【光ファイバ中の光線の伝搬と屈折率】
自動運転に関するニュースはメディアに頻繁に取り上げられ、一般ユーザーにとっても大きな関心事になっている。最近では人工知能(AI : Artificial Intelligence)やビックデータなど、一昔前では到底自動車産業とは思えない技術の流入に伴って、エレクトロニクス機器が増加し続けている。近年、高級車一車両当たりの電子制御ユニット(ECU: Electronic Control Unit)は約200 個が搭載され、それらを繋ぐワイヤーハーネスのケーブル総延長が約4000 m と、10 年前に比べて前者は5 倍、後者は2 倍の増加との報告がある。
ケーブルの総重量は高級車両で60 kgにも達し、さらに増え続けることは低燃費化、経済化の流れに逆行する。軽量化のために銅線に代えて、アルミ線の採用も進んでいるが、抵抗率の関係で体積・断面積が増えるため限界がある。そこで、ケーブルの省力化と伝送の高速化を視野に入れた車載イーサネットの開発が進んでいる。
自動運転の実現には、非圧縮のカメラ取得画像が必要であることから、既に数Gb/s 以上の伝送速度の要求がある。そのためイーサネットの規格を審議するIEEE802.3 Ethernet Working Group では伝送速度10 Gb/s を目指す車載イーサネットについて規格づくりを進めている。加えて、世界的な流れとして電気自動車(EV: Electric Vehicle)に開発の軸足が向くなど、動力のコア技術も加えてエレクトロニクス化が加速している。これらにより電磁ノイズ環境は複雑化し、より広い周波数帯域において国際規格及びカーメーカーの要求仕様に基づいて厳しい評価試験及び制限が課されていることは、本誌の読者がよく知るところである。
欧州では電磁両立性(EMC : Electromagnetic
compatibility)への対応のため、伝送メディアとして電磁ノイズの影響を受けず、また影響を与えない光ファイバを採用した車載光通信が1990 年代より開発が進められた。1998 年にD2B(Domestic Digital Bus)がDaimler 社の自動車に搭載実用が始りこれを引き継いだMSOT(Media Oriented Systems Transport)が今日も使い続けられている。
本稿では高速伝送に加えてEMC 問題を解消するために広く採用されている光ファイバ通信の特長や最近の応用例などについて紹介する。次に、車載光データリンクの特長について解説する。さらに、動きが活発化している車載イーサネット開発や国際標準化の動向及びこれらを牽引すべく日本のアプローチについて紹介をする。
光ファイバは図に示すようにコアとクラッドの二重構造になっており、前者が後者より屈折率が高いので両者の境界で臨界角より大きな角度を満たす条件で光が全反射を繰り返して伝搬する。材料は透明なプラスチックまたはガラス、いわゆる誘電体で構成されるため、電磁ノイズとは本質的に無縁である。
続きは『月刊EMC No.373』にて
<特集>
◇IoT時代の電磁波セキュリティ-21世紀の社会インフラを電磁波攻撃から守るには-
・電磁的情報漏えいとその防護
((元)(独)情報通信研究機構 関口秀紀)
・高高度核爆発による電磁波攻撃脅威とその防護
(NTT 情報ネットワーク総合研究所 富永哲欣)
・強力電磁波による攻撃脅威とその対策
((元)三菱電機(株) 小林正明)
<新製品とEMC>
・無線入力ユニット「GX70SM」
(横河電機(株))
・デジタル・デバイスのFCC規制への対応
((株)e・オータマ 佐藤智典)
<Technology>
・マルチフィジックス解析によるEMC仮想環境の構築
(日本機械学会認定計算力学技術者上級アナリスト 橋口真宜)
・車載光ネットワークとEMC
(タイコ エレクトロニクス ジャパン(合) 小林茂)
<New&Now 規格・規制情報>
・IEC/TR 61000-2-5 環境―電磁環境の分類と記述―
(拓殖大学 澁谷昇、東北学院大学 石上忍)
・日本国内における電気製品の電波雑音規制に関する最新動向
((一財)電気安全環境研究所 井上正弘、(一財)VCCI 協会 小田明)
<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎⑥
第6章 EMC設計とワイヤレス電力伝送(その2)
(群馬大学 菊地秀雄)
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