【IEC 61000-6 シリーズ】生産現場でのEMC 試験―試験における留意点 ―(月刊EMC)

2019.6.17 更新
【IEC 61000-6 シリーズ】生産現場でのEMC 試験―試験における留意点 ―(月刊EMC)

【電波暗室内部(例)】

 EMC 試験を実施するにあたり、被測定機(EUT)の大きさ、供給電力、その他稼働のために必要な設備によっては、電波暗室やシールドルーム(以下、試験室)での試験が難しい場合があり、その装置の組立場所や調整場所または最終的に設置される場所を試験場所として選択することがある。ちなみに、試験室以外での試験はオンサイト(on site)試験もしくはインシツー(in situ)試験とも称されるが、本稿では試験室での試験と区別して、「生産現場」でのEMC 試験と称する。

 規格の多くは試験室での試験を前提とした試験条件を提示している場合が多く、生産現場では規格通りの試験が行えないことが多いのもまた事実である。

 このような事情をふまえた上で、生産現場でどのようにEMC 試験を実施するか、またその適合性についてはどう判断するかについて紹介する。

生産現場を試験場にする事例

 試験室ではなく、装置の生産現場を試験場として選択する可能性が高いケースとしては、以下のような場合が挙げられる。

・装置が大きく、試験規格で規定される試験室に搬入することが難しい
・装置が必要とする電力を、試験室で供給することが難しい
・冷却溶媒など、装置稼働に必要な補助システムを試験室に設置することが難しい

 このような事情がある場合、試験室での試験に代えて、生産現場に測定機材を持ち込み試験することになる。

 しかし、生産現場でどのようにEMC 試験を実施したらよいか、また、そもそも生産現場での試験結果をもって適合と考えてよいのかなど、疑問を持たれる読者も多いかと思う。

 重要なことは、生産現場でのEMC 試験を選択した理由を、第三者が見ても納得できるように、技術書類に明記しておくことである。後述するように、生産現場でのEMC 試験は規格要求を必ずしも満たせない。それゆえ、その選択を行った根拠を明確に示す必要がある。また、生産現場での試験であっても、その結果がEMC の大原則である「周辺の装置を誤動作させるレベルのノイズを放出せず、かつ周辺の装置からのノイズで自身が誤動作しない」ことを示すことができる合理的説明もなされるべきである。

 尚、現在のEMC 指令においては適合性を示す際、自己宣言による手順の選定が可能であるが、選定した根拠および試験結果の信頼性をより高めるために、欧州のEMC 指令では認証機関(Notified body 以下NB)の適合確認証明書を取得する手順も用意されている。

欧州EMC 指令と規格

 EMC とは、Electro Magnetic Compatibility(電磁両立性)の略であり、以下二点に留意した安全的観点を指す。

続きは『月刊EMC No.374』にて


【月刊EMC No.374 目次情報】

<特集>
◇サージ防護デバイスの最新標準化動向
・最新のサージ防護デバイス・部品に関わるIEC国際標準と今後の取組み
 ((株)NTT ファシリティーズ 佐藤秀隆)
・太陽光発電システムに適用する直流用SPDの要求性能とその試験方法
 (音羽電機工業(株) 赤穂智章)
・第22部:通信及び信号回線に接続するサージ防護デバイス(SPD)の選定及び適用基準
 (白山商事(株) 西澤滋)
・太陽電池設備に接続するSPDの選定及び適用
 ((株)昭電 垣内健介)
・低圧サージ防護デバイス用金属酸化物バリスタ(MOV)の試験方法
 (音羽電機工業(株) 塚本直之)
・第352部:通信・信号回線に接続するサージアイソレーショントランス(SIT)の選定及び適用基準の規格解説
 ((株)サンコーシヤ 山田康春)

<Technology>
・印刷プロセスで実現可能な有機半導体集積回路と電子ノイズ
 (東京大学 渡邉峻一郎)
・パターンレイアウトの分布定数線路としての電気特性に着目したプリント配線板のEMC設計
 ((株)トーキンEMC エンジニアリング 原田高志)

<New&Now 規格・規制情報>
・生産現場でのEMC試験―試験における留意点―
 ((株)イーエス技研 中西淳)

<新製品とEMC>
・dynabook G シリーズ
 (Dynabook(株))

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-1.今更、人に聞けないEMC用語解説
 基本・共通用語⑭
 ダイポールアンテナの実際
 ((国研)情報通信研究機構 藤井勝巳)
・回路網を用いた広帯域PLCの信号伝送特性と漏洩電磁界特性の解析③
 電気機器を表す回路網パラメータ決定方法
 (九州工業大学 桑原伸夫)
・電源ノイズ解析と設計法⑧
 DC-DCコンバータ(バックコンバータ)
 (大阪大学 舟木剛)

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