【MEA1608 シリーズの構造】
近年、様々な電子機器の増加によりEMC 対策環境においてノイズ規格が厳しくなっています。その一つは高周波のノイズ対策ですが、スマートフォンの普及によりセルラーバンド、WiFi、Bluetooth 等のGHz帯におけるノイズ対策の必要性が高まる中、ノイズ対策周波数が高周波領域へ拡張することでCISPR(国際無線障害特別委員会)の規格範囲が広がって来ました。また、スマートフォンのマルチバンド化により内蔵アンテナが増加したため、自家中毒による受信感度劣化問題が増加してきました。弊社におきましては、ノイズ対策の高周波化トレンドを推測しつつ、お客様のご要望も参考にさせて頂きながら高周波ノイズ対策部品の開発に注力してきました。
過去の例としてフィーチャーフォンと呼ばれる携帯電話時代には、カメラやディスプレイの信号ラインから発生する強烈な放射ノイズにより800MHz 帯と2GHz 帯の受信感度劣化が発生しました。そのため、多くの信号ラインでノイズ対策が必要になると同時にノイズ対策部品の省スペース化が求められました。ノイズ対策部品には積層チップビーズを用いるケースが多くありますが、ノイズ抑制効果は充分ではありませんでした。そこで、異材質一体化の積層技術によりフェライトインダクタとセラミックコンデンサが一体化されたLC フィルタを開発し、更に4 連アレイタイプにすることで高減衰特性と省スペース化を実現した積層EMI フィルタMEA シリーズが製品化され、800MHz 帯と2GHz 帯のノイズ対策に貢献することができました。
その後、カメラやディスプレイの信号ラインは更に高速化が進み、パラレル伝送方式から差動伝送方式への移行に対応して積層コモンモードフィルタMCZ シリーズや薄膜コモンモードフィルタTCM シリーズが製品化され、差動伝送ラインのノイズ対策にも貢献することができました。
様々なノイズ対策部品の開発および販売をしてきましたが、その中でも開発の難易度が高かったのがオーディオライン用のノイズ対策部品です。十数年前から、積層チップビーズはノイズ対策に効果はあるが音声が歪むという問題が発生していました。また、近年の音声品質を重視したHi-Fi オーディオ等への関心が高まる中、オーディオラインにおけるノイズ対策と音声品質を両立するソリューションが強く求められていました。
音声歪みは磁性体の材料特性によって変化するため、蓄積した材料設計技術などを駆使することで、ノイズ対策特性を維持しながら音声歪みの抑制を可能にしたフェライト材料の開発に成功しました。
続きは『月刊EMC No.377』にて
<特集>
◇2019年版国内主要EMC試験・校正所一覧
<新製品とEMC>
・ステレオレコードプレーヤー「PS-LX310BT」
(ソニー(株))
・CISPR 32クラスB許容値について
(NTT ネットワーク基盤技術研究所 秋山佳春)
<Technology>
・LED回路およびオーディオ回路向けのEMCフィルタによるノイズ対策
(TDK(株) 石塚淳、佐藤高弘)
<New&Now 規格・規制情報>
・IEC 61000-4-3 無線周波に対するイミュニティ評価法
放射無線周波電磁界イミュニティ試験規格改訂情報
((株)東陽テクニカ 中村哲也)
<実践講座>
・パワーエレクトロニクスとノイズ対策⑥
ディファレンシャルモードとコモンモード
(大島研究所 大島 正明)
・EMC測定・試験のポイント-3.EMC基本規格で規定された測定・試験法
伝導エミッション測定法①
電源線経由の伝導エミッション測定法
((一社)KEC 関西電子工業振興センター 峯松育弥)
・熱設計技術③
第3章 自然空冷筐体の放熱設計
電子機器の熱設計と対策の基礎と応用
(富山県立大学 石塚勝)
<Information>
・EMC Sapporo & APEMC 2019
規格関連の論文2篇が優秀論文賞を受賞
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