるEMC 仮想環境の構築(月刊EMC)

2019.5.20 更新
マルチフィジックス解析によるEMC 仮想環境の構築(月刊EMC)

【GUI(モデルビルダ画面)の説明】

 EMC(Electromagnetic compatibility) は電磁両立性を表す用語であり、通信機器や電子機器が放射する電磁信号(エミッション)を抑制するEMI(Electromagnetic Interference)と、周囲環境からの電磁信号の侵入によって機器が故障・誤動作を引き起こさない電磁妨害耐性(イミュニティ)を向上するEMS(Electromagnetic Susceptibility)のことを意味している。

 EMC は、自動車の安全性の観点から車載の電子機器の電磁信号による誤動作防止において最重要項目である。パーソナルコンピュータのエミッションを解析することでモニタ表示画像やキーボード入力が再現できることが分かってきており、情報通信機器のイミュニティ許容値を上回る意図的な高電力電磁環境の生成による機器障害の懸念も高まってきており、EMC は情報通信機器のセキュリティ問題にも深く関わっている。リニア新幹線時代に突入するようになるとEMC は、超伝導磁石による周辺信号環境への影響も含まれてくる。電磁波の生体に及ぼす影響も重要になってくると考えられる。

 EMC は近年のデジタル化によって、周波数領域の評価から広帯域の時間領域信号成分の評価へのシフト、シグナル・インテグリティ(SI:Signal integrity)におけるアナログ隣接配線間のクロストークに加えてデジタル信号におけるジッタ(状態遷移のタイミングの変化)の重要性、半導体デバイスの高速化によってケーシングや基板のもつわずかな寄生インピーダンスが共振を起こすことや回路上の伝導性伝播だけでなく電磁的な結合を起こすこと、携帯電話における高周波無線通信回路とデジタル信号処理系の干渉、電気自動車への移行に伴う半導体パワエレ機器の高速動作に伴う電磁雑音の高周波化といった多くの課題を抱えるようになった。和田によれば、EMC をプレデザイン化するには、EMC がノイズ対策技術ではないことを理解し、システマティックな学習を通じて従来の「測定から対策へ」から「測定、解析(現象理解)、対策および定量評価」とすべきであり、この「理解」と「定量評価」がEMC のプレデザインへつなぐ糸口になる。

 土岐らは、従来の伝送線路理論によるノイズ分析は不十分であり、マックスウェル方程式に基づいて遅延ポテンシャルで表現されるアンテナ過程も含んだ彼らの新しい交流回路理論に基づくべきであることを主張している。それによれば、マックスウェル方程式を直接解く手法であればそのような問題は生じ得ない。

続きは『月刊EMC No.373』にて


【月刊EMC No.373 目次情報】

<特集>
◇IoT時代の電磁波セキュリティ-21世紀の社会インフラを電磁波攻撃から守るには-
・電磁的情報漏えいとその防護
 ((元)(独)情報通信研究機構 関口秀紀)
・高高度核爆発による電磁波攻撃脅威とその防護
 (NTT 情報ネットワーク総合研究所 富永哲欣)
・強力電磁波による攻撃脅威とその対策
 ((元)三菱電機(株) 小林正明)

<新製品とEMC>
・無線入力ユニット「GX70SM」
 (横河電機(株))
・デジタル・デバイスのFCC規制への対応
 ((株)e・オータマ 佐藤智典)

<Technology>
・マルチフィジックス解析によるEMC仮想環境の構築
 (日本機械学会認定計算力学技術者上級アナリスト 橋口真宜)
・車載光ネットワークとEMC
 (タイコ エレクトロニクス ジャパン(合) 小林茂)

<New&Now 規格・規制情報>
・IEC/TR 61000-2-5 環境―電磁環境の分類と記述―
 (拓殖大学 澁谷昇、東北学院大学 石上忍)
・日本国内における電気製品の電波雑音規制に関する最新動向
 ((一財)電気安全環境研究所 井上正弘、(一財)VCCI 協会 小田明)

<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎⑥
 第6章 EMC設計とワイヤレス電力伝送(その2)
 (群馬大学 菊地秀雄)

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