【最小ウインドウの場合の五つの測定点】
無線周波に対するイミュニティ評価法の代表的な試験法の一つとしてIEC 61000-4-3 放射イミュニティ試験法がある。最新版は3.2 版(以下現行版)で、この版を基にしたJIS 規格もJIS C 61000-4-3 : 2012 として発行されている。
現行版が発行されたのは2010 年であるが、過去の2 回の改正を一つにまとめた統合版である。内容の大半を占める第3.0 版の発行年は2006 年で12 年が経過している。その間の無線通信システムは大きな進歩を遂げていることもあり、次版である第4 版に向けた改訂が急がれている状況である。
最初の委員会原案(以下CD)が各国に配布されたのは2017 年1 月で、その後2 度目のCD の配布・審議を経て2018 年6 月に投票用委員会原案(以下CDV)が配布された(文書番号:77B/792/CDV)。この文書は各国の投票の結果、賛成票が65.2 % と、わずかであるが3 分の2 を下回ったため否決された(賛成票が66.7 % 以上で可決される)。
日本も反対票を投じた。理由は草案の段階で一旦削除された附属書“電界プローブの校正法”を復活させるべきという日本の提案に対して、国際会議で採用することが決定したにもかかわらず、編集上のミスでCDV に記載されていなかったためである。反対票を投じた他の国の主要な理由は、十分な審議をすることなしに附属書“不確かさ”の内容が大きく変更されたことであった。
CDV が否決されたことを受けてこの規格のメンテナンスを担当しているIEC 77B 分科委員会の第10 作業グループ(略称:SC 77B WG10)は、上記否決理由としたコメントを含め、この文書に寄せられた200 件近いコメントを考慮した次の文書の準備をしている段階である。2018 年8 月にカナダのトロントで行われた前回の国際会議での審議の結果、主要な変更内容が否決理由でないことなどから、2018 年末を目標に2度目のCDV を各国に配布することとなった。
第4 版に向けた審議にあたって2013 年に77B/690/DC が発行され第4 版に見直すべき項目の候補を挙げ各国に意見を募った。現在に至るまでこれらの各国の意見を基に審議が行われた。
全体的な変更として以下が挙げられる。
・本文中の説明に近い最適な位置に図が配置され、図を見ながら説明文を読むことができるようになった。現行版では文章の記載の後、図がまとめて配置されていた。
・近接する無線機による放射電磁界試験規格IEC61000-4-39 発行に伴い、本規格との区別を明確にする文(例えば“近接しない無線機からの影響”などの記載)が各章の必要なところに追加された。
続きは『月刊EMC No.377』にて
<特集>
◇2019年版国内主要EMC試験・校正所一覧
<新製品とEMC>
・ステレオレコードプレーヤー「PS-LX310BT」
(ソニー(株))
・CISPR 32クラスB許容値について
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山佳春)
<Technology>
・LED回路およびオーディオ回路向けのEMCフィルタによるノイズ対策
(TDK(株) 石塚淳、佐藤高弘)
<New&Now 規格・規制情報>
・IEC 61000-4-3 無線周波に対するイミュニティ評価法
放射無線周波電磁界イミュニティ試験規格改訂情報
((株)東陽テクニカ 中村哲也)
<実践講座>
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策⑥
ディファレンシャルモードとコモンモード
(大島研究所 大島 正明)
・EMC測定・試験のポイント-3.EMC基本規格で規定された測定・試験法
伝導エミッション測定法①
電源線経由の伝導エミッション測定法
((一社)KEC 関西電子工業振興センター 峯松育弥)
・熱設計技術③
第3章 自然空冷筐体の放熱設計
電子機器の熱設計と対策の基礎と応用
(富山県立大学 石塚勝)
<Information>
・EMC Sapporo & APEMC 2019
規格関連の論文2篇が優秀論文賞を受賞
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