5Gを活用した自動運転の展望とEMC(月刊EMC)

2019.7.17 更新
5Gを活用した自動運転の展望とEMC(月刊EMC)

【5G 時代おける自営マイクロセル展開の概念】

 従来の移動通信システムは、通信システムの無線区間の通信速度や通信容量を向上させることに注力してきた。5G では、この路線を維持して「超高速」な性能向上を追求しつつも、移動通信システムとしては新たな取り組みとなる「超低遅延」や「多数同時接続」のような性能の実現が期待されている。多岐にわたる5G の性能は社会生活における移動通信システムの役割を大きく変化させるものである。5Gは単に携帯電話やスマートフォンを対象としたものではなく、これまで移動通信システムの領域とされて来なかった無線通信サービスも含めて対象とすることから、社会インフラとしての貢献は大きい。しかしながら、ミリ波帯の利用による基地局当たりの通信範囲が狭いことや、多岐にわたる基地局の性能要求により設置するべき基地局の数が膨大になることから、より柔軟なシステムアーキテクチャへの対応が求められる。携帯電話システムの国際標準規格を策定している3GPP(3rd Generation Partnership Project)においても、このような概念に関連する議論が進められている。

 5G の性能は、前述したように大きく3 つが挙げられるが、これらの全ての通信性能を満たすことは単一の無線システムの展開では困難である。そこで、5G は異種無線(ヘテロジニアス無線)ネットワークの構成となり、異なる通信性能を持つ基地局を適応的に組み合わせたものになる。この際、各基地局の通信範囲は、従来の移動通信システムのように大きなもの(マクロセル)を中心とした手法では対応できず、提供する性能や周波数などに応じてより小さいもの(マイクロセル) を積極的に活用し、必要なサービスに応じてきめ細かく基地局を展開する必要がある。

 このようなマイクロセルの展開は、従来の移動通信システムのようにマクロセルが広い地域をあまねくアクセスエリアにするというものではなく、必要な場所に限定して展開する。しかし、通信範囲が狭いことから、基地局の数は少なくとも数百倍程度に増加する可能性がある。この場合、基地局の設置が限定された数の通信事業者により全て対応できるとは考えにくく、複数の通信事業者が一定の規則に基づき相互に協調するという新たな基地局展開の概念が求められる。そこで、セルラー通信事業者とは異なる無線ネットワークの担い手が、自営のマイクロセルを独自に展開し、移動通信システムと一体としてシームレスな移動通信システムを構成することにより、分散利用を可能にする方式を検討している。この新たな移動通信システムの担い手を、マイクロセル通信事業者(あるいはマイクロオペレータ)と呼ぶ。

続きは『月刊EMC No.375』にて


【月刊EMC No.375 目次情報】

<新製品とEMC>
・室内用可搬型蓄電システム「POWER YIILE 3(パワーイレ・スリー)」
 (エリーパワー(株))

<特集>
◇静電気放電対策:国際規格動向からESD現象測定、保護デバイス評価、ESD対策まで
・静電気放電試験の国際規格IEC 61000-4-2の問題点と最新改正動向
 ((株)ノイズ研究所 石田武志)
・光電界センサ/光電圧プローブによるESD影響の測定
 ((株)精工技研 大沢隆二)
・ESD/EMC対策部品のTLP試験
 (阪和電子工業(株) 澤田真典)
・ESD対策部品の適用
 (パナソニック(株) 徳永英晃)

<Technology>
・5Gを活用した自動運転の展望とEMC
 (情報通信研究機構(NICT) 石津健太郎、表昌佑、村上誉、児島史秀)
・EV/PHEV用ワイヤレス給電のためのEMC対策
 ((一財)電力中央研究所 名雪琢弥)

<New&Now 規格・規制情報>
・TEM導波管による放射エミッション測定及び放射イミュニティ試験方法等
 (東北学院大学 石上忍)
・静電気イミュニティ試験と輻射ノイズ解析実験
 ((株)東陽テクニカ 秋田大地)

<実践講座>
・事例からひもとくEMC設計・対策そして基礎 ⑦
 EMC標準化の意義を考える
 ((株)ノイズ研究所 石田武志)
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策 ⑤
 グラウンドに起因するノイズ、コモンモードチョークコイルほか
 (大島研究所 大島正明)

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