【過電圧カテゴリと電気設備の関係(例)】
低圧配電系統には、さまざまな事象によって生じる異常な電圧が伝播することがあり、低圧電気設備にストレスを与える。低圧配電系統に及ぼす異常な電圧としては、配電系統の地絡事故や高低圧混蝕による一時的な過電圧がある。また、自然現象である落雷によって起因する雷サージのような過渡的な異常電圧がある。現状、建設や商業施設、工場、一般住宅において、低圧配電系統に侵入する雷サージから低圧電気設備を防護するために、SPD(サージ防護デバイス)を適切に選定し設置する雷対策方法が多く採用されているが、IEC 61643-11(JIS C 5381-11)におけるSPD の防護性能や、一時的過電圧で故障モードに陥った場合の短絡電流の耐量を評価試験する上で、このIEC 60364-4-44 の要求事項に適合しなければならない。
このような事象中における低圧電気設備の安全に関する要求事項について規定しているIEC 60364-4-44の概略を解説する。
建築物等の電気設備や雷保護関連のIEC 専門委員会(TC:Technical Committee) は、TC64、TC81、SC37A、SC37B があり、それぞれの委員会にて関連する規格が審議されている。審議されたIEC 規格は、殆どがそのまま翻訳JIS として発行されている。
IEC 規格は、各国の代表による国際的なTC やWG(Working Group)により制定と定期的に改定作業が行われている。
IEC 60364 シリーズは、TC64 にて審議が行われており、国内ではJIS C 60364 シリーズとして改正発行されている。中でもJIS C 60364-4-41(安全保護-感電保護)やJIS C 60364-4-44(安全保護-妨害電圧及び電磁妨害に対する保護)、JIS C 60364-5-53(電気機器の選定及び施工-断路,開閉及び制御)は、雷保護に関連するSPD の性能評価やSPD 設置の適用に対する引用規格の一つとなっている。
その雷保護関連のJIS としては、1992 年にJIS A 4201 が制定されて、2003 年以降にIEC 規格を基に多くのJIS が制定され、十数年を経過している。最近では、2011 年頃に発行されたIEC 規格の改定規格に対し、2014 年以降JIS の制定や改正版の規格が発行されている。
国内では、IEC 60364-4-44 を翻訳しJIS C 60364-4-44:2011 を改正発行しているが、現在、IEC 60364-4-44 は、Edition2.2 として2018 年1 月に改定され最新版となっており、今後このIEC 規格を基にJIS の改正が行われる見込みである。
IEC 60364-4-44 は、大きく下記の3 つの箇条にて要求事項が規定されており、Edition2.2 で改定された内容を含めて概要を解説する。
・442 高圧系統地絡事故及び低圧系統事故による一時的過電圧からの低圧設備の保護
・443 大気現象又は開閉による過渡過電圧に対する保護
・444 電磁的影響に対する手段
続きは『月刊EMC No.376』にて
<特集>
◇IoTにおけるEMCへの対応と標準化の動き
・IoTにおける無線通信SUNとEMCへの対応
((国研)情報通信研究機構 児島史秀)
・車載受信機から学ぶIoTの自家障害への対応
((株)デンソー 中村克己)
・IoTで重要な低圧配電線内の両立性レベルに関するIEC動向
((一財)電力中央研究所 岡田有功)
<新製品とEMC>
・補聴器「リオネットシリーズ」
(リオン(株))
・補聴器のEMC規格の概要
(リオン(株) 藤坂洋一)
<Technology>
・5Gの超多数接続を低遅延で実現する「STABLE」と干渉抑圧・除去技術
((国研)情報通信研究機構 大堂雅之)
・車載部品評価におけるEMC試験のポイント
((株)アイピーエス東海 貝山光雄)
・電磁波の波源分布推定法の最新技術
(東北大学 今野佳祐、陳強)
<New&Now 規格・規制情報>
・公衆低圧供給系統における低周波伝導妨害およびシグナリングの両立性レベル
(中部電力(株) 中地芳紀)
・低圧電気設備―第4-44部:安全保護―妨害電圧及び電磁妨害に対する保護
(音羽電機工業(株) 酒井志郎)
・台湾におけるEMC規制の現状概要解説
((一社)セーフティグローバル推進機構 梶屋俊幸)
・韓国KCマークとKCsマークの概要
(SGS ジャパン(株) 軽石隆)
<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-1.今更、人に聞けないEMC用語解説
基本・共通用語⑮
ループアンテナの実際
((国研)情報通信研究機構 藤井勝巳)
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