車載部品評価におけるEMC 試験のポイント(月刊EMC)

2019.8.21 更新
車載部品評価におけるEMC 試験のポイント(月刊EMC)

【自動車を取り巻く電磁環境】

 車両ならびに車載電子機器のEMC に関する規格は、主に国際規格ではIEC(CISPR)、ISO で規定されています。それぞれに準拠した国内規格が各国で発行され、日本では自動車技術会規格(JASO)、米国では自動車技術者協会(SAE)という民間団体が、中国では国家標準化管理委員会という団体が発行しています。また、それぞれの団体は、ISO やIEC への国家代表としても参加しています。

各試験の目的

 車載機器のEMC 性能を評価するために、前項で紹介したCISPR、ISO 規格、あるいはそれに準拠した方法を用いるのが一般的です。民間の第三者試験所のほとんどはこれらの規格をスコープとした、試験所の品質システムであるISO17025 の認定を受けています。それらの規格は、EMC 性能評価をするための試験方法と、それらを参考とする試験レベルを規定しており、車両が公道を走行する際の車両内部、あるいは車両外(道路の周辺)から曝されると想定される電磁環境(EME:ElectroMagnetic Environment) を模擬しています。よって、各試験規格に記載されている内容の主旨を理解していないと、その試験対象に対して的確な性能評価ができない可能性があります。

試験規格のパラメータ

 さまざまなDUT(Devise Under Test:試験対象品)に対して評価ができるよう、ISO11452 シリーズ規格やCISPR25 で試験方法が規定されています。DUTを評価するために、車両に搭載される際の様々な電磁環境条件に応じた、最適な試験方法と条件を選定する必要があります。  試験周波数、試験方法、試験レベルなど、主要な条件については、納入先の車両メーカースペックで規定されていることが多いようです。(ここで、DUT のサイズ、重量、供給電源電圧、動作電流などの条件は一般的なDUT 仕様に基づく内容となります)

 当然、DUT 評価設備に関する制限事項が、そのスペックで規定されている条件から逸脱する例も十分あります。例えば、サイズが大きく試験装置内に収容できない、重量的にベンチデスクに載せられない、ハーネスが太すぎてプロービングできない、など、スペック通りにセットアップできない場合に、当初のスペックに記載されている主旨を維持しながらどのような代替案が提案できるかは、EMC ラボの能力を評価する一つのポイントかもしれません。

車両をとりまく電磁環境

 車両の内外をとりまく電磁環境は、車外ではV2X 技術、車内ではAECS(車両緊急通報システム)をはじめとした様々な無線サービスの恩恵にあずかるために、これまでになくきびしくなってきています。

続きは『月刊EMC No.376』にて


【月刊EMC No.376 目次情報】

<特集>
◇IoTにおけるEMCへの対応と標準化の動き
・IoTにおける無線通信SUNとEMCへの対応
 ((国研)情報通信研究機構 児島史秀)
・車載受信機から学ぶIoTの自家障害への対応
 ((株)デンソー 中村克己)
・IoTで重要な低圧配電線内の両立性レベルに関するIEC動向
 ((一財)電力中央研究所 岡田有功)

<新製品とEMC>
・補聴器「リオネットシリーズ」
 (リオン(株))
・補聴器のEMC規格の概要
 (リオン(株) 藤坂洋一)

<Technology>
・5Gの超多数接続を低遅延で実現する「STABLE」と干渉抑圧・除去技術
 ((国研)情報通信研究機構 大堂雅之)
・車載部品評価におけるEMC試験のポイント
 ((株)アイピーエス東海 貝山光雄)
・電磁波の波源分布推定法の最新技術
 (東北大学 今野佳祐、陳強)

<New&Now 規格・規制情報>
・公衆低圧供給系統における低周波伝導妨害およびシグナリングの両立性レベル
 (中部電力(株) 中地芳紀)
・低圧電気設備―第4-44部:安全保護―妨害電圧及び電磁妨害に対する保護
 (音羽電機工業(株) 酒井志郎)
・台湾におけるEMC規制の現状概要解説
 ((一社)セーフティグローバル推進機構 梶屋俊幸)
・韓国KCマークとKCsマークの概要
 (SGS ジャパン(株) 軽石隆)

<実践講座>
・EMC測定・試験のポイント-1.今更、人に聞けないEMC用語解説
 基本・共通用語⑮
 ループアンテナの実際
 ((国研)情報通信研究機構 藤井勝巳)

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