【IEC/TR 61000-2-5】環境-電磁環境の分類と記述-(月刊EMC)

2019.5.27 更新
マルチフィジックス解析によるEMC 仮想環境の構築(月刊EMC)

 最初に、IEC の電磁両立性(EMC)関連規格の体系を簡単に述べる。EMC関連規格はIEC 61000 シリーズとして体系化されており、IEC 61000-1 は全般事項、IEC 61000-2 は環境、IEC 61000-3 は限度値、IEC 61000-4 は試験及び測定技術、IEC 61000-5 は設置と対処に関する指針、IEC 61000-6 は共通規格に分類されている。また、EMC 規格には、IS 国際規格、TR 技術レポート、TS 技術仕様書があり、そのほかにGuide ガイドがある。本報告で述べる、IEC/TR 61000-2-5 は、“IEC の電磁環境の分類に関する技術レポート”である。

IEC/TR 61000-2-5 の履歴

 IEC/TR 61000-2-5 は、1995 年に第1版が発行(JISでは、TR C 0008 として1997 年)され、2011 年に第2版、そして2017 年1月に第3版が発行された。

IEC/TR 61000-2-5 の内容

 この規格の目次を以下の ***** 以降の1 ~ 10 章に示す。目次から分かるように、この規格は61000 ‐ シリーズのIS(国際規格)と異なり、技術レポートであるため、説明部分が非常に多い。以下、目次に沿って規格の要点を述べてゆくことにする。その際、これ以降の章立て、図および表の番号は、この規格の番号と同じものを使うことにする。

*****
1 適用範囲と目的
 この規格の適用範囲(Scope)には、“電気・電子装置及びシステムが動作するところで存在する電磁環境の知識は、電磁両立性を達成するプロセスの本質的な前提条件である。”と記述されている。
 この規格は、
-妨害の度合い(妨害度)の概念を紹介し、各々の電磁環境に対する妨害度を定義する。
-種々の場所的クラス分けし、それらを属性により分類する。
-環境内に存在する異なった電磁現象に関する予備知識を提供する。
-これらの場所的クラスに関連していると考えられる電磁現象に関する両立性レベルのテーブルに従う。

 したがって、この規格は、イミュニティ要求事項を考慮し、規格を開発する人のための手引きとなることを意図し、イミュニティレベルを選択するための基礎的なガイドを与える。
 この規格での電磁環境の記述は、検討中の場所的クラスの特徴を考慮に入れた、主として包括的なものである。したがって、それらの特定の場所で適用できるイミュニティ要求について結論するためには、より特別の記述が必要になる場所かもしれない、ということを肝に銘じておく必要がある。

2 引用規格
 引用規格については、IEC60050-161;IEC 用語のほかに、IEC61000-2 シリーズ、およびIEC61000-4 シリーズの各規格等が網羅されている。

3 用語の定義及び略語
 用語については、a ~ w およびSmart Grid まで、46 の用語が定義されている。第2版からの変更箇所を以下に記述する。

続きは『月刊EMC No.373』にて


【月刊EMC No.373 目次情報】

<特集>
◇IoT時代の電磁波セキュリティ-21世紀の社会インフラを電磁波攻撃から守るには-
・電磁的情報漏えいとその防護
 ((元)(独)情報通信研究機構 関口秀紀)
・高高度核爆発による電磁波攻撃脅威とその防護
 (NTT 情報ネットワーク総合研究所 富永哲欣)
・強力電磁波による攻撃脅威とその対策
 ((元)三菱電機(株) 小林正明)

<新製品とEMC>
・無線入力ユニット「GX70SM」
 (横河電機(株))
・デジタル・デバイスのFCC規制への対応
 ((株)e・オータマ 佐藤智典)

<Technology>
・マルチフィジックス解析によるEMC仮想環境の構築
 (日本機械学会認定計算力学技術者上級アナリスト 橋口真宜)
・車載光ネットワークとEMC
 (タイコ エレクトロニクス ジャパン(合) 小林茂)

<New&Now 規格・規制情報>
・IEC/TR 61000-2-5 環境―電磁環境の分類と記述―
 (拓殖大学 澁谷昇、東北学院大学 石上忍)
・日本国内における電気製品の電波雑音規制に関する最新動向
 ((一財)電気安全環境研究所 井上正弘、(一財)VCCI 協会 小田明)

<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎⑥
 第6章 EMC設計とワイヤレス電力伝送(その2)
 (群馬大学 菊地秀雄)

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