最新の電磁波シールド・吸収材料の種類・特性(月刊EMC)

2019.10.16 更新
最新の電磁波シールド・吸収材料の種類・特性(月刊EMC)

【次世代ギガヘルツ帯の移動通信】

 ミリ波とは電磁波の波長がミリオーダーである電波のことである。電磁波の速度c は光速であるため、おおよそc=λv =3×108m/sec である。但し、λ は波長、v は周波数である。したがって、ミリ波はλが1 ~10㎜の範囲であり、vが30 ~ 300 GHz の帯域にある。図に次世代ギガヘルツ帯の移動通信として、それぞれの電子機器の使用状況を示す。スマホをはじめとするモバイル通信機器では1 ~ 5GHz が多く用いられている。また、ミリ波帯では車載向け電子機器が多く用いられている。

 電磁波吸収材料およびシールド材料は、その用途に応じて実現したい吸収帯域および吸収量、シールド量によって使い分けられる。その時に注目すべき物理的特性は、導電率、複素誘電率、および複素透磁率の3 因子のみである。これらは物質固有の電気的特性であり、「材料定数」と呼ばれている。無損失の場合は虚数部分の複素誘電率および複素透磁率がゼロになる。材質に注目すると、金属および合金、セラミックスおよび金属間化合物、および有機高分子の3 種類である。金属および合金はシールド材料としてもちいられることが多く、フェライト磁石と呼ばれる酸化物磁性体のようなセラミックスおよびセンダストのような金属間化合物は複素透磁率を利用した電磁波吸収材料に、また、有機高分子は複素誘電率を利用した電磁波吸収材料にもちいられることが多い。また、その用途によって近傍界および遠方界に分類される。そこで、シールドおよび電磁波吸収について、材料およびその測定方法について述べる。

 ミリ波の使用状況を産業別に見ると、その多くはハイブリッド車(HEV)に代表される自動車産業であろう。特に、電気自動車(EV)はモータ駆動であり、適切なモータ選択により起動トルクを大きくすることができる。さらに、高速回転領域まで電力の変換効率がそれほど変化しないので変速機が不必要になる。他の利点として、始動用の補助動力装置が不必要になり、走行時の騒音低下およびCO2、NOx およびSOx の排出が無いなど優れたメリットがある。特に、化石燃料をエネルギー源としたエンジン駆動は、地下資源の枯渇およびCO2 による温室効果およびPM2.5 に代表される微粒子などによる大気汚染が指摘されており、CO2、NOx およびSOx など環境負荷の元凶であるガスを排出し無いモータ駆動方式が歓迎されている。また電化も進んでおり、アクセルおよびブレーキなどの主要部品からパワーウィンドに至るまで、ほとんどがECU(Electric Control Unit)を介して電動化されている。

続きは『月刊EMC No.378』にて


【月刊EMC No.378 目次情報】

<新製品とEMC>
・皮膚科医向けダーモカメラ「DZ-D100」
 (カシオ計算機(株))
・医用電気機器のEMD規格~適合のための対応~
 ((株)アイピーエス 山口哲志、林武、横山めぐみ)

<特集>
◇熟練者に学ぶEMC対策・計測技術の基礎から実践まで
・プリント回路基板からの不要電磁放射の予測と抑制を目指したEMC計測と解析
 (電気通信大学 萓野良樹)
・モーメント法によるEMCシミュレーション
 ((株)JSOL 坪井成文)
・フィルタリングの基本4要素とノイズ対策の勘所
 (TDK (株) 菊池浩一)

<Technology>
・最新の電磁波シールド・吸収材料の種類・特性
 (山形大学 日髙貴志夫、デュポン帝人アドバンスドペーパー(株) 成瀬新二)
・防音・防振材料とその使い方
 (ブリヂストンケービージー(株) 飯田一嘉)

<New&Now 規格・規制情報>
・放射線防護機器におけるIEC TC45のEMC規格動向と国内対応
 (富士電機(株) 青山敬)

<実践講座>
・電動化とEMC①
 電動化におけるパワーエレクトロニクスとEMIシミュレーション
 (パナソニック(株) 加藤久賀)
・熱設計技術④
 第4章 強制空冷筐体内の放熱設計
 ー新人社員や初心者のための機器の熱設計対策に関する教育的な講義
 (富山県立大学 石塚勝)

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